4) 基礎保健分野
1971年から74年まで実施されたプロジェクト方式技術協力のダル・エス・サラーム大学医学部プロジェクト以来、保健医療に関しては、最も早い時期から協力を実施している分野である。その後、結核対策とプロジェクト方式技術協力を実施した。1980年代は、技術協力よりもマラリア抑制対策に対する無償資金協力の実施が中心となった。マラリア抑制対策は5期(1986年-5億、1988年-4.11億円、1990年-3.0億円、1991年-3.04億円、1993年-6.74億円)70続けられ、同疾患に苦しむ国が多いアフリカにあって、新しい防疫モデルの開発に貢献することができた。1990年代に入ってからは、10年以上実施していなかったプロジェクト方式技術協力が保健省予防局をカウンターパートとして母子保健(1994年から1999年)の分野で開始された。
現在は、保健医療行政能力の向上、基礎的保健・医療サービスの向上、人口・エイズ対策を目的として、プロ技・専門家派遣・機材供与・無償資金協力・青年海外協力隊員派遣等の様々なスキームによる案件が実施されている。その中でも、UNICEFとの連携によるマルチバイ案件が(機材供与のみであるが)多いのも基礎保健分野での協力の特徴である。供与機材の内容としてはEPI分野のワクチンやコンドーム等の消耗品、プライマリー・レベルの基礎的医療器材、冷蔵庫等、基礎保健に重点を置いた支援となっている。これらの機材供与をマルチドナーと連携して行うことによって、機材の維持管理面の自立発展性にプラスの面がもたらされている。
基礎保健分野においては、SPが早くから進んでおり、我が国の対応についてもすでにある程度の結論は出ている(3.2.3 (2)「SPに対する我が国の対応」参照)。外務省「タンザニア国別援助計画」においては、「保健分野においてもセクター開発計画が策定され、段階的に実施されているところ、我が国としてもこれを踏まえて、他ドナーとの連携にも配慮しつつ協力を検討していく」としている。また、JICA国別事業実施計画においては、「タンザニア政府は保健医療分野の改革のためにSPを導入し地方分権化の流れに沿って地方行政主導型の保健医療改革に着手している。(JICAは)当面は従来の各スキーム毎の協力目的に応じて有機的に組み合わせて包括的な地域支援の実施を検討する等活動現場レベルにおける協調・連携を一層強化してコモン・バスケット・ファンド以外の形でSPアプローチの推進を図る方策が現実的」としている。すなわち、SPに対し、(1)各スキームを有機的に組み合わせ包括的な地域支援、(2)活動現場での各ドナーとの協調・連携、(3)コモン・バスケット・ファンド以外の形でSPアプローチの推進を図る方向にある。
セクター別開発計画の実施に関し、保健省の組織能力、財政管理能力、郡レベルでの会計処理能力等が十分でないことが懸念されている。こうした問題点を考慮に入れた案件形成については、プロジェクト方式技術協力で行われているモロゴロ州保健行政能力強化計画が挙げられ、プロジェクト型援助の特徴(立案が容易71)を生かした非常に早い対応がなされている。また、現在はコモン・バスケット・ファンドに対して、債務救済無償や見返り資金の投入が可能となっている。今後も引き続き上記懸念事項を考慮に入れた案件形成を行い、これらの事項が改善されるにつれて、セクター別開発計画に対する我が国の関与(コモン・バスケットへの参加等)を見直しする必要があるだろう。
70 外務省「ODA白書」(複数年)
71 詳細は「3.4.2(2)日本の援助実施体制」において後述する。