国連外交

(9月26日(木曜日)9:00-10:00(於:国連総会議場))

平成25年9月26日
議長,御列席の皆様
 
はじめに,本日のハイレベル会合の開催に尽力したイェレミッチ第67回国連総会議長及びアッシュ第68回国連総会議長始め,関係者の皆様に感謝の意を表します。核軍縮をテーマとした初めての国連総会ハイレベル会合の開会セッションで演説できることを光栄に思います。
 
議長,
 
日本は唯一の戦争被爆国であり,核兵器使用の惨禍について身をもって知っている国です。核兵器廃絶は戦後一貫して我が国国民の悲願です。去る8月,私は広島と長崎で行われた平和祈念式典に参列し,「核兵器のない世界」実現への思いを新たにしました。
 
議長,
 
「核兵器のない世界」は,日本のみならず,国際社会全体にとっても大きな目標です。しかし,現実には未だに多くの核兵器が存在しており,一部では透明性を欠いた核戦力の増強が続いているとも言われています。また,非国家主体による核テロや,北朝鮮による核開発等,世界が直面する核リスクは,冷戦期と比べて一層多様化しています。
 
このような中で,ジュネーブ軍縮会議(CD)における核軍縮の議論が停滞しているのは残念なことです。国際情勢が不透明さを増している今こそ,核不拡散と並行して,包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始・妥結といった,核軍縮の主要課題の進展に向けた取組を再活性化すべきです。
 
議長,
 
核軍縮において最も重要なのは,核兵器保有国による核削減努力と核戦力の透明性向上です。この観点から,オバマ米大統領がベルリン演説において,戦略核を最大3分の1削減すると発表したことを評価します。米露両国間の核削減が更に進展するとともに,米露間の核軍縮交渉が早期に全ての核兵器保有国による多国間交渉へと発展することを期待します。また,核兵器国が,2014年のNPT運用検討会議第3回準備委員会に核軍縮に関する具体的な措置を報告することを求めます。
 
議長,
 
核軍縮を進める上では,核兵器保有国のみならず,非核兵器国の取組も重要です。核兵器国と非核兵器国との相互の信頼の上に,双方が現実的かつ実践的な取組を着実に積み重ねていくことが,「核兵器のない世界」への最も確実な道です。
 
日本は,恒久平和を追求する憲法と国連憲章の精神に基づき,世界の平和と繁栄に貢献する国として,非核三原則を堅持し,核軍縮に全力で取り組んでいく考えです。国連総会においては,1994年以来毎年核軍縮決議を提出し,圧倒的多数で採択されています。また,午後にスピーチを行う予定の岸田外務大臣が,来年の4月12日に,被爆地広島で軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)外相会合を主催します。各国と共に有益なイニシアティブが打ち出されることを確信しています。
 
議長,
 
広島と長崎が原爆により被った惨禍を振り返ると,現代において核兵器が使用された場合の人道的結末は,まさに想像を絶するものです。広島と長崎の悲劇を二度と繰り返してはなりません。日本は30年以上に亘り国連軍縮フェローシップを受け入れている他,非核特使の派遣等により,被爆の惨禍を理解してもらう取組を行っています。国民の安全に責任を持つ全世界の政治指導者が,核兵器の人道的結末についての認識を共有すべきです。是非,各国の政治指導者の方々には,広島や長崎を訪れて頂き,被爆の惨禍を直接肌で感じて頂きたいと思います。
 
議長,
 
次回NPT運用検討会議が開催される2015年は,広島と長崎の惨禍から70年という節目の年です。核軍縮を進展させるためには,この場にお集まり頂いている皆さんの政治的指導力が必要不可欠です。先般,東京での開催が決まった,2020年の夏季オリンピック・パラリンピックの期間中は,広島と長崎の原爆忌とも重なります。世界の皆さんと共に,平和を考えるスポーツの祭典にしたいと考えています。最後に,核兵器国,非核兵器国という立場を越えて,今こそ核兵器廃絶に向けて国際社会が総力を結集するときであることを述べ,私のスピーチを終わります。
 
ありがとうございました。

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