日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成25年10月22日
【三ツ矢外務副大臣によるスピーチ】

1.概要

(1)10月17日から18日,韓国のソウルにおいて,サイバー空間に関するソウル会議が開催された。本件会議は,2011年のロンドン会議及び2012年のブダペスト会議のフォローアップ会合であり,ユン・ビョンセ韓国外交部長官が主催し,87か国の政府関係者,国際機関,民間セクター,学者,NGO代表など約1600名が参加した。

(2)我が国からは,三ツ矢外務副大臣を代表として,内閣官房,外務省,総務省,経済産業省,防衛省及び警察庁から構成される代表団が参加した。各国からは,パク・クネ韓国大統領,ヘーグ英外相,マルトニ・ハンガリー外相,ビショップ豪外相,マルティ・インドネシア外相などのほか,トゥーレ国際電気通信連合(ITU)事務総局長などが会議に参加した。また,パン・ギムン国連事務総長及びケリー米国務長官がビデオメッセージを送った。

(3)会議は,「オープンで安全なサイバー空間を通じた世界的繁栄」をテーマに,4つの全体会合及び6つのテーマからなるパネルディスカッション等から構成され,活発な議論が行われた。

2.会議における各国政府主要者の発言

(1)三ツ矢外務副大臣は,全体会合の「国境を越えた協力の強化」において,サイバー空間においても脅威が多様化していることから,安倍総理が掲げる「積極的平和主義」の方針の下,日本がサイバーセキュリティ強化のための国際連携に積極的に取り組んでいくことについて言及した。また,今月2日に決定した「サイバーセキュリティ国際連携取組方針」について触れ,安全で信頼できるサイバー空間構築のために,日本がサイバーセキュリティに関する国際的なルール作りへ積極的に関与していくこと,また,二国間や多国間の協議に積極的に参加することについて発言した。

(2)会議冒頭,ユン・ビョンセ長官は,情報通信技術の発展が経済的・社会的便益に貢献している一方,サイバー犯罪やサイバーセキュリティの課題が顕在化していることに触れ,課題解決のためには各プレーヤーが責任を持ち,相互理解を深めることが重要であると発言した。また,今回の会議により,サイバー空間における国際的な行動規範作りへの方向性を与えるとともに,能力構築支援を新たなテーマに取り上げることで先進国と途上国の間を繋ぎたいと発言した。

(3)パク・クネ大統領は,サイバー空間は様々な可能性をもたらす一方で,個人情報保護やマルウェア等の問題も存在するため,国際的なルール作りが必要であると発言した。また,世界では情報格差が存在しているため,格差を取り除くための能力構築支援が重要であるとも述べた。

(4)ヘーグ英外相は,国家によるインターネットの統制は,情報の自由な流通や経済発展を損なうものであり,オンラインにおいてもオフラインと同様に人権は尊重されるべきであると発言した。また,サイバー空間の開放性と自由,民主主義を確保するために各国が協力することが重要であるとも述べた。

(5)ケリー米国務長官は,ビデオ映像を通して,サイバー空間の各種課題への対応には国際連携が必要であり,サイバー空間における国家の行動規範が重要であること,インターネット上では表現の自由が守られるべきことについて言及した。

(6)中国やロシアの会議参加者からは,昨年開催されたブダペスト会議に引き続き,サイバー空間での国家主権・内政不干渉の尊重や規制実施の必要性が強調された。また,中国は国連が国際的なサイバー問題を議論する最も適切な場であることを強調した。加えて,中国の会議参加者は,新たな規範を策定すべきであり,昨年に引き続き,国連事務総長宛に提出している「情報セキュリティ国際行動規範」を規範作りのたたき台とすべきであると主張した。

【ムシキワボ・ルワンダ外務大臣との会談】
【ビショップ・豪州外務大臣との会談】

3.議長声明

(1)クロージング・セッションにおいて,ユン・ビョンセ長官は,議長声明(別添)を読み上げた。この中で,まず,本会議によりサイバー空間の重要性及び繁栄とセキュリティを促進するための国際協力の強化の必要性について世界的に意識啓発することができたと述べた。また,本会議には途上国からの参加も多く,各国がサイバー空間における経済的・社会的便益を享受するためのベストプラクティス等を共有することができたと評価した。

(2)更に,議長声明の中では,本会議において,経済発展,社会活動及びセキュリティは相互依存しているため共に推進していく必要性があること,オンラインにおいても基本的人権が尊重されるべきこと,情報格差を少なくするべきことなどを確認するとともに,サイバーに関する取組においては,マルチステークホルダー・アプローチが重要であることが強調された。また,サイバー空間に関する行動規範については,特に国連サイバー政府専門家会合における成果を評価し,進捗があったことを歓迎する一方,各国で立場の違いがあることも指摘した。

(3)本会議の成果文書として,「オープンで安全なサイバー空間のためのソウル枠組み」が発表された。

4.次回会合

 クロージング・セッションにおいて,ローゼンタール・オランダ特命全権大使から,本会議のフォローアップの会合は,2015年の初めにオランダ・ハーグで開催することを発表した。

5.三ツ矢外務副大臣の二国間会談

 三ツ矢外務副大臣は,この機会を利用して,会議に出席していたルワンダのムシキワボ外務大臣,豪州のビショップ外務大臣,インドネシアのマルティ外務大臣及びスリランカのピーリス外務大臣との間で,それぞれ二国間会談を行った。

【マルティ・インドネシア外務大臣との会談】
【ピーリス・スリランカ外務大臣との会談】

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