5-4. ODAとNGOの連携に関する提言
■ | ODAであれNGOであれ、先進工業国たる自国の経験に基づいた投入が行なわれがちである。外国人のイニシアティブによるものである限り、それはある程度いたし方がないとも考えられようが、その前提に立って私たちの社会を虚心にみれば、戦後の日本社会が社会開発分野で十分な成を挙げてきたとは必ずしも言えない現実があり、同時に、開発援助に関わる者たちが自国において社会開発分野での経験を積んでいるわけでもないことがわかる。日本のODAは、これから社会開発分野での協力に重点を置くことを方針として立てているが、その際、私たちの社会が、その分野において十分な人材や知識や経験を有しているという幻想を捨てたうえで事業に臨む必要があろう。ゆえに、それぞれの地域社会の共同体で豊富な経験を持つ人材を、国の枠組みに関係なくコーディネートし、プロジェクトに参加してもらえるような柔軟な人事制度を構築していくことが必要である。これには、ODAとNGOの人事交流も含まれることになろう。
NGOは、社会開発分野において、ODAにない強みを持っていると一般に考えられている。しかしながら、各NGOが必ずしも、その分野での技能や経験が組織として十分に蓄積され、かつそのような人材を十分に有しているわけではない。したがって、ODAとNGOのプロジェクトレベルでの連携においては、まず、経験豊かな人材を配置できるよう双方全力を尽くすことが肝要であろう。 |
■ | 社会開発分野を中心とする人材を互いに育成しあうためには、互いの現場で学び合うような、現場を使ってのインターン制度を取り入れることが必要であり、ODA側がそのための支援を制度化することも有効であろう。併せて、途上国のNGOのネットワークの利用も有効である。 |
■ | ODAの個々のプロジェクトを有効にするためには、援助対象国の政府の政策の明確化と適正化が不可欠であり、プロジェクトはそれに沿った形で計画される必要がある。しかし、現実にはそれが不明確な場合が多いため、まずはそのための政策提言を行う必要がある。さらには、その政策が現実的なものになるためには、相手国の人々の生活の現実に根ざした政策決定が必要だが、経験に基づく知見がODA側に常に十分あるとは思われない。特定の地域や国に特化して草の根で活動を続けているNGOの知見やネットワークを生かすために、国別援助計画の策定にNGOを参加させるべきであるし、NGO側は、そのための労を惜しむべきではない。 |