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(4)日本の援助に関する提言と今後の課題

  1. ベトナムの保健指標が一人当たり GDPで400米ドルと発展途上国なみであるにも拘わらず健康指標が極めて良好であるのは、都市部での保健医療へのアクセス、ケアが良いために全体の指標を良くしていると考えられる。したがって、都市部の病院や保健施設にアクセス出来ない層や地域での保健医療サービスを改善することにより更に健康指標の一層の改善が期待される。その方策としては、チョーライ病院やバックマイ病院で実際に行われているアウトリーチ活動や、プライマリ・ヘルスケア戦略に基づく保健活動の強化、なかでも農村地域での保健ワーカーの育成が重要となろう。ベトナム全体の病床数は一人あたり380(1995年)でタイを上回っており、都市部での病床数の増加や三次医療施設の設置は中部を除いては必要ないと考えられる。

  2. しかし、中部ダナン、フエ及びその周辺地域での中核病院の強化は必要であろう。また、大学などの研究教育機関との連携の取りやすい地域の選定が重要となろう。

  3. 公衆衛生上プライオリティの高い疾患の予防治療への資源の適正配置・分配が必要で、結核、マラリア、下痢症はもとより、最近の統計ではエイズの有病率がホーチミン市で極めて高くなっており(表参照)早急な対策が必要である。とくに、コマーシャルセックスワーカー(CSW)、軍リクルート、ドラッグユーザー(太字)での有病率が急速に上昇している。したがってエイズ専門家の派遣や予防活動に必要な機材等の供与が必要である。ゲアン省でプロ技(JOICEF他)としてリプロダクティブヘルスが進行中であるが、ホーチミン市でも市保健局、チョーライ病院との連携プロジェクトが望まれる。

    ホーチミン市での最近のHIV/AIDS (ホーチミン市保健局統計)
    Results from Sentinel Surveillance (Ho Chi Min City

    %/Year 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
    静脈注射による薬物依存者(IDU) 42.3 34.2 28.2 18.6 39.8 65.1 51.2
    コマーシャル・セックス・ワーカー(CSW) 1.2 1.3 2.8 2.3 10.5 20.8 22.5
    性感染症患者(STD pts) 0.6 0.8 1.0 1.3 2.2 5.1 8.2
    結核患者(TB pts) 1.1 1.4 7.8 5.3 4.4 5.3 --
    妊婦(Pregnant women) 0.1 0.1 0.2 0.2 0.2 0.4 0.4
    予備役兵(Military recruits) -- 0.2 0.1 0.0 0.4 2.6 3.0

    チョーライ病院に供与されたCTスキャン機材
    チョーライ病院に供与されたCTスキャン機材。JICAマークが
    添付されているのが見える(中央の青いシール)。

  4. バックマイ病院での第一段階の技術協力は日本側との調印内容に沿ったもので、第二段階は昨年ベトナム(バックマイ病院)、ラオス(セタティラート病院)、日本の3者で協力の可能性について協議したように、ラオスのカウンターパートとしてセタティラート病院に実施した協力(プロ技と無償)は援助の資金を有効に生かすためにも是非発展させるべきであろう。同時に南―南協力の良い事例となろう。

  5. 実際にバックマイ病院に派遣され医療技術の指導を行なっているJICA専門家からは、ベトナム側の援助受け入れ能力は高いものがあるが、物事を進めるのに時間がかかり過ぎるきらいがある。その一方で、自助努力と問題意識を促すことにより援助がより効果的になった(チョーライ病院等)、等の意見が表明された。今後の協力の際に参考にされるべき点である。

    保健省でのヒアリング
    保健省でのヒアリング(右側から2番目が若井・東大教授。
    手前がトルオン=バン=ヴィエット・チョーライ病院委員長)


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