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(4)日本の援助に対する提言と今後の課題

 ベトナム政府が2001年12月の支援国会合(通称CG会合。ハノイで開催)に提出した報告書には、1996―2000年の期間における開発実績のレビューと2001-2005年の開発目標や外国援助要請の案件などが記されている。第6次5カ年計画の実績レビューとしては、生産が5.7パーセントの平均年率で増加したことで計画目標がほぼ達成したことと、食糧生産の飛躍と農業産品輸出の拡大が強調されている。2001-2005年の計画については、農業部門全体として成長率の4.8パーセントを目標としている。

 農業・農村開発における外国援助要請の指針として次の4項目があげられている。

(a) 貧困撲滅という目標との整合性
(b) 農村と農林業の開発をサポートする基礎インフラと関連事業の強化(農村道路、農村電化、植林、農産物加工、農業・生活用水の供給など)
(c) 雇用創出と市場化への配慮
(d) 農業生産と農家所得の向上を促進するための農業・農村信用の拡大

 上述の報告書には、外国援助要請の優先案件リストが掲載されており、その中に89の農林業関連プロジェクトが含まれている。畜産と作物、農村開発などを含む農業の分野を見ると、農村開発、農業多角化、野菜栽培・衛生管理、乳牛飼育などが高い優先順位にあげられている。また農業の基礎インフラとしては、41の灌漑プロジェクトがあげられている。2001―2005年の期間に開始・実施を予定されるこの89プロジェクトは、一部を除いてまだF/S調査等を経ていない。

表6. 外国援助要請優先案件の概要(農林業)

  案件数 投資金額 外国援助要請額

(100万US$)

農業 33 1352.95 1086.31
 養蚕 2    
 畜産 7    
 永年作物 7    
 野菜栽培・衛生管理 2    
 農村開発・入植等 15    
灌漑 41 1972.84 1620.05
林業 15 717.50 597.95
合計   4043.29 3304.31

出所:2001年12月CG会議への報告(Bao Cao cua Chanh Phu tai Hoi Nghi Nhom Tu Van)

 上述したベトナム側の意向、今まで実施された日本の援助の実績とベトナム農業の現状を総合してみると、農業分野に対する今後の日本の援助の対象分野は以下のように考えられる。

(a) 自然環境の保全、貧困撲滅、持続的成長、雇用創出、農業多角化の方向と整合性のとれた農業・農村開発の調査・計画・実施への支援
(b) 畜産、野菜栽培への支援(所得向上に伴ってベトナム国内の消費パターンが穀物から畜産物、野菜、果物などへのシフトへの対応)
(c) メコン・デルタ地域の酸性硫酸塩土壌の改善につながる調査、パイロット・プロジェクト
(d) 農業大学、農業関連の研究機関の調査研究と教育の強化を目的とする技術協力(作物栽培、畜産、土壌改善や水利など、農業技術に関するものの他に、農産物の市場や農家経済など、経営・経済の側面も対象に)
(e) 灌漑・排水の強化を目的とする技術・資金協力

農業分野の援助に関するヒアリング 農業分野の援助に関するヒアリング
(ベトナム外務省、写真左が
栗木・城西国際大学教授)



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