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2-4.マルチ・バイ協力の実績

 我が国とUNICEFとのマルチ・バイ協力は1989年から実施が始まり(2002年度で14年目)、延べ35ヵ国を対象に協力が行われてきた。また、UNFPAとの連携は1995年からで、19ヵ国を対象に協力が実施されてきた。図 2-3は、UNICEFおよびUNFPAとのマルチ・バイ協力の実績を年次別に示したものであるが、これによると、マルチ・バイ協力はスキーム開始当初から順調にその実績を伸ばしてきたことが分かる。特にUNICEFとの連携では実施額の伸びは大きく、図 2-4の各対策別の実施年次と比較した場合、ポリオ対策への協力が開始された1993年度以降急速にその実施額が大きくなり、1999年をピークに一時減少傾向にあったが、特定感染症への協力が始まり再び上昇傾向にある。一方UNFPA連携の予算の延びは緩やかなものである。これまでの実施総額(累計)を比較すると、UNICEF連携が総額101.6億円、UNFPA連携が総額14.6億円と日本側の投入金額にはかなりの相違がある。

図2-3 UNICEFおよびUNFPAとのマルチ・バイ協力における年次別実績の推移
図2-3 UNICEFおよびUNFPAとのマルチ・バイ協力における年次別実績の推移

図2-4 マルチ・バイ協力における各対策別の実施年度
図2-4 マルチ・バイ協力における各対策別の実施年度

 また、年次毎に見た場合、JICAの資料によると、例えば2001年度のUNICEFとのマルチ・バイ協力実績は総額約13.1億円(前年度比約1.5億円増)、UNFPAとの実績は約2.2億円(前年度比1.1億円減)であった。過去5ヵ年間をみると、UNICEF、UNFPAともに年次によってその実施額に幅がある。

UNICEFとのマルチ・バイ協力(2001年度)
  • 「予防接種拡大計画(EPI)」:3.70億円
  • 「ポリオ根絶」:5.04億円
  • 「特定感染症」:2.96億円
  • 「母と子どもの健康対策」:1.40億円
UNFPAとのマルチ・バイ協力(2001年度)
  • 「人口・家族計画特別機材供与」:2.24億円


 地域別のマルチ・バイ協力における実施額(累計)は、UNICEFおよびUNFPAともにアジア地域への協力が過半数以上、アフリカ地域については約4割程度である(図 2-5)。しかしながら、UNICEFの場合は協力の対象別にみていくと、その地域性に特色が見られる。

図2-5 UNICEFおよびUNFPAとのマルチ・バイ協力実績における地域別累計
図2-5 UNICEFおよびUNFPAとのマルチ・バイ協力実績における地域別累計

 例えば、図 2-6はUNICEFとの連携で実施した「感染症特別対策機材供与」に対する実施額の累計を部門別・地域別に示したものであるが、これによると、ポリオ根絶に関しては約7割がアジア向けで、「アジア地域のポリオ根絶」という日本側の明確な方針の下でマルチ・バイ協力が実施されてきたことがわかる。2001年度のJICA年報によれば、ポリオ根絶対策協力を行っていく上で重要な活動である「全国予防接種一斉投与」に必要なワクチン、コールド・チェーンなどの機材をアジアおよびアフリカ諸国に供与してきた額は無償資金協力を含めると約160億円(1993年~2000年累計)とされている。技術協力事業におけるマルチ・バイ協力によるポリオ根絶対策額は1993年~2000年累計で約31億円である。このため、約2割程度がマルチ・バイによる貢献であったといえる。

