第4章 参考 NGO事業の特徴 |
(参考-1)NGO事業の利点:「きめ細かな援助」の実施
NGO事業の利点について、様々な指摘が行われている。
第一に、ODA白書(2001年度)は、NGOの利点について、「NGO等市民社会による援助活動は、多様化する途上国の開発ニーズにきめ細かく応えることができ」、「緊急人道支援が必要な際に、いち早く現地入りすることができる」と述べている。
第二に、外務省のホームページの外務省とNGOとのパートナーシップの記述の中では、国際協力活動でのNGOの役割を重視し、政府開発援助(ODA)13におけるNGOとの連携・支援を強化しており、NGOの重要性を、「草の根レベルのきめ細かな援助の実施」「迅速・柔軟な緊急人道支援活動の実施」「ODAに対する国民の理解と支持の拡大(国民参加型援助の推進)」として捉えている。
第三に、一般的には、NGOの優位性について、次のような指摘も行われている14。
(1) | NGOは草の根レベルの開発を直接支援することができる。 |
(2) | 災害、食料危機などの緊急事態が発生した時、柔軟かつ迅速に対応することができる。 |
(3) | 新しい開発アプローチ導入のために試験的援助も可能である。 |
(4) | きめ細かい活動を行い費用対効果も大きい。 |
(5) | 比較的少ないコストで実施することができる。 |
(6) | 国民レベルの援助活動を通じて援助に対する国民の理解を深めることができる。 |
(7) | 特定の分野、地域については長い経験と蓄積を有する人材を備えている。 |
第四に、本調査でのインタビューでも、CIDAでは、NGOの利点として、「NGOを支援することで、地域的広がりを得ることができる。」、「NGOは歴史が長く、経験も豊富であり、その経験を活用できる。」ことを挙げていた。またAusAIDでは、2国間援助プログラムを主に3つの視点から行っており、NGO支援は、その一つの視点、つまり地域レベルでの開発や地方自治体に働きかけるという視点から行われている。その他の2つの視点は、政府の構造改革等に働きかけることと、セクター別支援を行うこと、である。
(参考-2)他ドナーにおけるNGO支援の位置づけ
欧米の主要ドナーは、自らの開発政策や開発計画において、NGOを重要なパートナーと位置付け、彼らとの積極的な連携・協力を通じて、援助目標の効果的な達成を目指し、NGOの組織能力を独自の基準で評価し、組織能力強化のためのNGO支援を行っている。戦略的にODAの実施においてNGOと連携し、貧困層など草の根レベルへの援助効果の浸透にも力を入れている。さらに、NGOとの情報交換や人的交流の面においても積極的である。ODA総額に対するNGO支援予算の割合(1998年実績)をみると、日本の2.4%に比べ、アメリカ15.7%、カナダ8.9%、イギリス11.1%、ドイツ6.9%、オランダ10.2%15と欧米諸国は極めて高いことが分かる。
例えば、USAIDは、アメリカのNGOの組織・財政基盤がしっかりしており、NGOを対等なパートナーとして位置づけ連携を進めている。(参考情報2事例2-1参照)
そして、NGOの連携体制が確立しており、アメリカのNGOの派遣制度と現地NGO支援と両方行っているが、アメリカNGO支援の役割の一つとして、現地事務所がローカルNGOを主に支援し草の根の開発事業に専念し、本部は現地事務所の要望に応じて、緊急(補充)派遣要員として考え適宜NGO人員を派遣することも行っている、とのこと。
(参考-3)NGO事業とODAスキーム事業の効果・インパクト比較
参考までに、NGO事業補助金は他のODAスキームに比べどのような効果をもたらしているかについて、日本のJICA事業2案件との比較を行った。
JICAのプロ技「家族計画・母子保健プロジェクト(フェーズI 及び II)(1992年4月~2002年3月)」(参考情報2 事例2-3参照)、「ミンダナオ平和特別地域保健行政」研修(1998年-2001年)(参考情報2 事例2-4参照)のカウンターパートを訪問し、NGO事業補助金プロジェクトの効果・インパクトの違いの比較を行った。NGO事業補助金制度の効果・インパクトの特徴は次のとおりであった。
13 ODAとは、発展途上国の経済発展を支援する「経済協力」の中で、開発途上国への資金の流れという観点から3つの要件を満たす資金の流れのことであり、その他の政府資金(Other Official Flows:OOF)、民間資金(Private Flows:PF)、民間非営利団体(NGO)による贈与と区別されている。
14 杉下恒夫(2000年)
15 (財)国際開発センター(2000年)