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第2章 調査方針

 

2.1 調査の背景

 1996年4月に発足したNGO・外務省定期協議会は、NGOと外務省との具体的協力・連携を目指して、より緊密な対話と意見交換を試みている。「NGO・外務省相互学習と共同評価」は、同協議会における議論の中でNGOとODAとの具体的協力・連携の方向性を模索するための方策として提案され実施に至ったものである。第1回目の評価は1997年バングラデシュで、第2回目は1998年カンボディアで、第3回目は1999年ラオスにて実施された。

2.2 調査の目的

 従来、「NGO・外務省相互学習と共同評価」は、NGO関係者とODA関係者が、共同で双方の援助活動を評価することを通じ、互いの援助活動につき学習するとともに、各々の事業形成や援助方針等にフィードバックしつつ、今後の協力・連携の方向性を導き出すことを目的としてきた。
 今回の共同評価においては、ベトナムにおいて実施されている、開発福祉支援事業2件を評価することにより、開発福祉支援事業や双方にとっての協力・連携の具体的なあり方等について提言を得ることが、主たる目的である。

2.3 対象プログラム ― 開発福祉支援事業とは―

 開発福祉支援事業は、1996年6月のリヨン・サミットにおいて当時の橋本総理が提唱した「世界福祉構想」(Initiative for a caring world)が発端となった。この構想は開発途上国を含む各国が広い意味での社会保障の分野での知恵と経験を分かち合いながら、それぞれの悩みや問題を解決し、お互いがよりよい社会を築き次の世代に引き継いでいけるように貢献しようとするものである。
 本事業は、この構想の具体化、並びに「DAC新開発戦略」(1996年5月)の開発目標である「貧困人口の割合を半減」、「乳児及び5歳未満幼児の死亡率を3分の1に低下」、「妊産婦死亡率を4分の1に低下」等の達成に貢献するために、平成9年度より技術協力の新規事業として開始された。
 本事業は、我が国の社会開発福祉分野での経験を踏まえつつ、福祉向上を中心に草の根レベルで貧困問題に対処することを目的として、住民が直接裨益するような開発事業を、住民の参加を得て実施するものである。本事業では、資機材や施設の供与よりも、社会的弱者や貧困住民が自立して生活していくために必要な技能の訓練や組織化の支援に重点が置かれている。
 事業の実際においては、当該国において地域に密着して開発協力を行う民間援助団体、公益団体または地域組織など実施団体とし、必要であれば日本からは専門家・青年海外協力隊員の派遣を行う。事業期間は3年間(36ヶ月)までを原則とし、プロジェクトの実施及び運営管理に必要な直接人件費に対する支出を認めることにより、実施団体がその長所を十分に発揮してプロジェクトを運営できるように配慮している。
 事業の対象分野は、(1) コミュニティー開発、(2) 高齢者、障害者、児童福祉、(3) 保健衛生、(4) 女性自立支援、(5) 生活環境整備、(6) 人材育成、(7) 地場産業振興の7分野である。実施団体は、当該国において2年間以上、地域に密着した開発協力活動の経験を有するNGOであることが条件となっている。

2.4 評価の観点

2.4.1 プログラム評価とは

 個々のプロジェクトの評価をプロジェクト評価と呼ぶのに対し、プロジェクトを実施するための援助スキーム(プログラム)を評価する場合を、ここではプログラム評価と呼ぶこととする。プロジェクト評価の方法は、JICAでは評価5項目を設けてそれに従って評価するのが現在一般的であるが、プログラム評価の手法は、標準化されたものがない。しかし、プログラム評価の目的は、そのプログラムが目指している目的を達成するためのプログラムの改善、または、プログラムばかりでなく、開発援助が目指す様々な目的を達成するために、そのプログラムがどのような役割を果たせるか検討し、実行にもっていくことである。このような目的から出発して、プログラム評価における評価項目が、検討された。

2.4.2 評価項目

 評価は、プロジェクト・レベルでの評価部分とプログラム・レベルでの評価部分に分け、プロジェクト・レベルでは、「プロジェクト目標の達成度・効果」「プロジェクト効果や活動の持続性」の2項目を、プログラム・レベルに関しては、「開発福祉支援事業としての妥当性」「開発福祉支援によるインパクト」「開発福祉支援の運営管理」の3項目を検討した。「開発福祉支援事業としての妥当性」については、特に(i) 直接住民に裨益しているかどうか、(ii) 住民参加によって、プロジェクトが実施されているか、(iii) ソフト面を重視しているか、について検討した。また、これら記載した範疇に入らないが重要な事項についても、評価に反映させた。

