3.6 課題と展望
内戦終結後、社会・経済基盤の復興を目指し、対「ニ」国援助は無償資金協力を中心に行われてきた。「ニ」国政府は財政困難から公共事業投資に必要な資金が十分ではなく、外国からの援助に頼らざるを得ない状況にある。かかる状況から、現在までの我が国の援助は社会・経済インフラ分野を援助重点分野のひとつとして援助を実施してきたが、地方でのインフラは未整備ではあるものの、主要国道整備はほぼ終了しているので、今後は地方道路の整備が課題となる。
また、すでに内戦終結から10年以上経過し、司法制度改革、会計監査官組織の改革、公共セクターにおける雇用慣行の改善をおこなうなど政府は自助努力を続けており、民主化が進められつつある。マクロ経済的には1992年以降(1991年はコルドバ・オロ通貨切り下げを実施)10~20%前後のインフレ率に抑えられ、GDP成長率は1991年以降平均3.1%が保たれ、ある程度の経済安定化が確保された。しかし、経済の自由化により貧困層は増加し、「ニ」国中央銀行のデータによれば失業率は減少傾向にあるものの10%(1999年)を超えている。国内の所得格差は他のラテン・アメリカ諸国同様、10%の富裕層が国民総所得の45%を獲得し、40%の貧困層はわずか10%を獲得するにすぎない。貧困削減戦略(GPRS)によれば、極貧層は総人口の17.3%にものぼる。また、重債務低所得国としてHIPCイニシアティブが承認されたことを考慮すると、社会開発・貧困削減分野は引き続き援助の重点分野に据えられるべきであろう。
かかる社会問題への対応として、我が国の援助政策はさらに焦点を絞った戦略が求められよう。政治的な安定のためには経済的発展は不可欠な要素であり、今後「ニ」国が持続的に「国家開発」を推進していくことを支援するような援助が求められる。特に、開発の担い手を育てることを目的に、技術協力の比重を高めることが望まれる。また、「ニ」国のガバナンスを強化し援助の効率性を高めるためにも、モニタリング・評価、政策助言などソフト面での技術移転が重要とされよう。