図2-6 「感染症特別対策機材供与」の部門別・地域別累計
図2-6 「感染症特別対策機材供与」の部門別・地域別累計

 「WHO西太平洋地域ポリオ根絶宣言」(2000年10月京都)への貢献は、マルチ・バイ協力が目に見える形で成功した例の一つと国内外から評価されている。日本はこれまでに、マルチ・バイ協力以外にも、WHO、UNICEFなどの国連機関と連携を図りつつ、世界のポリオ野生株根絶のために多くの支援を行ってきた。特に重点的に支援してきたのが、西太平洋地域(WPR)で、この地域においては日本の協力開始後にポリオ患者発生数が激減し、野生株ポリオウイルス由来の症例報告は、1997年3月が最後となった。これにより西太平洋地域のポリオ根絶宣言が出された。
 残りの流行地域でも、1999年中の報告はわずか6,700例、2000年初頭でポリオが流行しているのは30ヵ国にとどまっている。このため、WHOでは「2005年の全世界ポリオ根絶宣言」を目標に、ポリオ患者の発生のある国または最近まで流行していた国において、根絶とサーベイランスの質とを一層向上させる必要があるとしている。

図2-7 西太平洋地域のポリオ感染者数の推移
図2-7 西太平洋地域のポリオ感染者数の推移

 以下に、マルチ・バイ協力の供与額の推移をまとめた表を示す。

表2-4 「(予防接種拡大計画:EPI)感染症対策等特別機材供与」額への供与額の推移(PDF)

表2-5 「(ポリオ根絶)感染症対策等特別機材供与」額の推移/表 2-6 「(特定感染症)感染症対策等特別機材供与」額の推移(PDF)

表2-7 「母と子どものための健康対策特別機材供与」額の推移
(単位:百万円)
国    名 1998 1999 2000 2001 合計
カンボジア 16.0 47.9 29.9 20.0 113.8
ラオス 14.6 14.6
インドネシア 49.9 49.9
ミャンマー 23.3 18.5 25.5 42.0 109.3
カザフスタン 22.6 19.0 41.6
ウズベキスタン 24.2 24.2
アジア小計 39.3 130.9 78.0 105.2 353.4
タンザニア 11.4 22.0 9.1 42.5
カーボ・ヴェルデ 26.2 26.2
アフリカ小計 0.0 11.4 22.0 35.3 68.7
合計 39.3 142.3 100.0 140.5 422.1
出所:JICA資料より作成

表2-8 UNFPAに対する「家族計画特別機材供与」額の推移
(単位:百万円)
国    名 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 合計
インドネシア 19.0 11.7 21.6 16.7 19.2 26.0 114.2
ラオス 20.4 29.2 49.6
カンボジア 18.2 18.2
フィリピン 9.9 18.6 41.9 28.0 26.2 20.0 144.6
ミャンマー 22.0 20.0 42.0
ヴィエトナム 15.2 22.9 20.0 22.0 80.1
インド 21.1 25.9 19.0 22.1 88.1
パキスタン 22.1 21.6 21.1 64.8
スリランカ 11.0 9.7 18.4 20.0 23.3 82.4
アジア(小計) 30.3 80.8 112.1 65.5 129.2 154.8 111.3 684.0
トルコ 7.6 9.9 19.7 20.2 57.4
中近東(小計) 0.0 0.0 0.0 7.6 9.9 19.7 20.2 57.4
エジプト 40.4 19.3 20.6 19.7 29.6 20.4 150.0
エティオピア 16.1 24.4 40.5
ガーナ 16.4 22.5 4.3 15.8 59.0
モロッコ 41.3 23.7 65.0
セネガル 13.8 38.5 11.6 20.0 21.6 105.5
ザンビア 20.0 2.5 22.5
タンザニア 15.0 19.3 18.4 27.9 20.0 100.6
アフリカ(小計) 56.8 41.8 53.7 114.9 89.5 121.9 64.5 543.1
メキシコ 22.4 22.2 19.9 22.8 20.7 8.3 116.3
ペルー 21.4 21.6 20.0 63.0
中南米(小計) 0.0 22.4 22.2 19.9 44.2 42.3 28.3 179.3
合計 87.1 145.0 188.0 207.9 272.8 338.7 224.3 1463.8
出所:JICA資料より作成


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