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1.1.2. ニジェール国17

 ニジェール国は1960年(昭和35年)にフランスから独立した後、1974年(昭和49年)にクーデターにより軍事政権が誕生し、国会機能が停止された。国内で生産される野菜、穀物、肉だけでは、国民を養っていけず食料の大部分を輸入に頼っていたため、隣接国はもちろん、先進国とも友好関係を保つことを外交政策の柱にしていた。1967年(昭和42年)にウランの大鉱脈が発見されてからは、国際機関や先進国の援助機関がニジェールに注目することとなり、フランス、アメリカ、西ドイツ、オランダ等がボランティア派遣を開始した。しかしながら、その後、石油の過剰生産からウランの需要が大幅に減ったため、外国籍企業の引き揚げが目立つようになり、最貧国の一つへと逆戻りした。

 そのような状況の中、協力隊派遣は、食糧の安定供給を第1の目標に、1983年(昭和58年)5月17日の協力隊派遣取極の締結(第34番目)によって1984年(昭和59年)に開始され、農業と保守操作部門を主とする隊員9名が同年2次隊として11月に着任した。9名のうち4名が農業部門に配属され、稲作分野での病虫害の調査・対策の研究、ニジェールに最も適すると思われる品種の選択作業、耕作可能な土地での集約的生産方法、また土壌改良計画、さらに大事な蛋白源であり現金収入源である家畜の病気予防分野で活動を行った。保守操作部門では、主要輸送手段である車両(日本車を多数含む)のメンテナンスに携わる自動車整備、電気の効率的な消費システムを構築するためのシステムエンジニア隊員が派遣された。その他、土木、理数科教師がそれぞれの配属先で初代協力隊員として実績をあげた。

 派遣開始後5年間で、農林水産、保守操作、また教育文化を中心に、約90名の協力隊員を派遣した。その後1996年(平成8年)まで農林水産分野を主として年間15名から25名の隊員が派遣されたが、そのほとんどの任地が、首都ニアメもしくはニアメ近郊の農村であった。1993年(平成5年)には、ニアメ近郊のティラベリ県コロ郡を中心として、「緑の推進協力プロジェクト」が開始され、地域住民の生活レベルの向上を目的に、野菜、植林、果樹、村落開発等を複合し、アグロフォレストリー的な活動を展開し始めた。

 1997年(平成9年)以降、毎年20名から30名の隊員が派遣され、常時60名前後の隊員が活動する規模となった。それに合わせて、重点分野として初等教育、保健衛生、農村開発があげられ、隊員もこの分野に重点的に派遣されることとなった。初等教育分野では、代々の幼稚園教諭の活躍を契機とし、ニアメ以外の地域にもその活動を拡げ、小学校教諭も派遣し、ニジェールの初等教育を総合的に底上げする方針を打ち出している。保健衛生分野では、WHOの「2000年ポリオ撲滅」の目標に呼応し、1988年(平成10年)の日米コモンアジェンダのポリオ専門部会の際に米側からポリオ根絶のためのサーベイランス活動における協力隊と米平和部隊との協力が提案され、マラディー県でグループによるポリオ野生株のサーベイランス活動を行っている。またザンデール県では、1993年(平成5年)に保健衛生省を中心に結成された「ギニアウォーム撲滅対策委員会」のもと、無償資金協力で導入された機材の有効活用のため隊員が派遣されたのをきっかけに、国際NGOであるグローバル2000とアメリカ平和部隊と協力し、現在まで啓蒙活動及びモニタリング活動を村レベルで実施している。

 その他、体育、青少年活動、自動車整備、栄養士等の隊員も多数派遣されている。現在では野菜、村落開発普及員、植林などの農林水産部門が22%、幼稚園教育、体育等の教育文化部門が37%を占め、保健衛生部門が26%となっている。首都隊員はオフィス型18の活動形態及び、小学校や幼稚園教諭などの教育文化部門が主流であり職種もさまざまである。一方、地方隊員については農業分野を中心とする村落普及型となっている。また、開発計画の重点分野である農林水産分野、ポリオ、ギニア虫対策などの地域医療の分野でグループ活動を展開している。

 派遣実績は表1-3に示すとおり。

表1-3 ニジェール国協力隊員派遣実績
分野 派遣中 累計
農林水産 16(8) 91(28)
加 工 1(0) 7(2)
保守操作 5(0) 44(0)
土木建築 0(0) 4(0)
保健衛生 11(7) 21(17)
教育文化 19(18) 74(50)
スポーツ 6(2) 19(6)
合計 58(35) 260(103)
注:()内は女性隊員を示す。
出典:青年海外協力隊 20世紀の軌跡 2001年1月


17 青年海外協力隊 20世紀の軌跡 第2部「ニジェール」より要約

18 協力隊員の活動現場が配属先の事務所内である場合を主に示す。




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