1.2.5. ポリオ対策
(1)派遣概要
相手国 | ニジェール |
プロジェクト名 | ポリオ対策 |
協力期間 | 2000年4月~2004年 |
事業部門 | 保健医療分野 |
相手国実施機関 | 保健・風土病対策省 |
プロジェクトサイト | マラディ県ポリオ撲滅プロジェクト |
裨益対象 | 地域の0歳~15歳の住民 |
PDM | 有(作成99年7月) |
上位目標 | ニジェールの野生株ポリオウイルスが減少する |
プロジェクト目標 | マラディ県のポリオが撲滅する |
成果(活動分野) | 成果1:各医療機関がPFAサーベイランスを十分に理解する。
成果2:各麻痺患者のケースが正確かつ迅速に報告され、然るべき処置がとられる 成果3:野生株ポリオウイルス確認後然るべき処置がとられる 成果4:マラディ県におけるポリオ定期予防接種率が55%以上になる 成果5:JNV(ワクチン一斉投与)が確実に行なわれ、一度もワクチンを投与されない子供の数が0になる 成果6:他地域から進入するポリオに対する対策が確立している 成果7:中央レベルとの連携がスムーズに行なわれる 指標:最低月1度は中央レベルとの会合を持つ |
日本側投入実績 | |
協力隊(職種別) | シニア隊員2名、ポリオ対策隊員4名、自動車整備1名 |
資機材 | 車両1台 車両維持費(メンテナンス・運転手傭上・出張費・燃料・保健) |
研修費用 | 保健員研修費用とフォローアップ |
ニジェール側投入実績 | |
人員 | コーディネーター カウンターパート(各隊員1名につき1名) |
研修費用 | 保健員研修講師 |
施設 | ポリオ対策事務所・保健員研修施設 |
資機材 | 単車(各医療施設)および燃料費 |
協力実施のプロセス | |
シニア隊員による調査期間 | 1999年1月~2001年1月 |
国内支援体制 | 技術顧問(1名) |
他の日本のODAとの関係 | |
他のドナーとの関係 | 特になし |
1) 妥当性
ニジェール国へのポリオ対策の派遣は1999年1月に開始されこれまで述べ7名(シニア2名を含む)の隊員が派遣されてきた。プロジェクトのサイトであるマラディ県は現在においてもポリオ患者が発見されている。当該地区におけるポリオ撲滅への協力隊の導入はニジェール国政府およびWHOのニーズに合致しており計画における妥当性は非常に高かった。またシニア隊員とのセットでの派遣により「砂の深い地域での隊員の移動手段」や「政府医療関係機関との交渉」といった問題を、隊員派遣開始時より前向きに解決していることは2年という隊員の任期を考慮するに非常に有効な手段である。ポリオの撲滅は理論的には可能であるが、ワクチン一斉投与の実施度などは同国内でも地域によって濃淡があり、また国境を接する隣国からの人口の移動など、1地域内のみの活動では限界がある。当初2000年終了予定であった同プログラムは現在2004年まで延長されている。
2)有効性
隊員達は、「マラディ県のポリオを撲滅する」、という明確な目標のために活動を行っており。当該地域でのポリオサーベイランス活動の活性化に向けて県医療事務所、郡診療所、村の保健員(ボランティア)に対して積極的な働きかけ、同時に組織的な機動性に欠ける各医療施設間の連携を強めるとともに、村の保健員に対して研修を行なっている。このため、妥当性同様にその有効性も高い。
また、JNV(ワクチン一斉投与)の効果的な実施に向けて資機材(ワクチン・コールドチェーン・車両・接種者の確保と研修等)の確認や手配などをロジスティックに実施しており、接種率の向上に努めており、目標達成に向けた活動が的確に行われている。
3)効率性
ポリオ対策隊員4名のうちの1名とシニア隊員は医療関係者(看護婦)であり、これは現地医療関係者との医師疎通を容易にしている。また啓蒙普及に関する活動の対象を各村落の保健員に絞り込み、現地側医療関係者と一体となった住民参加型の体制を構築しており、活動の効率性を高めている。
保健員に対する研修では各サーベイランスの手法やワクチンの必要性といったものにとどまらず、一般的な公衆衛生の講習会の開催手法なども伝達している。更に講習会後のフォローアップを頻繁に実施して保健員の志気を高めることに努めている。
長期的な派遣目標も明確であり、また上位目標も連携先と共有されており、目標達成に向けた効率的な派遣が行われているといえる。
しかし、複数の隊員が同じような条件(同期、同職種、同任地)の元で派遣された場合、本邦出発以前よりライバル関係が強いため不仲な状態に陥りやすい、との意見を現地事務所より得た。
4)インパクト
隊員の活動はポリオ対策ではあるが、医療機関へのアクセスが困難な村落レベルへの保健啓蒙としての役割も大きい。特に活動の逐一を地元の医療機関と情報共有し、常に積極的な参加を方向付けている。これは地方医療機関に勤務する職員たちの参加意識を触発し、活動の参加意識を高めている。また、ポリオプログラムは2004年で終了の予定であるが、当該地域における保健衛生教育の重要性は日本側、ニジェール側の両国に再認識されている。さらに隊員主導による村落での公衆衛生活動は、医療機関へのアクセスが困難な地域における公衆衛生教育にもつながっており、非常に良いインパクトを与えている。またこの活動は政府関係者も視察を行い、広く国内に紹介されている。
5)自立発展性
ポリオ対策に対する派遣は2004年までの限定的なものである。予定通りであれば2005年の撲滅宣言が実現すればその活動も終了するが、ポリオは撲滅された後も継続した予防接種が必要であることから、派遣終了時にどのような形で活動を引き継いでいくかが課題である。
現在の活動のうち、ポリオワクチン接種の必要を説くために行なっている「村落での保健衛生活動」については地域保健局、診療所主任看護士、村落の保健員という脆弱な地方医療の組織を最大限に活用した内容であるため、組織の強化にもつながっている。これらは基本的に住民参加型の形態をとっており、関係者の志気も高いことから、今後の自立発展には非常に有効な手段と判断する。また、保健風土病対策省の視察後、この活動が広く紹介されていることも自立発展の大きな要因といえる。