外交政策
武器貿易条約(ATT)ハイレベル会合における岸田外務大臣演説
(2013年9月25日,於:ニューヨーク)
平成25年9月25日
御列席の皆様,
国際社会全体にとり画期的な国際約束であるATTがこの国連本部において採択されてから,早半年になろうとしています。この短期間に既に107か国が署名し,6か国が締結しているという事実は,この条約に対する国際社会の強い支持と期待を想起するものです。
我が国は,これまでに国連軍備登録制度の提案及び小型武器に関する国連総会決議の提出等を通じて,長年,通常兵器の規制に関する国連の取組を主導してきました。原 共同提案国の一員としてATTの作成にも実質的な貢献ができたことを大変嬉しく思います。
私からは,今後の課題につき以下の3点を強調したいと思います。
第一に,ATTの早期発効が重要です。国際社会がATTを誠実に遵守すれば,政府が責任をもって武器移転を管理する体制が強化され,無秩序な取引を防止することにつながります。事実上の大量破壊兵器として市民に被害を及ぼしている小型武器の不正取引が削減されれば,市民社会の安定が増進されます。我が国が提唱する「人間の安全保障」の強化にも役立ちます。
我が国は,この条約への署名が開放された本年6月3日に署名を行いました。早期に締結する決意であり,次期通常国会に提出できるよう準備を着実に進めていきます。
第二に,ATTの実効性を高めるためにも,それを幅広い国が参加する普遍的な条約にしなくてはいけません。主要な武器取引国の締結も不可欠です。我が国としても,幅広い国,特に,主要な武器取引国に対し,早期の署名,そして早期締結に向けた努力を呼びかけたいと思います。この点に関し,我が国は,本日,米国がこの条約に署名したことを歓迎します。
第三に,ATTの下での武器移転の国内管理制度を強化するためには,国際協力が必要です。特に,途上国は,武器移転を適切に管理するための国内制度の整備と強化のための支援を必要としています。我が国は,アジア輸出管理セミナーや不正な小型武器取引防止のための研修などの事業を通じた支援をしてきており,引き続き国際支援に取り組む考えです。
最後に,我が国は,6年越しの国際社会の努力のたまものであるこの条約が早期に発効し,実施されるように,交渉開始当初から関与してきた原共同提案国として,引き続き積極的かつ建設的な役割を果たして参ります。
御静聴ありがとうございました。