外交政策

平成25年9月25日
1 全体概要

 9月25日,ニューヨークの国連本部において,武器貿易条約(ATT)ハイレベル会合が開催された。本年4月に国連総会でATTが採択されたことを受け,今次会合は,ATTの早期発効に向けて,各国の署名及び締結を促進させる政治的な機運を高めるために我が国を含む原共同提案国(日本,アルゼンチン,豪,コスタリカ,フィンランド,ケニア,英)が共催した。日豪外相の他,首脳レベルの出席があった国及び出席者は以下のとおり。その他,エリアソン国連副事務総長及びマウラー赤十字国際委員会総長が出席した。

我が国 岸田外務大臣
豪州 ビショップ外相(議長)
コスタリカ チンチージャ大統領
トリニダード・トバゴ パサード=ビセッサー首相
ニュージーランド キー首相
英国 クレッグ副首相
 
2 会合の概要

 今次会合では,我が国のものを含め以下のステートメントが行われた。
 
(1)エリアソン国連副事務総長
 冒頭,エリアソン国連副事務総長から,歓迎の挨拶があり,20年に亘る長い努力の末,広範なスコープで通常兵器の移転を規制する画期的な条約が成立し,米国を含め,国連加盟国の半数を越える国の署名が得られていること,今後は条約の早期発効に向け,各国による批准が重要である旨述べた。
 
(2)原共同提案国
 続いて,トゥオミオヤ・フィンランド外相が原共同提案国を代表して,共同ステートメントを行った。同外相は,その中で,広い範囲の通常兵器の国際移転を規制する初めての国際約束であるATTの意義を強調し,ATTの早期発効が重要である旨,また,ATTを国内で実施するために支援を必要としている途上国に対して援助を行うことが必要であると述べた。
 
(3)チンチージャ・コスタリカ大統領
 チンチージャ大統領からは,ATTの成立に至る国際社会の機運の盛り上がりを振り返りつつ,不法な武器取引を広範に規制するATTの意義を強調し,コスタリカの法律及び検証システムが本条約の原則を強化し,国際人道法及び人権に背馳する如何なる武器の移転も今後は行われない旨述べた。
 
(4)岸田外務大臣
岸田大臣からは,我が国がこれまでに国連軍備登録制度の提案及び小型武器に関する国連総会決議の提出等を通じて通常兵器の規制に関する国連の取組を主導してきたことを述べつつ,ATTを早期に締結する決意を表明し,また,条約の実効性を高めるために,幅広い国,とくに主要な武器取引国の締結が不可欠であることなどを訴えた(ステートメント)。
 
(5)その他,トリニダード・トバゴ,ノルウェー,ニュージーランドを含め21か国が,ステートメントを行い,ATTの早期発効に向けた取組の重要性を訴えた。
 
3 評価

(1) 今次会合では,我が国を含む21か国の首脳・閣僚等が,ATTの意義とその早期発効の重要性を訴える機会となったが,これにより,国際の平和と安定へ寄与しうるATTの意義が再確認され,ATTの早期発効に向けた政治的な機運を高めることができた。特に,会合の直前に署名国数が急増し,100カ国を越えたことは,本件ハイレベル会合が各国に署名を促したという点で有意義であった。

(2) 岸田外務大臣自ら,早期締結を目指す我が国の決意を表明し,また,国際社会,特に主要な武器取引国に対して早期の署名及び早期の締結に向けた努力を呼びかけたことにより,この分野での国際的な取り組みを引き続き主導する我が国の意思を表明することができた。

(3) 各国から,主要な武器取引国の一つである米国が本条約を署名したことに対し,各国からこれを評価する言葉が相次いだことは,主要な武器取引国を取り込む重要性が広く共有されていることを示すものであった。

(4) また,各国首脳・閣僚と並び,NGOであるオックスファム及びアムネスティ・インターナショナルの代表がステートメントを行ったことは,本条約の作成過程において,これらNGOが重要な役割を果たしたことを示すものであった。


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