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4.5 ドナー間援助協調と我が国の役割分担

我が国を含め、「ニ」国を支援している援助国・国際機関は50以上あり、情報交換を主目的としたドナー間の会合が重要セクター別(社会・環境、ガバナンス、PRSP、等)に開催されている。長年の情報交換の積み重ねから、地域別あるいは分野別に重ならないようにおおまかな棲み分けが出来ていると見受けられる。また、ドナーを招待して行うセクター会合(特に農牧、保健・医療、地方自治・分権化、環境・持続的開発、地雷除去支援、ガヴァナンス等)も必要に応じて開催されている。我が国が参加するドナー会合で主なものは、ストックホルムでの対ニカラグァ支援国会合(CG)合意事項の進展状況をフォローする主要6ヶ国グループ(通称G’6)、主要ドナー国や国際機関がガバナンスを議論するGGG会合、その他アドホックに世界銀行あるいは大統領府の主催で絶対的貧困削減問題についての会合が挙げられる。我が国は、以上のようなドナー会合等の参画を通じて、「ニ」国の開発援助の方向性に関わるドナー間援助協調に対して主要ドナーとしての役割を十分に担っている。

主要ドナー国・国際機関別の重点戦略及びセクター別重点項目を整理すると、表4.5-1及び表4.5-2のとおりとなる。セクター別重点項目別にみると、各ドナー間で援助対象の棲み分けがなされていることが伺える。特に、教育分野と保健分野においては、我が国等の主要ドナー間の援助協調によって同分野での棲み分けが明確になされている。教育分野では、初等教育(日本、米国、世界銀行が支援)、二言語教育・多文化教育(米国)、就学前教育(世界銀行)、中等・高等教育(米州開発銀行)とドナー毎に援助対象が棲み分けされている。同様に保健分野においても、母子保健(日本、米国、米州開発銀行)、リプロダクション・ヘルス(日本、米州開発銀行)、伝染病対策(日本、米国、米州開発銀行)、家族計画(米国)、女性の総合的保健対策(ドイツ)、地域保健(日本、スウェーデン)、1次医療・栄養(世界銀行)、基礎医療・保健(国連開発計画)と棲み分けされている。

今後の課題としては、援助計画が速やかに遂行されるような援助受け入れ体制の整備が我が国を含めたドナー国・国際機関から期待されている。特に公共投資国家システム(SNIP)に属する4団体、対外経済協力庁、大統領府技術庁(SETEC)、財務省、中央銀行の調整が急務とされている。

また、「二」国への開発援助は、NGOが重要な役割を担っている。サンディニスタ政権時代からUSAIDに顕著にみられるようにNGOを通じた協力が非常に多いのが特色である。サンディニスタ政権敗北以降は、民主主義支援プログラムを実施する現地NGOも多く生まれた。現在、内務省で登録されているもので13,000以上の団体があり、極めて活発に活動している。我が国も現地NGOを通じて、草の根レベルの協力あるいはノン・プロジェクト無償資金協力等の見返り資金プログラムを展開してきた経緯がある。同国で活動している我が国のNGOもサンディニスタ時代から医療分野を中心に活動を展開してきた。特に、ハリケーン・ミッチ被災時の緊急援助は、高い評価を受けた。

表4.5-1 主要ドナー国・国際機関別の重点戦略及びセクター別重点項目
重点分野・項目 世界銀行 米州開発銀行 国連開発計画 (参考:日本)
重点戦略分野 ・貧困削減
・災害防止
・環境保護
・人的資源開発
・社会均衡/社会的弱者の保護
・地方分権化
・貧困削減
・財政
・社会インフラ
・農業
・社会分野(保健・教育)
・貧困削減
・自然災害
・環境保護
・人的資源開発
・ガバナビリティ
・貧困削減
・自然災害
・経済インフラ
・農牧業
・基本的人間ニーズ
・ガバナンス
セクター別重点項目        
公的機能強化 ・政策形成・管理 ・制度強化
・国家政策研修
  ・行政法強化による国家機能近代化
公安・災害対策 ・自然災害   ・最高裁、警察
・地雷撤去
・洪水流域管理
・自然災害管理
・土砂災害防止
教育 ・就学前教育
・初等教育
・中等教育
・高等教育
  ・初等教育
保健 ・1次医療
・栄養
・母子保健
・リプロダクション・ヘルス
・伝染病対策
・基礎医療・保健 ・母子/地域保健
・リプロダクション・ヘルス
・伝染病対策
社会福祉 ・年金システム
・社会的弱者支援
    ・女性及び社会的弱者向け職業訓練
社会インフラ ・社会投資基金 ・住環境整備 ・上水道整備
・農村電化
 
農林漁業 ・農業技術開発
・森林保護
・農業インフラ
・中小農強化
・アグロフォレストリー
・植林
・農業インフラ整備
・農業インフラ整備
・中小農強化
・アグロフォレストリー
運輸・通信 ・道路維持管理/リハビリテーション
・電話局民営化
・道路
・電話局民営化
・道路
・橋梁
・道路
・橋梁
鉱工業・貿易・商業 ・中小企業強化 ・中小企業支援 ・輸出/投資促進
・中小企業支援
 
(出典)現地聴き取り調査等による。

重点分野・項目 日本 米国 (USAID) ドイツ (GTZ) スウェーデン (SIDA)
重点戦略分野 ・貧困削減
・自然災害
・経済インフラ
・農牧業
・基本的人間ニーズ
・ガバナンス
・貧困削減
・災害防止と移住
・環境
・人口とエイズ
・食料保障
・人的資源開発
・人権
・ガバナンス
・国家制度の近代化
・自然保護、天然資源利用
・ジェンダー/職業訓練
・農村開発/参加型開発
・マクロ経済支援
・民主化/地方分権
・貧困削減
・民主化
・ガバナビリティ
・ガバナンス
セクター別重点項目        
公的機能強化 ・行政法強化による国家機能近代化 ・住民参加強化
・法整備
   
公安・災害対策 ・洪水流域管理
・自然災害管理
・土砂災害防止
・洪水流域管理
・自然災害防止
  ・警察
教育 ・初等教育 ・初等教育
・二言語教育
・多文化教育
   
保健 ・母子/地域保健
・リプロダクション・ヘルス
・伝染病対策
・家族計画
・母子保健
・伝染病対策
・女性の総合的保健対策 ・地域保健
社会福祉 ・女性及び社会的弱者向け職業訓練      
社会インフラ     ・公衆衛生
・水衛生
 
農林漁業 ・農業インフラ
・中小農強化
・アグロフォレストリー
・新農業技術導入
・流域/保護地域管理
・農業小規模金融
・小規模灌漑含むインフラ整備
・土地所有権整備
・持続的農林業開発
・自然資源管理
・農牧業
・農村金融
運輸・通信 ・道路
・橋梁
・二次道路リハビリ整備
・小規模橋梁の修理、取替
   
鉱工業・貿易・商業   ・小企業育成
・小規模金融組合強化
・中小企業育成
・就業促進
・中小企業育成
(出典)現地聴き取り調査等による。



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