3. 評価調査の手法
今回の評価では、評価対象を理論、過程、効果の3つの側面から検証する総合的評価手法を採用し、その基本的な理論、過程、効果の3つの側面から以下の内容に従って検証した(図1.3-a、別添1参照)。
基本的な理念については、「妥当性」という評価項目を設け、「国別援助方針」の基本的な理念がわが国の基本的な経済協力政策や相手国のニーズと整合したものであるのかという点を中心に検証した。
過程については、「適切性」および「効率性」という評価項目を設け、「国別援助方針」の策定過程、実施過程に参加した組織・人物が適切であったか、お互いのニーズが的確に反映されるような過程を経ていたか、重複などの無駄がなかったか等を検証した。
効果については、「有効性」および「インパクト」という評価項目を設け、スリランカのマクロ経済指標の動向を国全体と分野別に分析した。但し、わが国のODAがスリランカのマクロ指標にどの程度貢献したかについては、これを証明するための確たる手法はないため、今回の分析内容には含めなかった。
また、分析および検証の前提として、「国別援助方針」の理念、過程を把握する必要があるが、今回の調査では、外務省、JICA、JBIC、スリランカ政府などの協力を得て、当時の文献を収集し、十分でないところをインタビューなどで補った。しかしながら、過去の状況が全て明らかになったわけではなく、あくまで現存する情報の中から推論せざるを得なかった点もあり、ここが今回の調査の限界である。
3.2 援助政策の基本的な理念(開発体系図による妥当性の検証)
援助政策の「基本的な理念」の検証に関して、まず対スリランカの「国別援助方針」を開発体系図として整理し3、その理念を明確化した。その上で、基本的な理念の「妥当性」について以下の内容を検証した。
「過程」の検証にあたっては、当時の策定過程、実施過程のフローチャートを作成し、当時行われていたプロセスの把握に努めた(ここでの援助政策の実施過程とは、「国別援助方針」がいかに援助実施機関であるJICA・JBIC(旧OECF)の国別事業実施計画・国別業務実施方針に反映されたのか、また、案件の形成・実施に移されたのかという過程を指す)。その上で「適切性」と「効率性」という項目を設定し、以下の内容を検証した。
(1) 援助政策過程の適切性
1) 政策策定過程
1) 政策策定過程
「効果」の検証にあたっては、援助政策の下で実施された援助の総体により引き起こされた結果をマクロ指標の動向より分析した。
その際、政策デザイン・マトリクス6により、対スリランカ援助政策の目標、重点分野目標を整理した。但し、日本のODAによるスリランカ経済への貢献度については、その技術的な困難さから今回の評価内容には含めなかった。
(1) 有効性
(2) インパクト(第3章3.3)
1 2000年1月に総務省は「政策評価に関する標準的ガイドライン」を公表し、これをもとにそれぞれの省が政策評価を検討することを奨励している。
2 出典:外務省「日本のODA年次報告書」;案件は複数年にわたるものがあるため、当該案件の合計金額と当該期間の援助額は、必ずしも一致しない。
3 援助政策目標、重点分野目標、サブ分野目標をそれぞれ設定し、それらを系統的に図式化したものを開発体系図とした。対スリランカ「国別援助方針」の開発体系図は3章を参照。
4 1992年6月に閣議決定された。1.基本理念、2.原則、3.重点事項(地域、項目)、4.政府開発援助の効果的実施のための方策、5.内外の理解と支持を得る方法(情報公開の促進、広報・開発教育の強化)、6.実施体制(人材の養成・確保・活用)、効果的・効率的な実施体制の確保、派遣される援助関係者の安全の確保等)を構成内容としている。
5 1999年に、その後5年間の政府開発援助の方針を明示するために策定された。はじめに、I.基本的な考え方、II.重点課題(1.貧困対策や社会開発分野への支援、2.経済・社会インフラへの支援、3.人材育成・知的支援、4.地球規模問題への取組み、5.アジア通貨・経済危機の克服等経済構造改革支援、6.紛争・災害と開発、7.債務問題への取組み)、III.地域別援助のあり方(1.東アジア地域、2.南西アジア地域、3.中央アジア・コーカサス地域、4.中近東地域、5.アフリカ地域、6.中南米地域、7.大洋州地域、8.欧州地域)、IV.援助手法(1.政府開発援助の政府全体を通じた調整および各種協力形態・機関間の連携、2.政府開発援助以外の政府資金(OOF)および民間部門との連携、3.NGO等への支援および連携、4.他の援助国および国際機関との協調、5.南南協力への支援)、V.実施・運用上の留意点(1.開発途上国ごとの状況把握と国別援助計画の策定、2.事前調査、環境配慮、実施段階でのモニタリングおよび事後評価、3.開発人材の育成、4.国民の理解と参加の促進、5.情報公開の推進)を構成内容としている。
6 政策における上位目標達成に必要な活動・投入・目標・外部条件・指標などの諸要素とそれらの間の論理的な相関関係を示した概略表。別添7「対スリランカ援助政策デザイン・マトリクス」参照。