5.3 開発援助のマクロ経済的インパクト
一般的に、ODAが当該国の経済社会の発展に貢献しているとしても、ODA以外の要因もまた重要な役割を果たしており、その因果関係を立証することは困難であると言われている。ODA以外の要因は援助が相手国の経済社会の全体に対してどのような影響を与えたか把握することを複雑にしている。ODA以外の要因は2つに大分される。1つは、国際経済環境の大幅な悪化や、政治・外交・軍事面での国際情勢の激変などの「外生要因」であり、2つ目は「国内要因」として、政治・社会的不安定情勢(例えば、クーデターや民族・宗教紛争など)、行政機構の能力と規律、経済政策の妥当性などが挙げられる。一般的に、これらODA以外の要因の方が、当該国の経済社会に大きな影響を与え、援助のパフォーマンスの影響は、これら2つの要因の影響に呑み込まれがちなのが実態とされる。
90年代のニカラグァにおいて、同国のマクロ経済に影響を与えうる「外生要因」として考えられるのは、91年の湾岸戦争に伴う原油価格の高騰のみである。また、「内生要因」としては、第2章で述べられているように1993年頃までは内戦直後の体制移行という緊迫した時期であり、国民に厳しい痛みを強いる劇的な経済安定化政策の導入を余儀なくされた時期であった。しかしながら、1994年以降は、経済回復と貧困減少局面を迎え国内の政治・社会も比較的安定していた。また、先に述べたように対ニカラグァ開発援助はその規模と分野別配分割合などから、同国の経済開発にとって重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、開発援助をマクロ経済へのインパクトで評価するという考え方は、同国の開発に対する援助効果を考察する上で参考になると考えられる。