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5.医科学大学院(インド)


(現地調査期間:1999年4月4日~12日)


国立国際医療センター
国際医療協力局派遣協力課医師
 新崎 康博 インド地図


〈評価対象プロジェクトの概要〉

プロジェクト名 援助形態 協力年度、金額 プロジェクトの概要
サンジャイ・ガンジー医学研究所医療機材整備計画 無償資金協力 86、87年、33.21億円 ウッタル・プラデシュ州ラクノウ市に所在する同医科研究所に、病院機能強化のための機材およぴ研究機能強化のための機材の供与を行った。
サンジャイ・ガンジー医学研究所 プロジェクト方式接術協力 90年8月~97年7月 上記供与機材の最適利用のために、日本の専門家の派遣およぴ同研究所側指導スタッフを招請して研修を行った。


I 背景

A 評価の対象

1 サンジャイ・ガンジー医科学大学院

a サンジャイ・ガンジー医科学大学院概略

 サンジャイ・ガンジー医科学大学院 Sanjay Gandhi Postgraduate Institute of Medical Sciences(SGPGIMS)は、インドで最も若い医科大学院である。この自治機関は、1983年に、ウッタル・プラデシュ州議会の議決に基づき同州政府により、医療・教育・研究の高度先進機関としてラクノウ市に設立された。州立大学としての地位を認められており、学位、卒業証書、その他の履修証明書を発行する権限を有する。第一計画では、循環器科、内分泌科、消化器科、腎臓科、神経科、遺伝医学科、並びに臨床免疫科が開設され、更に、診断部門として微生物科、核医学科、病理科、放射線科、そして治療補助部門として麻酔科、放射線治療科、輸血医学科が開設された。

 大学院では、ラクノウ・ラエバレリ・バラナシ街道沿いの550エーカーの学園都市としてあり、ラクノウ駅から12キロメートル、市の中心地から15キロメートル、空港から15キロメートルほどの所にある。病院としての環境を整え、砂塵や騒音を防ぐため、植林、造園等で大規模な整備を行っている。交通の便としてはテンポ(三輪タクシー)やバスがある。

 大学院病院はレファラル(紹介)病院として機能しており、正式の紹介状のない患者は受け付けない。紹介する医師は、紹介先の科や専門医に対して、患者についてのすべての情報を知らせることが求められている。紹介患者は、多くの場合、専門医による診察、検査、治療の後紹介した医師に戻され、さらに治療が継続され、ファローアップが行われる。大学院病院は外部からの救急は受け付けてないので、紹介する医師は、重篤な患者を送る前に関連する科や専門医に連絡しなければならない。Assistant Public Relations Officer(APRO)と呼ばれる担当医が24時間待機している。再来患者は、担当官に電話(2070、2071、2073)してアポイントメントをとることができる。

 病院及び補助施設の屋内総面積は、約40,000平方メートルである。病院は600床で、手術室が13あり、ICU(集中治療室)の病床が56、血液透析室に13床ある。外来部は六つに分かれており(各専門科に一つづつ)、それぞれに待合い場(注:待合室とは呼べない)がある。外来治療病棟としてデイケア棟があり、そこには内視鏡室が三つと、小手術、検査、治療のための手術室二つがある。

 病院は、それぞれ10階建ての二つのタワーからできている。各階に60床あり、その内訳は、個室12、隔離室4、準集中治療病床8、一般病床36である。病院全体が利用可能になれば、各臨床科が60床づつ持つことになる。病院は集中空調されている。停電に備えて3,000KVAの非常用発電機が二つある。病院はその円滑な運営に必要なすべての補助施設を有している。即ち、炊事場、中央滅菌室(セントラル・サプライ)、洗濯場、塵芥焼却炉等である。

 現代医療は金のかかるものであり、州は全ての人々に無料で医療を施すことはできない。大学院付属病院では、慎重なる検討の結果、患者から診療費を徴収することにしたが、その額は補助金で補うことにより適当と思われる率に押さえられている。病院は、現在、支出総額の約4分の1をこれでまかなっている。

 病院の付属施設として、各部科のための学術研究ブロックがあり、それぞれ教授室等の部屋や臨床研究検査・実験室を有している。職員子弟用の幼稚園、小中学校があり、職員用のテニスコートがあり、水泳プールとクラブハウスは建築中であった。

