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カルカッタ コラブ上流灌漑計画


(1999年3月、在カルカッタ総領事館)


〈プロジェクト概要〉

援助形態 有償資金協力
協力年度 1988年度
協力金額 3,769百万円
相手国実施機関 オリッサ州水資源局
協力の内容 オリッサ州南部コラブット地区に位置するコラブ多目的ダム(320メガワット水力発電所併設)の放水路下流のアースダムを水源として、干魃被害を受けやすい地域の潅漑のために、右岸水路56.8キロメートル,左岸水路12.6キロメートルの建設及び支線・末端水路建設(円借款対象は右岸水路約28キロメートル及びその支線・末端水路の建設であり、全潅漑面積48,000ヘクタールの内21,000ヘクタールが対象)を行う。


〈評価要旨〉

1.効率性

 1988年度にL/Aを締結し、当初93年の完成を予定していたが、事業開始当初工程管理及び事業実施体制の不備並びに内貨不足の他、事業実施期間中の急激な物価上昇等予見不能な要因も重なり、遅延が顕在化した。その後、工程管理のためのコンサルタントを雇用する等した結果、98年7月に貸付を完了した。

2.目的達成度

 本件の全体の耕地の潅漑は、一部末端部の潅漑用水路が未完成であるが、主要な潅漑水路は完成しており、一応の目標を達成している。本件の水源は上流の水力発電所で使用された水の再利用なので、発電量により下流の潅漑水路の水量が変化する。現在、電力省と水資源省で、常時一定量の水を流すための発電量の確保ないし発電用タービンを経由せずに貯水池に水を送るバイパスの建設が検討されている。

3.インパクト

 潅漑用水路の建設以前、農家は1期昨の稲作収入に頼っていたが、同水路の完成により2~3期作の栽培が可能となった。また、稲作ばかりではなく野菜の栽培も可能となり収穫の増加が見込まれている。

4.妥当性

 オリッサ州は、指定カースト、指定部族の構成比が人口300万人以下の小規模州を除けばインドで最も高い州である。この状況から、本件は単に優先度の高い「大規模潅漑事業」であるに止まらず、「部族特別対策事業」に指定され、(イ)指定部族、指定カースト等の極貧層に対する雇用促進効果、(ロ)農業生産性増加に伴う地域経済向上、(ハ)農業雇用の増加に伴う部族定住化促進等の事業効果が一般の潅漑事業と比べてより強く期待されている。

5.自立発展性

 主要な潅漑用水路は、オリッサ州政府資源省が維持管理を行うこととなっており、末端の水路については、農家が8つの管理組合を登録したほか、更に32組合を組織し維持管理に当たることとなっている。

6.ジェンダーへの配慮・影響

 本プロジェクトにより、2~3期作の実施が可能となったことにより、農業分野における女性の雇用機会が増大した。

7.今後必要とされるフォローアップ

 潅漑用水路の建設により農作物の栽培に必要な水の供給問題についてはほぼ解決している。しかし、日本の農業技術者の派遣等により、新しい農業技術の紹介ができれば、本件の完成度が高まると思われる。

(本件については、今後、国際協力銀行(JBIC)による援助効果促進業務(SAPS)の実施を予定している。)

8.将来他のプロジェクトを実施する際に教訓として活かされるべき事項

 プロジェクトの遅延を回避するために、実施機関の工事管理能力等を勘案の上、コンサルタント会社の雇用等をプロジェクト開始当初より検討することが必要である。


(写真)アースダム
アースダム
(写真)主要水路
主要水路


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