(1999年2月、在パキスタン大使館)
援助形態 | 有償資金協力 |
協力年度 | 1987年度 |
協力金額 | 19.84億円 |
相手国実施機関 | 通信公社(当時:通信省電気通信総局) |
協力の内容 | 第6次5カ年計画(1983年~88年)において目標とされたテレックス交換機の11,800回線増設作業の一部として計画された。本計画によりテレックス交換機の老朽化及び需要拡大に対応するため、テレックス・サーヴィスの量的・質的改善を図り、経済活動の活発化・円滑化を目指すことを目的として、パキスタン全土の11都市に電子式テレックス交換機5,430回線を増設した。 |
1.効率性
実施の際の機器の据え付け、要員の訓練、その後のメンテナンス等も非常に良く行われており、また、納入された機器自体の故障も少なく、極めて効率的に使用されている。
但し、加入者数が減少している時点でもテレックス加入待ち需要(25回線)が存在しており、より利益の上がるデータ通信、デジタル回線等の工事を優先するという通信公社側の問題ではあるが、テレックス回線の接続、機器の据え付け等につき改善が求められる。
2.目的達成度
本計画により電子交換機を入れた11都市のテレックス回線容量6,198回線(うち円借款供与の回線5,430)に対し、調査実施時点における加入者数は2,677回線となっており、回線利用率(43%)自体は必ずしも高くないが、これはこの数年急速に普及したインターネットサービスにより、利用者がテレックスから変更したためであり、本件実施後数年間の利用率を見ると最大の回線容量を持つカラチ交換局では、利用率が95%にまで達したこともあり、パキスタン経済の発展過程において不可欠な情報インフラ整備という目標は十分達成されたと考えられる。なお、JBICが1999年12月に行った完成案件現況調査によれば、テレックス需要は、銀行、報道関係、工場などの特定ユーザーとテレグラフ・オフィスを利用する一般ユーザーから成る。
3.インパクト
本計画実施により、パキスタン経済の発展過程において急速に増えたテレックス需要を賄うことができたことから、非常に効果があったと言える。
4.妥当性
ファクシミリやインターネットが普及した現時点でみれば、テレックス回線増設に協力すること及び供与回線数につき妥当ではないとも判断できるが、本プロジェクト計画時にそれらの急速な普及を予測することは全く不可能であったことを鑑みた場合、プロジェクト選定時点において予想されていたテレックス回線需要の急速な伸びに応えるという観点からは、本件計画は妥当であった。
5.自立発展性
スペアパーツは十分に保管されており、また、メンテナンス状況も良く問題ない。さらに、1996年と98年の間で比較した時、加入者数は63%に減少しているが、通信数及び収入は、それぞれ81%、83%に減少しているに過ぎず、1加入者あたりの通信数及び収入は増加しており、パキスタン側による維持、管理が十分行われている。
6.将来他のプロジェクトを実施する際に教訓として活かされるべき事項
途上国の経済発展のために産業インフラの整備は重要であり、情報通信分野も重要なインフラとして積極的に協力していくことが重要であるが、本計画のように技術進歩の早い分野においては、プロジェクトの選定において技術進歩の早さ及び技術革新の可能性を十分考慮することが求められる。