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付属資料

1. 現地調査結果の分析

 平成14年2月13日より平成14年3月6日(22日間)、バングラデシュ国とニジェール国を対象として現地調査を実施した。調査は、付表1に示した通りバングラデシュ国から3案件、ニジェール国から5案件選定し、各ケース毎に現地視察と関係機関へのインタビューおよびアンケート調査を行った。5項目評価による調査結果の概要は以下の通り。

表1-1 現地調査(ケーススタディ)における5項目評価結果の概要


案件名 計画の
妥当性
目標
達成度
実施の
効率性
インパ
クト
自立
発展性
促進要因 阻害要因






カルポリ
計画(手工芸)
** ** *** ・女性隊員の派遣
・ニーズの高さ
・計画デザイン(長期的な見通しの甘さ)
・活動に消極的な配属先(上層部)の姿勢
ダッカ子ども病院 ** ** ** ** ・ニーズの高さ ・医療従事者の社会的地位の低さ
・配属先の人員不足
・前任者と後任者の引継ぎ
・病院組織の問題
・看護に対する個人的・社会的解釈の相違
技術訓練センター ** ** ・日本の先進技術に対するニーズの高さ ・派遣計画
・政策変更(センターの位置付け)
・前任者と後任者の引継ぎ
・組織やシステムの問題




ポリオ対策 *** *** *** *** ** ・計画デザイン
・シニア隊員の派遣
・国際機関のニーズに合致
・人口の移動
就学前教育 ** ** ** ** ** ・教育政策との合致
・ニーズの高さ
・就学前教育概念の相違
農村生活向上 ** ** ・ニーズの高さ ・計画デザイン(ローリングプランでの位置付け)
・必要とする農業技術の水準
青年育成 青少年活動 ** ** ** ** ・潜在的ニーズの高さ ・離任後の継続が難しい活動内容
体育 ** ** *** ** ・ニーズの高さ ・派遣計画

1.1.バングラデシュ国とニジェール国の協力隊派遣概要・変遷

1.1.1. バングラデシュ国16

 現在のバングラデシュは、1947年(昭和22年)まで英領インド、その後、1971年(昭和46年)のバングラデシュ独立まではパキスタンの一部であった。1947年のパキスタン独立後も東パキスタン(現バングラデシュ)の人々は西パキスタンが実権を握る中央政府の搾取に苦しんだが、政府のウルドゥー語強制に反対するダッカ大学の学生運動が内戦に発展し、1971年に「ベンガル語を話す人々の国」を意味する「バングラ・デシュ」の誕生に至る。

 日本政府は、バングラデシュ独立後まもなく早川崇衆議院議員を政府特使として派遣、引続き派遣された「バングラデシュ農業開発」の調査団が覚書を交換するに際し、協力隊派遣を盛り込んだ。協力隊派遣に関する二国間取極は1973年(昭和48年)3月24日に締結された(第18番目)。

 ムジブル・ラーマン初代大統領は、バングラデシュ発展の鍵は農業にあり、率先して働く農業改良普及員の育成が急務と考え、第1次5カ年計画にこれを盛り込んだ。日本の農業専門家の協力は、東パキスタン時代のコミラで既に始まっていた。報告書作成に偏る先進国専門家と違い、自ら田畑に入って体で技術を村人に示す日本人専門家に感銘したバングラデシュ人技術者が、農業改良普及員の育成に、日本青年の協力を要請したことから、1973年(昭和48年)8月、ベンガル語訓練を受けた稲作、園芸作物、農業機械の3隊員が、初代隊員として農業改良普及員養成所(Agricultural Extension Training Institute :AETI)に派遣された。

 独立戦争からの復興と農業振興の必要性、イスラム社会での協力活動という社会背景から、初期には地方の農業分野に男性隊員のみが派遣されていた。その後、寡黙だが着実に成果を残す農業隊員たちの実績が認められ、都市部の職業訓練分野や婦人プログラム等でも隊員が要請された。初めて女性隊員が地方に派遣されたのは、ジェソール県シャシャ郡であり、その活動は、総合農業開発計画(後の農村開発局)が育成する郡中央協同組合の女性組合員に、家庭菜園での野菜栽培と栄養改善を指導することであった。

 これまでの協力分野は、農林水産、保健医療、教育・文化・スポーツ、土木建築、職業訓練、保守操作と極めて多岐にわたる。独立直後は、農業と保守操作分野の隊員が大部分を占めたのに対し、近年はスポーツ、システムエンジニア、理数科教師、村落開発普及員が増えるなど、派遣職種にも時代による変化が見られる。今後は地域保健医療向上、体育を含む教育分野(中・初等教育)の協力にも力を入れていく予定である。また、WHOによる2005年でのポリオ撲滅目標に則り、ポリオ対策の分野で活動する隊員(シニア隊員1名を含む)によるグループ派遣を行っている。

隊員の配属先は、初期では政府機関や公社がほとんどであったが、近年は非政府機関(NGO)が増え、現在では非政府機関への協力隊員派遣数が1~2割を占めている。この背景には、長年の協力にもかかわらず、硬直化した組織ゆえ協力効果が現れにくい政府系一辺倒の協力から、活力ある非政府組織へと協力先を多様化するねらいがある。しかしながら、今回の現地インタビュー調査では、非政府機関への派遣は、バングラデシュ側政府より承諾を得るのに時間がかかるなど問題点も聞かれ、今後非政府組織への派遣が大きく増加することは期待できない。

 バングラデシュ国への派遣実績は表1-2に示すとおりである。

表1-2 バングラデシュ国協力隊員派遣実績
分野 派遣中 累計
農林水産 14(5) 298(38)
加 工 0(0) 19(1)
保守操作 7(0) 101(0)
土木建築 0(0) 22(5)
保健衛生 12(10) 84(78)
教育文化 10(9) 143(108)
スポーツ 6(2) 48(18)
合計 49(26) 715(248)
出典:青年海外協力隊 20世紀の軌跡 2001年1月
注:()内は女性隊員を示す。


16 青年海外協力隊 20世紀の軌跡 第2部「バングラデシュ」より要約




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