2.5 評価実施方法

 海外からの援助の全体像とNGOの役割認識等を把握するため、まず、ベトナム政府の関連機関からの聞き取りを行った。案件の把握に関しては、NGO側の各プロジェクト担当者並びに相手国側のカウンターパート機関及び関連行政官からの聞き取り、さらに活動の視察と数名の受益者からの聞き取りを行った。また、JICA事務所及び大使館の開発福祉支援事業担当者からも聞き取りを行った。面談者は添付資料1[K1]のリストの通りである。

2.6 対象プロジェクト

 開発福祉支援事業のスタディケースとしてベトナムにおける、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)が実施する「子どもの栄養改善事業」、ベトナムの子どもの家を支える会(JASS)が実施する「フエ市児童福祉総合支援プロジェクト」を選定した。

2.7 調査報告書のとりまとめ

 調査報告書の作成にあたっては、提言部分について調査団員各々が意見を提出、さらに、「子どもの栄養改善事業」の調査結果部分についてはODA側が、「フエ市児童福祉総合支援プロジェクト」の調査結果部分についてはNGO側が意見を提出し、それらを基に団員内で討議の場を持った後、コンサルタントがドラフト報告書を作成した。その後、全団員の意見を反映してまとめた上で、現場関係者にも見てもらい、最終版を完成させた。団内あるいは現場との間で見解が異なる点に関しては、両論併記の形でまとめることとした。

2.8 調査団の構成

 調査団は以下の通りNGO、ODA側よりそれぞれ3名づつと、コンサルタント1名より構成された。

 磯田 厚子  日本国際ボランティアセンター副代表、女子栄養大学助教授
 杉本 正次  名古屋NGOセンター副理事長・事務局長
 吉田 明彦  日本国際飢餓対策機構職員
 白川 光徳  外務省経済協力局評価室長
 村松 一二美 外務省経済協力局民間援助支援室外務事務官
 内田 淳   JICA企画・評価部評価監理室職員
 岩川 薫   株式会社パデコ・プロジェクトコンサルタント

2.9 現地調査日程

 現地調査は、平成13年(2001年)2月18日から2月24日までの6日間の日程で実施された。

2月18日(日) ハノイ着 (4名は前日の17日にハノイ着)
調査団内打ち合わせ
2月19日(月)
9:00 PACCOM関係者よりのヒアリング
11:00 日本大使館表敬及び担当者よりのヒアリング
13:30 計画投資省関係者よりのヒアリング
15:30 JICAベトナム事務所担当者よりのヒアリング
18:00 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン/ベトナム事務所での活動内容のブリーフィング
2月20日(火) 「フエ市児童福祉総合支援プロジェクト」(調査第1日目)
7:00 ハノイからフエへ移動
13:00 ベトナム子どもの家を支える会現地事務所訪問
14:00 フエ市人民委員会表敬及び関係者よりのヒアリング
15:00 子どもの家視察および関係者よりのヒアリング
16:30 上級職業訓練センター視察及び関係者よりのヒアリング
18:30 ベトナム子どもの家を支える会の事務所員との懇談
2月21日(水) 「フエ市児童福祉総合支援プロジェクト」(調査第2日目)
8:30 キムロン病院障害児センター関係者よりのヒアリング
9:30 治療を受けた児童の家庭視察(2件)
午後フエからダナンへ移動
2月22日(木) 「子どもの栄養改善プロジェクト」(調査第1日目)
6:45 ダナンからハノイに移動
10:00-12:00 SCJ評価セミナーの一部に出席
16:00-16:30 JICAベトナム事務所長よりヒアリング
2月23日(金) 「子どもの栄養改善プロジェクト」(調査第2日目)
8:00 タイン・ホア省へ出発
11:00 ビンロック地区人民委員会(ビンロック地区事業管理委員会)表敬及び関係者よりのヒアリング
12:00 ビンロック地区事業管理委員会のメンバーとの懇談
13:00 ビンカン村人民委員会(村事業管理員会)訪問
13:15 ティエン・イック 部落の保健センター訪問


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