広報・資料 報告書・資料

付録 分析データと分析に関する補足説明

(1)データ

 分析に用いたデータは次の通りである。まず、ベトナム経済のGDP関数を推計するために用いたGDP、資本ストック、技術水準を測るダミー変数、その他のダミー変数の数値は次表の通りである。

表 A-1 ベトナム経済のデータ
GDP
(Y)
十億ドン
資本ストック
(K)
十億ドン
労働人口
(L)
100万人
技術水準の
ダミー変数
(D)
ダミー変数
(D2)
ダミー変数
(D3)
1986 109,189 121,200 30.4 0 0 0
1987 113,154 127,623 31.2 0 0 0
1988 119,960 140,443 32.1 0 0 0
1989 125,571 147,970 32.9 0.5 0 0
1990 131,968 153,561 33.8 1 0 0
1991 139,634 161,705 34.7 2 0 1
1992 151,782 175,473 35.4 3 0 1
1993 164,043 202,284 36.2 4 0 1
1994 178,534 231,610 36.9 5 0 1
1995 195,567 266,329 37.7 6 0 1
1996 213,833 305,845 38.6 7 0 1
1997 231,264 347,902 39.2 7.5 0 1
1998 244,596 386,159 39.8 8 1 1
1999 256,269 421,141 40.4 8.5 1 1
2000 273,582 462,463 41.0 9 1 1

 ここで、資本ストックのデータに関しては、信頼できるデータが入手不可能であるため、資本の減価償却を8%と仮定して、

計算

 という式に基づいてデータの作成を行なった。ここで、Itt年における総投資額である。なお、1986年における資本ストックは、1986年から1988年までのY, L, Iと技術水準のダミー変数=0、KLの弾性値=0.5という仮定から推計した。

 また、技術水準のダミー変数の値は、Nghiep and Quy (2000)における分析に若干の修正を加えた分析から妥当と判断された値を用いている。

 また、日本の対ベトナム援助の実行総額と、それをベトナム・ドン建ての1994年固定価格に直すための為替レートおよびGDPデフレーターのデータ、さらに米ドルとベトナム・ドンの為替レートのデータは次の通りである。

表 A-2.日本の対ベトナム援助の実行総額に関するデータ
援助実行総額
(百万円、名目値)
援助実行総額
(十億ドン、名目値)
援助実行総額
(十億ドン、1994年価格)
GDP
デフレーター
VND/円
為替レート
VND/US$
為替レート
1991 150 13.78 25.08 1.8200 91.9 11,500.2
1992 1,919 162.52 223.14 1.3730 84.7 10,565.0
1993 7,586 735.39 1,190.59 1.6190 96.9 10,842.2
1994 9,204 1,019.71 1,019.71 1.0000 110.8 11,050.6
1995 13,909 1,489.93 1,273.00 0.8544 107.1 11,014.9
1996 16,295 1,566.11 1,230.96 0.7860 96.1 11,148.7
1997 32,693 3,092.43 2,280.36 0.7374 94.6 12,291.6
1998 41,982 5,044.14 3,417.40 0.6775 120.2 13,890.3
1999 85,427 11,725.71 7,513.83 0.6408 137.3 14,028.1
2000 77,369 9,773.22 6,020.30 0.6160 126.3 14,514.1

 なお、日本の対ベトナム援助の実行総額の算出にあたっては、無償資金協力および技術協力は各年度における承認額すべてがその年度内に支出されたと仮定し、有償資金協力に関しては実行額を用いた。

(2)分析結果

 GDP、資本ストック、輸入、輸出について、日本の援助があった場合となかった場合の数値を計算したものが次表である。GDPと輸入、輸出に関して、日本の援助があった場合の数値は、実際の値ではなく、今回の分析で推計を行なったモデルによって計算された理論値である。

表 A-3.日本の援助があった場合となかった場合のベトナムの GDPと資本ストック
(単位:十億ドン)
GDP(国内総生産) 資本ストック
日本の援助が
あった場合
日本の援助が
なかった場合
日本の援助が
あった場合
日本の援助が
なかった場合
1990 131,301 131,301 153,561 153,561
1991 139,857 139,850 161,705 161,680
1992 149,892 149,820 175,473 175,227
1993 164,273 163,970 202,284 201,203
1994 179,234 178,696 231,610 229,591
1995 196,144 195,350 266,329 263,199
1996 214,853 213,857 305,845 301,734
1997 230,066 228,682 347,902 341,840
1998 244,255 242,287 386,159 377,163
1999 257,719 254,360 421,141 405,349
2000 272,527 268,310 462,463 441,915

