5) 森林保全分野
森林保全分野においては、環境、経済の側面からの重要性に加えて、我が国がこれまで行ってきた緑の推進プロジェクトが成果を出していることから、重点分野となっているが、実施案件そのものは少ない。この分野における代表的な案件としてはプロジェクト方式技術協力で実施された、キリマンジャロ村落林業計画(表14参照)で、1991年に始まり1993年にフェーズI、1993年から1998年にフェーズIIが終了している。その後2年間のフォローアップ協力も行われている。同案件は住民参加型の森林保全計画として実行され、半乾燥地における持続的な村落林業の普及に貢献した。また、予想を上回る厳しい自然条件に加え、構造調整による緊縮財政下であったにも関わらず、プロジェクト目標であった「育苗・造林技術の開発・改良」「展示林の造成」「村落林業に関する普及手法の開発・改良」の全てが達成された。その他、住民参加型の森林保全計画の一環としては、現在森林経営分野のJOCV隊員がモロゴロ州に派遣されている。
同分野に対する援助額は大きくはないが、緑の推進プロジェクト、キリマンジャロ村落林業計画等は高い評価を受けており、他ドナーに対する優位性を保っている分野である。同分野はTASにおいては「環境と天然資源管理」が重点分野となっている一方で、森林資源を含めた天然資源の保全、管理、住民の意識啓発等が活動項目として挙げられているが、PRSPには重点分野とされていない。キリマンジャロ村落林業計画に関係する林業関連の県の予算計画官もPRSPにおける森林の優先度が低いとしていた。PRSPにおける優先度の低さは、県レベルの予算配分も少ないものとなって現れている。これは協力終了後のキリマンジャロ村落林業計画の運営にも影響している。キリマンジャロ村落林業計画によって作られたセンターは、日本から新たな援助が行われる予定はないが、林業関連の訓練センターとして新たなJICAからの援助を期待している状態にある。将来的にPRSPの改訂版において重点項目に加えられる可能性もあるが、現状の優先度の低さから、我が国も今後も重点分野として残すかどうかの議論が必要であろう。
名称 | キリマンジャロ村落林業計画(KVFP) | ||
実施地域 | キリマンジャロ州サメ郡 | ||
協力期間 | フェーズI:1991年1月15日~1993年1月14日 フェーズII:1993年1月15日~2000年1月14日 |
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援助形態 | プロジェクト方式技術協力 | 対象分野 | 林業一般 |
実施目的 | 半乾燥地における村落林業活動(薪炭林造成、アグロフォレストリーシステム、飼料木材造成等)に必要な造林および普及に関する技術の開発改良。援助重点項目のうち、「貧困対策や社会開発分野への支援」「地球規模問題への支援」に相当。 | ||
投入実績 (フェーズII) |
(日本側) 長期専門家10名、短期専門家13名、研修員受入14名(第3国研修3名を含む)、機材供与7,600万円、ローカルコスト8,420万円 (相手国側:天然資源観光省) |
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終了時評価概要 | |||
当初の予想を超える少雨やタンザニア政府の財政構造改革による緊縮財政にもかかわらず、(1)苗畑技術の開発改良、(2)造林技術の開発改良、(3)展示林の造成、(4)普及手法の開発改良という設定された成果のかなりの部分が得られ、プロジェクトの目標はほぼ達成された。 観点別には、以下のような評価がされている。 1) 目標達成度 目標とした4つの成果が得られたことで高い達成度であった。 2) 効率性 タンザニア側の予算確保に問題があったものの、概ね効率よく実施された。 3) 効果 対象住民の技術向上が見られ、植林が進んだというプラス効果が見られた。 4) 妥当性 目標設定と活動内容は妥当であったが、客観的評価のための指標と目標値が設定されていなかった。 5) 自立発展性 技術的側面・制度的側面からは自立発展の可能性があるが、財政的な問題が大きな課題として残る。 |