(2)効率性(Efficiency)
■資金ディスバース後の資機材調達
OECFの担当者によれば、資金ディスバース後、資機材調達はポジリストに沿って円滑に実施された。輸入業者の選定は特に実施されていないが、本構造調整計画の目的が、金融セクターの効率化と持続的成長に不可欠な長期資金の円滑な供給体制の整備であることを考えると、構造調整計画全体が本目的達成に貢献した点について把握することを重視すべきであると思われる。
■資機材調達の価格
本融資における調達条件が一般アンタイドであることから、資機材の輸入はフィリピン国内の民間事業者によって実施されたととらえられる。フィリピンにおいては、資機材調達に関わりの深い資本財及び耐久消費財の輸入物価格に係る統計の整備が十分ではなく、これらの推移を把握するのは困難であるが、同国内で実施したインタビュー調査によれば資機材は適正な価格で輸入されており、特に問題は生じていないものと考えられる。
■エンド・ユーザーに対する資機材の販売
1989年の援助資金ディスバース以降、フィリピンにおける使途別輸入額に占める資本財輸入額の比率が高まっており(図表4-2-1-1参照)、同国におけるその後の生産活動にプラスの影響を及ぼしたととらえられる。OECFに対するインタビュー調査によれば、援助資金ディスバース後、輸入された資機材の販売もそのエンドユーザーに対して円滑に行われている。
□各トランシェ段階におけるODA資金のディスバース状況
ODA資金のディスバースは、フィリピン側から提出される領収書と引き替えに迅速にディスバースされた(リインバース方式)。通常、ディスバースは、コンディショナリティーの達成が確認されてから実施される。達成状況については、主にフィリピン政府から提出された「見返り資金報告書」を通じてL/Aや規定に合致しているかを審査して判断されているが、本ケースの場合、一部コンディショナリティの達成が遅れて、新たなコンディショナリティーが追加されると共にL/Aが延長されたため、資金のディスバースも当初の予定よりずれこむこととなった。
□構造調整計画のタイムスケジュール
当初、本構造調整計画は、1989年から91年までの2年間を予定されていた。しかし、中央銀行法改正を中心に法改正に予定以上の時間を要したため、最終の資金ディスバースは93年に行われた。このような多少の遅れはあったものの、構造調整計画全体としては、概ねスケジュールどおりに進められた。
達成が遅れたコンディショナリティは、法改正を伴うものが中心であり、PDIC法の改正、PDICの増資、金融取引関係の諸税削減/撤廃、商業銀行に対する中銀の監督、規制の適正化を目的として行われた中央銀行法の改正である。このうち、中央銀行法の改正が最も施行が遅れ、当初91年を予定していたものが、1993年に施行された。新中央銀行法の施行の遅れは、旧中央銀行法改正の理由等について国会における審議に時間を要したためで、これは本法律に限らずフィリピンでは法改正が行われる際には通常一定の時間を要するとのことである。
この遅れを理由にフィリピン政府からL/A延長の申し入れがあった。これを了承する条件として、新中央銀行の財政改革という新たなコンディショナリティーが追加された。
追加したコンディショナリティーを含め、全コンディショナリティーが達成されたため、1993年12月に最終の資金供与も終了した。