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第8章 被援助国関係者による評価
カンボジア チュルイ・チョンバー橋修復計画


(1999年4月、ヘン・ソクン 開発評議会復興開発委員会 課長補佐)


〈プロジェクト概要〉

援助形態 無償資金協力
協力年度 1993年度、94年度
協力金額 2,990百万円
相手国実施機関 公共事業運輸省
協力の内容 首都プノンペンとカンボジアの北東部を結ぶ交通の要衝であるチュルイ・チョンバー橋(通称:日本橋、日本の戦後準賠償で1960年代に建設された橋)が内線で破壊され、和平達成後の同国経済のボトルネックとなっていたので、これを無償資金協力で修復した。


〈評価要旨〉

1.効率性

 基本設計着手から引き渡しまでわずか23ヶ月と大変迅速に本件は実施された。カンボジアの経済復興の観点から高い緊急性の認められた本件に対し、日本政府は迅速に対応したと高く評価できる。施工業者、コンサルタントも誠実に義務を履行したと評価できる。

2.目的達成度

 交通量調査の結果(1999年3月)、当初設計の予測である自動車1万台/日を越える交通量である10,949台/日が計測されているように、経済の活性化に大いに貢献している。本件実施以前はプノンペンからカンボジアの北東部への移動へはフェリーでトンレ・サップ河を渡るしかなかったが、国道6A号線の修復(日本の無償資金協力)と相まってフェリーの利用者は極端に減少、所要時間の短縮と物流の拡大も達成された。

 他方、トンレ・サップ河の東部地域も橋の復旧に伴い開発が進み雇用機会が増大し治安の改善にも大きく貢献した。また、道路交通網の改善によりプノンペン河川港で荷揚げされる貨物量も増加した。

3.インパクト

 内戦終了後の一般プロジェクト無償第1号案件として、本件のインパクトは大きく、同橋の修復は日本・カンボジア両国の友好の証として広く国民から支持された。国王自らが「カンボジア・日本友好橋」と命名され、広報効果も絶大であった。

 更に、同橋が修復されたことが発端となり、それに連なる幹線道路が次々に日本の無償資金協力で整備され、首都と北東部との往来が一層容易になった。

4.妥当性

 カンボジアの開発政策はいずれもインフラ、特に道路の建設に高い優先度を置いており、本件はこの方向性に合致している。採用された技術や材料も工期やコストを考慮した場合、最適なものであったと評価できる。サイト選定も、同橋の経済的重要性や当時の治安情勢から見れば極めて妥当であった。

5.自立発展性

 カンボジア側の維持管理に関しては、これまで十分な措置がとられてこなかった。公共事業運輸省は、将来必要とされる全面的な塗装等に備え、維持管理のための組織作りと予算確保に努力すべきである。また橋を良好な状態で使用するためには、過積載の取り締まり等、適切な道路管理が求められるが、この点についてもまだ開始されたばかりであり、今後の改善が望まれる。

6.今後必要とされるフォローアップ

 本件は大変成功しているプロジェクトと評価できるが、当初設計予測を上回る交通量が発生しており今後も増加の見通しであることから、抜本的な交通運輸政策の見直し(輸送方法の多様化等)が必要と思われる。


(写真)チュルイ・チョンバー橋とプノンペン港
チュルイ・チョンバー橋とプノンペン港
(写真)1998年メンテナンス工事風景
1998年メンテナンス工事風景


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