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3.2.2 我が国の対タンザニア援助実績  

 我が国の対タンザニア援助は独立以前の研修員の受入れ、専門家の派遣等に始まる。1966年になって在タンザニア日本国大使館が開設され、経済借款が始まったのを機に経済協力が行われるようになった。当初はニエレレ政権の政策により、キリマンジャロ州が協力地域に位置付けられ、同州の農業改善の協力に貢献してきた。

 1990年代に入り、タンザニアは我が国の重点援助国の一つとなった。それはタンザニアが東・南部アフリカ諸国において指導的な役割を担い積極的に活動していること、1986年以降、世銀・IMFの指導の下で構造調整・市場経済化を推進していること、1992年に複数政党制を導入し、1995年にも大統領と国会議員の選挙を行って民主化への努力をしていること、我が国との関係が良好であること等の理由によるものである。以来、我が国はタンザニアにおける支援を拡充し、デンマーク、スウェーデン、オランダ、イギリス等と共に主要ドナーとなっている。(表6参照)

表6 DAC諸国のタンザニアに対するODA実績
(支出純額、単位:US百万ドル)
1位 2位 3位 4位 5位 合計
96 日本 105.7 デンマーク 91.2 オランダ 74.9 英国 67.3 スウェーデン 65.2 605.4
97 フランス 79.6 英国 67.6 デンマーク 64.0 ドイツ 59.3 日本 55.4 569.1
98 英国 158.6 ドイツ 109.9 日本 83.4 オランダ 80.3 デンマーク 69.6 769.0
出典:外務省ODA白書(2000)

 我が国の援助につき、無償資金協力、技術協力、借款と援助形態別に分けて見ると、1999年度までの累計値で、無償資金協力は875.81百万ドルでサブ・サハラ・アフリカ域内第1位、技術協力は331.42百万ドルで域内第2位となっており、タンザニアを重点援助国としてきたのが見て取れる借款は純額で100.2百万ドルを供与してきたが、タンザニアが経済悪化に伴い債務削減措置(トロント・スキーム、新トロント・スキーム、拡大HIPCイニシアティブ)を受けていることから、1981年度にキリマンジャロ州のローアモシ農業開発等が実施されたのを最後に債務繰り延べを除き1982年度以降は供与していない。(表7参照)

表7 タンザニアに対する日本の政府開発援助
(単位:US百万ドル)
年度 贈 与 借 款 合 計
無償資金協力 技術協力 合 計 支出総額 支出純額
1990 28.37 15.03 43.40 0.85 -2.72 40.68
1991 42.76 13.74 56.50 0.08 -4.24 52.26
1992 63.33 16.00 79.33 0.32 -6.13 73.20
1993 74.27 25.33 99.60 0.30 -10.77 88.83
1994 79.61 27.06 106.67 0.54 -1.91 104.76
1995 90.21 35.65 125.86 0.99 -1.56 124.30
1996 80.29 29.20 109.49   -3.82 105.67
1997 36.83 29.05 65.88   -10.51 55.37
1998 81.05 21.81 102.86   -19.49 83.37
1999 59.56 21.47 81.03   -6.12 74.91
合 計 636.28 234.34 870.62 3.08 -67.27 803.35
累 計 875.81 331.42 1207.22 177.45 100.2 1307.42
出典:外務省ODA白書(複数年)

 続いて、援助スキーム別に協力分野の動向を見てみると、無償資金協力では、道路・橋梁整備、電力供給、通信・放送等の基礎インフラ、保健医療の基礎生活分野に対して協力を行っている。また、ノンプロ無償については、1987年に開始以来99年までに累計で175億円を供与し、近年では資金の使途を特定するセクター別開発計画への支援も実施している。また、債務救済無償を利用してPRBSへの拠出も行われている64

 草の根無償は、1989年に供与が始まって以来、年々件数が拡大しており、分野も保健医療、水供給、学校校舎建設、民主化教育等多岐に渡っている。タンザニアでは草の根無償の効果的実施を図るため、同種の援助プログラムを有するドナー国の大使館の担当者による会議を1994年から開始させており、タンザニア政府側の興味も深いと言える。

 技術協力では農業、保健医療、運輸交通の分野において、専門家派遣、青年海外協力隊派遣、研修員受け入れ等の各形態を利用して、重点的な協力が実施されてきた。特に農業開発、村落林業、中小工業開発の分野では、キリマンジャロ州においてプロジェクト方式技術協力が長期間にわたり実施されてきた。

 専門家派遣は1963年から実施しており、1992年以前は、年間派遣人数は延べ15~20人前後で推移していたが、1992年以降は年間35~40人程度に増えている。累積実績では農業(159名)、保健医療(76名)、工業(62名)、林業(50名)の順で多く(別添3協力隊・専門家・研修員等の分野別協力実績表参照)、農業分野での支援が中心であるのは変わらない傾向だが、近年は保健医療分野と林業の専門家が増えてきている。

 青年海外協力隊は1967年に始まり、2000年までの累計で951人を派遣してきた。毎年30~40人前後で推移しており、分野別には農業(219名)、工業(160名)、人的資源分野(153名)、社会基盤(128名)における派遣実績が多い(別添3参照)。特筆すべきは、1989年に理数科隊員の派遣が再開されたことによる人的資源分野の隊員が増えていることにある。

 研修員受け入れは独立以前の1954年から実施しており、2000年度までに延べ3,066名を受け入れている。分野別には、近年増加してきた保健医療分野(978名)が最も多く、ついで農業(373名)、人的資源(281名)、工業(268名)、行政(259名)の順となっている。(別添3参照)

 近年増加してきた保健医療、林業分野の専門家派遣の実績から分かるように、前項で述べた我が国の援助重点5分野(農業、基礎教育、基礎保健、インフラ整備、森林保全)に対する取り組みの強化が見られる。その他のスキームにおいても従来から重視されてきた農業分野を中心に、無償では基礎インフラ、保健、技術協力では農業、保健医療、運輸・交通(重点5分野の基礎インフラに相当)、技術協力のうち協力隊派遣は農業、人的資源(教育に相当)、研修員受け入れは保健医療、農業、人的資源等、5分野に対する援助重視の傾向が見られる。このことは、重点5分野がタンザニア政府との合意の上で選定されていることから、タンザニアとの合意事項を遵守しようとの姿勢と捉えることができ、高く評価される。


64 最近の例では、2002年3月18日に3億6,315万7,000円の債務救済無償資金協力のための書簡交換がなされ、本件供与資金の50%を上限としてPRBSに投入される予定である。




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