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2) 都市部等における基礎インフラ整備等による生活環境改善  

 我が国の対タンザニア援助においてキリマンジャロ州における農業プロジェクトと同様に、首都ダル・エス・サラーム周辺の基礎インフラ整備に係る援助を重要視してきた。

 道路に関しては、1990年代前半から世銀による統合道路プロジェクト(Integrated Roads Project:IRP-I)を基本として道路の整備が図られてきた。IRP-Iに対しては、1990年から1995年の期間に世銀と16ドナーが資金を提供し、タンザニア政府も開発費用の10%を拠出し、良好な状況にある幹線道路を15%から60%に、良好な状況にある農業地域の州道を10%から50%に高めようとするものであった。しかし、一部ドナーのプロジェクトは計画期間内に終了していない。また、1995年からは第2次統合道路プロジェクト(Integrated Roads Project:IRP-II)が2004年を終了年として実施されている。IRP-IIでは良好な状況にある幹線道路を80%に高める計画である。しかし、1999年における幹線道路の舗装率は59%となっている。舗装率が向上しない理由は、建設された道路が3~4年で補修が必要となった場合でも、予算不足で必要な補修がなされないためである。ガソリン税の特別会計化が進められ、1991年から、道路の維持費用を拠出するための道路基金(Road Fund)が運用されている。基金の70%を公共事業省の幹線道路・地方道路の整備維持に、30%を地域開発、自治省の農道整備維持に配分しようとするのものである。しかし、十分な額とは言えず、道路に関する援助をコモン・バスケット化し、補修・維持費用に利用できると良いとのタンザニア側の意見もある。

 我が国はIRP I/IIに従って、無償資金協力により、これまでダル・エス・サラームの舗装道路総延長の20%を援助してきた。また、この他の首都圏のインフラとして全送電網の40%、電話回線の30%を無償資金協力によって整備している。電力に関しては、現在、民営化が進められている。政府関係者によると、送電部分は民営化しないとしていたが、将来的には民間が中心となっていく分野と思われる。

 我が国が供与した主要案件は以下のとおりである。

道路

 セランダー橋拡張計画(1980年度) (15.00億円)

 モロゴロ道路整備計画(1984~1985年度) (17.78億円)

 首都圏道路網整備計画(DRIMP)(1991~1995年度) (41.02億円)

フェーズ 道路名 距離(Km) 援助額(百万円)
I 3-Kinondoni地区道路、Ocean道路、中央地区道路、他 27.4 896
II Ali Hassan Mwyinyi、New Bagamoyo道路 9.8 987
III Morogoro道路 5.7 1,333
IV Kariakoo地区道路、Changonbe道路 18.1 886
  合 計 83.6 4,102
(出典:JICA「タンザニア国国別事業評価(第2次調査)(第5ドラフト)

 道路補修機材整備計画(1993、1995年度) (7.18億円)

 ダル・エス・サラーム道路改善計画(DRIP)(1997~1999年度) (35.93億円)

フェーズ 道路名 距離 援助額(百万円)
I Ilala地区、Sinza地区、Mwanayamala地区 15.5 1,089
II New Kigoro道路 2.8 1,068
III Kawawa道路 4.3 1,436
  合 計 22.6 3,593
(出典:JICA「タンザニア国国別事業評価(第2次調査)(第5ドラフト)

電力供給

 ダル・エス・サラーム送配電網計画(1984、1986、1987、1992年度) (38.54億円)

 ダル・エス・サラーム電力供給拡充計画(1996~1998年度) (20.30億円)

 第二次ダル・エス・サラーム電力供給拡充計画(1997~1999年度) (12.51億円)

電話

 ダル・エス・サラーム電話網改修計画(1989、1990、1993年度) (20.83億円)

 ダル・エス・サラーム市電話網改修計画(1996年度) (12.84億円)

 同分野における我が国の供与金額(貢献度)は上記のとおりであるが、これらの貢献度はDAC諸国のタンザニアに対する援助額と比較しても高いと言える(1996年-17.5%、1997年-9.7%、1998年-10.8%)69。PRSPにおいて地方道路が優先分野にあげられており、今後、道路分野の支援は地方都市間の道路に重点が移ると思われる。タンザニアは2000年度に道路セクターについてのMTEFを作成しており、基礎インフラのうち特に道路については、今後、我が国は上記援助額の比率から見てもドナー協調の中心となる可能性もあり、我が国の同分野に対する援助様態の方針を明確にし、他ドナーへ我が国の立場を主張する必要が一層増すであろう。

表12 視察参考案件4:ダル・エス・サラーム道路改善計画
名称 ダル・エス・サラーム道路改善計画
実施地域 ダル・エス・サラーム市
協力年度 1997(平成9)年度~1999(平成11)年度
援助形態 無償資金協力 対象分野 通信・運輸
実施目的 ダル・エス・サラーム市内の市街道路の改修と中央環状道路の拡充。援助重点項目のうち、「経済・社会インフラへの支援」に相当。
金額 35.93億円
(第1期:10.89億円、第2期-1:10.68億円、第2期-2:14.36億円)
援助概要 第1期:ダル・エス・サラーム市内のムワンニャマラ、イララ、シンザの3地区の地区道路(13路線、総延長15.6km)の改修、
第2期-1:中央環状道路の拡幅(延長2.8km)、
第2期-2:中央環状道路の拡幅(延長3.6km)及び新設(延長0.7km)
事業効果
 雨季に排水不良のため通行不能となる市街地区道路を改良することにより、自転車はもとより、バス、自転車、歩行者に対して交通の安全性、利便性、快適性を与え、通勤通学時間の大幅な短縮が図られる。また、3本の放射状幹線道路を連結する中央環状道路の整備により、市中心部の渋滞が緩和される。可能な限り機材及び労働力の現地調達を行うことで、地場産業の活性化と就業機会の増大にも貢献する。

表13 視察参考案件5:ダル・エス・サラーム電力供給拡充計画
名称 ダル・エス・サラーム電力供給拡充計画
実施地域 ダル・エス・サラーム市
協力年度 1997(平成9)年度~1998(平成10)年度
援助形態 無償資金協力 対象分野 通信・運輸
実施目的 ダル・エス・サラーム市に電力を供給しているタンザニア電力公社(TANESCO)の老朽化した配電設備の改善・強化。援助重点項目のうち、「経済・社会インフラへの支援」に相当。
金額 20.30億円(平成9年度:12.01億円、平成10年度:7.84億円)
(平成8年度 0.45億円)
援助概要 施設建設:発電所の増設1箇所、変電所の新設2箇所、132kv送電線の建設7.5km、33kv送電線の建設10.5km
機材供与:工事関連機材一式
事業効果
 新規発電設備1箇所により電力確保が確実になる上、電力公社の老朽化した配電設備(変電所および送電線)が改善されて送電が効率的に行われるようになる。この事業において、対象地域の61万人に対する電力の供給が安定的になり、間接的には市内全域の200万人が恩恵を得ることが見込まれる。電力供給の安定は、一層の商業活動の活発化、工業製品の生産増加、市民の生活水準の維持・向上等に資する。


69 ODA白書2000より調査団作成




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