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第3章 評価内容

2.2 「国別援助方針」の過程  

(1)「国別援助方針」の策定・見直しの概略

 今回の調査では、「国別援助方針」の策定については、実際の過程を完全な形で確認することはできなかったが、聞き取り調査と外務省の資料より「国別援助方針」策定過程を把握した(別添3「援助政策実施過程フローチャート」参照)。国別援助方針の策定にあたっては、まず大使館が調査し、それを基にJICA・JBIC(旧OECF)の本部と現地事務所からのコメントを受けて「国別援助方針」の原案を作成し、外務省経済協力局がとりまとめとなり、関係各局との協議を経て決定される形を取っている。

 今回の評価の対象となる対スリランカの「国別援助方針」に挙げられている重点5分野は、1991年の経済協力総合調査団がスリランカ政府と協議した結果を踏まえ設定されたものであり、1992~1997年までのODA白書によると、1992年にはスリランカ「我が国の政府開発援助」の項に「重点分野」として述べられていたが、1993年からは「我が国の政府開発援助の実績とあり方」の中で、援助方針として掲載されている。1997年以降は、「国別援助方針」として現在もHPにて公表されている。

 また、1997年4月には、第1次ODA改革懇談会最終報告にて、国別援助計画の策定及びそのための必要な体制整備が提言され、1998年の「対外経済協力関係閣僚会議」の幹事申し合わせに基づき、ODAを政府全体として、一体性・一貫性をもって、効果的・効率的に実施するための努力の一環として「国別援助方針」をより具体的にした「国別援助計画」を策定することとなった。1999年のODA中期政策においても、「国別援助計画」を順次策定し公表することが述べられている。2002年7月現在で、17カ国に対し、この「国別援助計画」が策定され公開されており、スリランカを含む9カ国についても、策定予定である。

(2) 「国別援助方針」の実施機関の国別実施計画・国別業務方針および案件形成実施への反映過程の概略

1) JICAの国別事業実施計画18への反映

 JICAの「国別事業実施計画」は、日本の「国別援助計画(方針)」等に記載される援助政策を具現するために作成される19。相手国との政策対話により挙げられた開発課題を基に、援助方針に示されるものを汲み取って実施指針や実施計画が策定されていた20。また、策定過程には大使館との意見交換があり、その中でも、「国別援助方針」を反映される過程が取られていた。

2) JBICの国別業務実施方針21への反映過程

 JBICの「海外経済協力業務実施方針」は、日本のODAに関する基本方針と政策を踏まえて定められたものである。同時に、「国別業務実施方針」も、上記の「海外経済協力業務実施方針」や「国別援助実施計画(方針)」等に基づき、当該途上国に対する円借款実施の方針を定めるものとして策定されていた。これは、途上国の開発の状況やニーズ等を踏まえて、円借款として取り組むべき重点分野や案件準備・実施促進策などについて記載している。

 「国別業務実施方針」は、JBICによるセクター調査を基にした方針案が作成されるが、その中で、外務省の「国別援助方針」との整合性が検討される過程が取られた。ただしJBICとして円借款に適した分野を絞りこむ必要があった22

3) 案件形成・実施への反映

 JICAの場合は、援助案件候補が「国別援助方針」に示された重点セクター・サブセクターに外れていないかの確認がされる。JICAは当時よりプログラムアプローチを取り入れようとしており、「国別援助方針」はプログラムを作る参考とされたが、具体的な面はスリランカ政府への聞取り調査を基に決定された23

 JBICの場合も、「国別援助方針」を検討した上で策定された国別事業実施方針やセクター調査を基に案件形成が行われるが、案件形成過程においても「国別援助方針」に配慮する過程が取られていた24


18 JICAは1989年より、「国別援助実施指針」と「国別事業基本計画」の作成を開始した。これらは、被援助国の社会・経済状況全般を分析し、優先的に取組むべき援助課題を整理したものである。そこには、多様で複合的な開発途上国のニーズに迅速かつきめ細かく応えるには、各国の固有の実情を的確に把握した上で総合的な計画を立てる必要があるとの認識があった。「国別援助実施指針」は、被援助国の政治・経済・社会状況と経済社会開発の現況(開発重点分野・主要政策・開発推進上の問題点を含む)、他ドナーの援助動向、JICA援助の重点分野、協力実施の際の留意事項、評価のポイントからなる。99年からは、国別アプローチを強化すべく、上記の指針と基本計画を発展させた「国別事業実施計画」の策定が始まった。

19 国際協力事業団年報1999より。これは、被援助国の開発の方向性と援助重点分野、JICAの協力方針の他に、開発課題マトリクス、事業ローリングプラン、スキーム別投入計画、JICA協力上の留意点(貧困・ジェンダー・環境の横断的課題での問題点、主要ドナー・NGOの動向を含む)から構成される。但し、JICAの協力の基本的な考え方では、上記の重点分野の他に、(1)地域間格差是正、(2)輸出産業振興に向けた技術・人材開発やインフラ整備、(3)主要都市における総合的な環境整備という3つの課題別の視点で協力プログラムを策定することが示されている。また、重点サブ分野では、初等中等教育の強化が入っている等、実際の援助案件に即した内容になっている。

20 当時の現地機関担当者からの聞取り調査より

21 JBICは、旧OECFだった1990年代より、被援助国のマクロ経済と主要セクターの現状や開発計画について詳細な調査を実施し、「カントリーペーパー」としてまとめていた。これは、途上国支援にあたり、緊急度・開発効果ともに高いプロジェクトを発掘・形成することを目的としている。スリランカにおいても、本評価の当該期間においても毎年作成されていた。スリランカの政治・治安・経済動向、他ドナーの援助動向、対スリランカ円借款の動向と供与方針、新規円借款要請案件とF/Fの対応、主要セクターの動向/ニーズから構成される。99年には、国際協力銀行法に基づき、円借款業務を効果的・効率的に実施するために重点を置くべき分野および地域その他の事項につき定めた「海外経済協力業務実施方針」が策定された。

22 当時のJBIC関係者からの聞取り調査より

23 当時のJICA援助関係者への聞取りより

24 当時のJBIC援助関係者への聞取りより



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