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第5章 開発援助のマクロ経済的インパクト

本章では、我が国を含む対ニカラグァ援助のマクロ経済的インパクトを(1)マクロ経済に占める援助額の大きさ、(2)援助と政府開発投資との補完効果、(3)開発援助のセクター別インパクト分析の観点から考察する。

なお、分析においては、各ODAセクターにおけるドナー、国際機関の重複、援助協調、及び援助資金のファンジビリティー(流用可能性)等の問題から、我が国ODAのみのマクロ経済的インパクトを分析することは困難であるので、援助全体のインパクトについて分析した。

5.1 マクロ経済に占める援助額の大きさ

表5.1-1は、マクロ経済ギャップ(財政赤字と貿易赤字)と援助額の大きさを示している。この表から、マクロ経済ギャップの一部を援助資金が補填していることが明らかとなる。つまり、もし援助がなければ国内投資が縮減せざるを得ず、その結果として経済成長にも負のインパクトを与えたものと推測される。したがって、援助が少なからずニカラグァのマクロ経済成長、つまり国民所得の全体的なパイを大きくするために、一定の役割を果たしていることが明らかにされる。

表5.1-1 マクロ経済ギャップと援助動向
(単位:パーセント)
  1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999
対GDP比                  
 財政赤字 6.6 7.6 7.1 9.4 7.8 8.4 5.5 4.8 11.1
 貿易赤字 29.8 35.0 26.7 27.4 27.2 35.3 43.1 42.5 56.0
 援 助 12.1 13.8 7.3 11.3 8.1 12.0 5.7 10.5 16.9
(実質GDP成長率) (-0.2) (0.4) (-0.4) (3.3) (4.3) (4.7) (5.1) (6.1) (5.0)
(出典)ニカラグァ中央銀行

言うまでもなく、援助のインパクトを考察するには経済面だけでなく社会面からも考察しなければならない。しかしながら、世銀等による様々な経済・社会指標が示している通り、経済開発と社会開発には有意な相関が認められる1。 つまり、ニカラグァにおいても安定的な経済成長を生み出すことが開発効果発現の十分条件ではないが必要条件であることに間違いはない。また、援助効果を高めるためには、より効果的な分野に援助を重点的に配分することが重要であるとの指摘がある2。次節以降、開発資本の配分とマクロ経済へのインパクトという観点から、同国の経済開発に対する援助効果を分析する。


1 世界銀行、「世界開発報告」、各年版

2 ODA改革懇談会、「第2次ODA改革懇談会」中間報告書、2001




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