3.2 我が国援助供与額の動向とシェア分析
1991年から1999年の我が国ODA総額は79,826.74百万ドル(支出純額ベース)で、そのうち56.9%はアジア諸国へ供与された。アジア以外の地域のODA総額に占める割合は増加傾向にあるものの(1998年を除く)、特に大きくシェアを伸ばしている地域はない(図3.2-1)。
1998年におけるODAの全体的な変動は、1997年のアジア通貨・金融危機に伴い、対アジア援助の割合が62.4%に増大したことが要因としてあげられる。アジア通貨・経済危機に対する、我が国援助の大半はODA資金以外のもので、ODA予算から計上されたものは経済構造調整支援の一環としての円借款及び無償資金協力(ノンプロジェクト無償)であったとされる2。
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(出典)ODA白書(1991年~2000年) |
図3.2-1 二国間政府開発援助の地域別構成比の推移(1990~1999年) |
対中南米諸国への援助額のシェアは、1998年までの8年間、10%前後(96年の11.8%が最高)で推移している。上述のアジア通貨・経済危機直後である1998年の中南米のシェアは6.4%に落ち込んだ。1999年には7.8%に回復したが、それまでの水準には達していない(表3.2-1)。
表3.2-1 二国間政府開発援助の地域別構成比の推移(1990~1999年) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(出典)ODA白書(1991年~2000年) |
1991年から1999年の対中米7カ国(ここでは、パナマ、コスタ・リカ、ニカラグァ、エル・サルバドル、ホンデュラス、グアテマラ、ベリーズを指す)への援助総額は2391.79億円で、ODA総額91,765.72億円の2.6%を占める。1990年までの中米7カ国に対する援助額累計は1,612.31億円であり、1991年から1999年供与額の約70%にしか満たない。これは1980年代に「ニ」国、グアテマラ、エル・サルバドルが内戦時代にあり、我が国ODAがほとんど実施されなかったこと、1990年代に入り各国で和平が実現し、我が国は国際的公約である復興支援を果たすためにこれらの国々に対する援助供与額を増加したことによる3。1996~1997年にはODA総額に対する7カ国のシェアは3%台に達したが、アジア通貨・金融危機に伴い一時的に1%台に落ちた。同7カ国の中南米域内でのシェアは20~30%前後を保っている。
対「ニ」国援助は1990年の民主化以降本格化し、無償資金協力、技術協力を大幅に拡大した。1991年より専門家派遣を開始するとともに青年海外協力隊派遣取極めを締結し、隊員の派遣を行っている。これにより、我が国の対中米7カ国援助に占める対「ニ」国援助シェアは、1990年までの累計における7.2%から、1994年には最高で38.5%に達し、1991年から1999年の累計でも中米7カ国内1位の24.5%を占めるに至った(表3.2-2)。
表3.2-2 二国間ODAの中米7カ国内配分の推移 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(出典)ODA白書(1991年~2000年)より作成 |
他方、表3.2-3に見るとおり、我が国の対「ニ」国援助額は「ニ」国のGDPに対し0.9%~3.6%の比率を示し、政府歳出トータルに対しては2.5%~13.1%の割合を占る(表3.2-3)。中米の隣国においては、対GDP比が最高で2.75%、対政府歳出トータル比では9.39%であり(表3.2-4)、「ニ」国に比べて低い値を示していることから、「ニ」国にとって我が国援助の重要性が高いことが確認できる。
表3.2-3 対ニカラグァ我が国援助の経済指標に占める割合 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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(出典)GDP及び政府歳出トータルはニカラグァ中央銀行、我が国援助額はInforme de la Cooperacion Externaのデータより計算。 |
表3.2-4 我が国の対中米7カ国援助の各国経済指標に占める割合(1998年) | |||||||||||||||||||||
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*1 ベリーズのデータのみ1997年のもの。
(出典)GDP及び政府歳出トータルはStatistical Yearbook 2001(IMF)のデータ、我が国援助額はODA白書のデータより計算。 |
2 ODA白書(1998年)上巻、第2部第1章参照
3 87年に「倉成ドクトリン」を発表し、中米の和平案(エキスプラスII合意)を支持した上で、和平実現の暁には復興支援を行うことを約束した。