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第4章 今後の国別援助政策に向けての提案

2. 援助政策の過程の検証から得られた提言  

提言2:より幅広い意見の聴取の維持促進

 今回の調査では、対象期間の国別援助政策の策定過程にかかわる組織・人物の適正さについて検証したが、策定過程において、有識者やNGOなどからの意見聴取が行われたという事実は確認できなかった。現在進められている国別援助計画の策定過程では、現地を含むNGOや国内有識者などからの意見聴取、全関係省庁との協議が含まれており、この点は既に改善されているが、ODAの透明性・公開性の観点からも、またより効果的な政策を策定する上でも、幅広い意見聴取を維持・促進していくことが望ましい。なお、その際、かかる意見の聴取等の機会を政策策定過程のいかなる段階で実施すべきか、いかに適切な対象者やグループを求めるべきか、等の問題を注意深く検討しておく必要がある。

提言3:「国別援助方針」と実施機関の援助方針との位置づけの明確化

 今回の調査では、「国別援助方針」はその内容のほとんどが、実施機関の基本計画や基本方針に反映され、プロジェクトも実施されたことが確認された。

 しかしながら、一部には「「国別援助方針」の重点分野と実施機関の援助計画に多少の違いがある。」という点が認められた。「国別援助方針」の柔軟な活用は否定されるべきではないが、各組織の上位政策にばらつきがある場合には、被援助国や他ドナーに対してわが国の援助政策目標が不明確になる可能性があることから、「国別援助方針」の上位政策としての位置づけを明確にする必要があろう。例えば、「国別援助方針」の位置づけを、実施機関の援助計画の上位政策であり、実施機関の援助計画は「国別援助方針」を具現化するものであるということが明確に定められれば、「国別援助方針」と実施機関の援助計画に違いは生じにくくなり、「国別援助方針」の確実な実施に資するものと考えられる。

提言4:「国別援助方針」の内容の明確化

 「国別援助方針」にあげられた分野のうち、一部案件の実施に至らなかったものが見受けられたが、「国別援助方針」の内容をより明確にすることで、関係者の認識の共有が促進され、より確実な「国別援助方針」の実施につながるものと考えられる。例えば、今回の調査で用いた「国別援助方針」の体系図は本調査団が作成したものであるが、「国別援助方針」そのものに、最上位の援助政策目標、その下位にある重点セクター目標、またその下位にあるサブセクター目標がそれぞれ何であるかについて明確に記載されていれば、少なくとも目標及びその達成度を測るための指標(定量指標及び定性指標)が設定されていれば、関係者の共通の理解に基づく案件形成が行われるであろう。さらに重点セクターやサブセクターに加えて、それらの開発課題を達成するためにどのように支援するかという方法論や優先順位がより具体的に示されていれば、国別援助方針に則った実施機関の案件形成を促進することが可能となる。また、相手国側も、日本がどのようにその開発計画を支援していくかを理解した上で案件を申請することができ、両者にとって効率良い結果が出るであろう1。また相手国政府や日本国民に対しても、よりわかりやすい形で説明でき、透明性の向上にも資するものと考えられる2

提言5: 「国別援助方針」の見直し過程の明確化と基準の設定

 「国別援助方針」は毎年見直され、重点サブセクターの微調整が行われていたが、今回の調査では重点分野の内容の変更は難しいという意見も出された。また、DAC新開発戦略は政策協議などで日本の援助における留意点として重視されていたにもかかわらず、「国別援助方針」では言及されなかった。これらの点から、スリランカ側のニーズや、わが国の援助政策の変化に柔軟に応え、援助効果を高めるためにも、具体的な見直し過程やその基準を設定することが望ましい。

提言6:「国別援助方針」の評価の実施

 上述したように、今回の調査では、一部「国別援助方針」の確実な実施のために、改善すべき点が見受けられたが、「国別援助方針」の実施を確保するためには、その進捗度合いを定期的に測定し、評価することが重要である。また、そうすることによって国民や対外的に援助の透明性を確保できるものと考えられる。


1 この意見は、スリランカ政府の援助窓口であるERDや保健省で出された。

2 3章で述べたように、政策協議において、また実施機関がスリランカ政府や他のドナーと協議する場合にも、日本の援助政策や戦略については、「国別援助方針」を示して協議するというよりも、それぞれ政策協議対処方針や、公表されていない実施機関の実施計画や実施方針によって説明していた。




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