表 A-4.日本の援助があった場合となかった場合のベトナムの貿易
(単位:百万ドル)
輸入 輸出
日本の援助が
あった場合
日本の援助が
なかった場合
日本の援助が
あった場合
日本の援助が
なかった場合
1990 2,179.10 2,179.10 2,321.82 2,321.82
1991 2,077.73 2,077.34 2,043.57 2,043.32
1992 2,903.00 2,897.85 2,688.77 2,685.66
1993 3,981.96 3,954.83 3,185.93 3,171.76
1994 5,403.63 5,343.82 4,051.37 4,022.07
1995 7,567.28 7,454.50 5,070.45 5,021.03
1996 10,484.90 10,306.09 6,314.86 6,244.40
1997 12,279.35 12,008.10 7,908.17 7,793.79
1998 10,276.17 9,972.97 10,569.97 10,365.49
1999 12,390.91 11,803.49 12,802.28 12,403.06
2000 14,632.93 13,812.06 14,956.79 14,404.03

 以上のような日本の援助があった場合となかった場合の各マクロ経済指標の数値から次の援助効果指標によって、マクロ経済指標の押し上げ効果を計算した結果が次表である。

計算

表 A-5.日本の対ベトナム援助のマクロ経済指標押上げ効果(%)
GDP 資本ストック 輸入 輸出
1990 0.00 0.00 0.00 0.00
1991 0.01 0.02 0.02 0.01
1992 0.05 0.14 0.18 0.12
1993 0.18 0.54 0.69 0.45
1994 0.30 0.88 1.12 0.73
1995 0.41 1.19 1.51 0.98
1996 0.47 1.36 1.74 1.13
1997 0.61 1.77 2.26 1.47
1998 0.81 2.39 3.04 1.97
1999 1.32 3.90 4.98 3.22
2000 1.57 4.65 5.94 3.84

 この結果をグラフにしたのが本文中の図1である。

表 A-6.日本の対越援助のマクロ的内部収益率=0.1902765としたときの計算
(単位:十億ドン)
ΔGDP(現在価値) ODA(現在価値) ΔK
1991 40.0 143.2 25.0
1992 345.3 1,070.5 246.0
1993 1,220.7 3,465.2 1,081.0
1994 1,821.0 3,451.5 2,019.0
1995 2,257.9 3,621.3 3,130.0
1996 2,379.6 2,941.5 4,111.0
1997 2,778.0 4,577.5 6,062.0
1998 3,318.7 5,762.9 8,996.0
1999 4,758.9 10,642.2 15,792.0
2000 5,019.4 7,167.5 20,548.0
2001 - - 18,904.2
合計 23,939.5 42,843.6 -
(ODAの合計)-(ΔKの残存価値)= 23,939.4

 また、1991~2000年度の間に供与された日本の対ベトナム援助のマクロ的内部収益率を算出するために行なった計算結果が表A-6である。ここでは、内部収益率を0.1902765としたときの「便益」の現在価値の総和と「費用」の現在価値の総和が等しいこと(つまり、0.1902765が内部収益率の正しい値であること)を示している。内部収益率を0.1902765としたときの「便益」すなわちGDPの増分(ΔGDP)の現在価値の総和は、23,939.5十億ドンとなっている。他方、この内部収益率での日本の対越援助額(ODA)の現在価値の総和は42,843.6十億ドンである。ここから、資本の増分(ΔK)の2001年時点における残存価値を差し引くのであるが、2000年時点における資本の増分が20,548十億ドンであるので、この資本が8%減価償却したと想定することで2001年時点の残存価値を計算することができる。それが18,904.2十億ドンとなる。そこで、援助額の現在価値の総和は42,843.6十億ドンから資本の残存価値18,904.2十億ドンを引くと、23,939.4十億ドンとなり、GDPの増分の現在価値の総和にほぼ等しくなることが分かる。


このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る