 教授陣が約100人、レジデント(研修医)が150人、看護婦が350人、技師が150人おり、さらに800人の事務官その他の職員がいる。これらの大部分は構内の官舎に居住しており、外来教授、賓客のためのゲストハウスも完備している。警備、清掃等の要員は、州政府の許可を受けて、契約で雇い入れている。1999年5月現在、現在進行中の建築工事の要員も含めて約4千人が構内に居住している。

 病院は、入院患者の親族のために、有料で宿泊施設を提供している。また、駐車場、食堂、電話局、薬品店(drugstore)、商店等もある。研究所の正門から病院までは、無料バスが運行されている。構内のコミュニティ・センター(病院から約1キロメートル)には、銀行支店、郵便局がある。

b サンジャイ・ガンジー医科学大学院(SGPGIMS)設立にいたる経過

 インド独立以来、ウッタル・プラデシュ州にはラクノウ市に医科大学院を設立しようという気運があった。同市にはインド北部で最もいい医科大学キング・ジョージ医科大学KGMC(King George's Medical College)があったからである。1980年12月14日、当時のインド国大統領によりKGMCのキャンパスにSGPGIMS建設の礎石が据えられたとき、この気運は実現に向けて第一歩を踏み出した。しかし、間もなくKGMCの既存の部門を強化して大学院にする案に反対の声があがり、州政府の支持が得られなくなった。州政府は、州の希望の星となるような斬新且つユニークなものを創出するというより高邁な望みを抱き始めたからである。そのために、ウッタル・プラデシュ州保健・家族福祉省長官の下に、調査チームが作られた。このチームは、米国一流の医療機関(国立衛生院NIHとその医療センター、ワシントンのジョージ・ワシントン大学医学部、ニューヨークのコロンビア大学医学部とコーネル大学医学部)、英国(ハマースミス医科大学院、ノースウィック医療センター及び医学研究審議会Medical Research Council)、並びにスウェーデン(ストックホルムのカロリンスカ研究所と付属病院)を視察した。

 調査チームの視察報告書をめぐって活発な議論が交わされ、結論として、ゼロから始めて、新たに大学院を開設しようということになった。そして基本的理論として、この大学院は州民に高度先進国医療を提供し、最新の医学教育と研修を行い、そうすることによって、高い質の医療を州の遠隔地や国の他の地域に広げることが謳われた。この理念を実現するために、作業部会は米国ベスセダにある国立衛生院医療センターのモットーを採用したが、その内容はほぼ次の通りである:

 優秀さに置いて長い伝統を有する病院が豊富な例で示しているように、研究は教育の充実・発展を促進し、教育は医療のレベルを向上させ、そして医療は研究への新たな道を開く。

 新たな大量投資を必要とするこの事業の着手に際しては、州の既存の施設との重複を避け、資源を無駄にしないよう注意が払われた。それ故、目的は単にもう一つの医学校を作るということではなくなった。これにより、通常の医学部課程を除くだけでなく、伝統的な臨床科目(内科、外科、小児科、産婦人科等)や基礎科目(解剖、生理、生化学等)も除く決定がなされた。しかしながら、あらゆるカリキュラムにおいて基礎科学は重要であるとの認識から、これらは、各々の必要に基づいて各々の専門科に取り入れていくことにした。

 以上のことから、研究所は高度特殊専門科のみに限る決定がなされ、量ではなく、質に重点を置き、これらの分野における全国的、国際的リーダーシップを確立する方針が示された。研究所は、これらの高度特殊専門分野(superspecialities)での教育修練を行い、博士号等(DM、MCh及びPhD)の授与に至るとされた。

 1982年に、第一期計画として14億3,600ルピー(約300億円)の予算が計上され、工事が開始された。

c サンジャイ・ガンジー医科大学院(SGPGIMS)設立の目的と権限

 1983年に州議会が採決したサンジャイ・ガンジー医科学大学院法に基づき定められた目的と権限は、以下の通りである。

  • (a)既存の高度専門領域並びに将来出現するかもしれない、継続(生涯)教育も含めたその他の領域において、医科学分野における医療、教育、研究の最高の施設を有する「殿堂」(a center of excellence)を創設する。
  • (b)医学教育の高い基準を設定すべく、高度専門領域(superspecialities)の卒後医学教育の教授法のパターンを開発する。
  • (c)パラメディカル並びに関連領域の研修を、特に高度専門領域に関し、行う。

 これらの目的の実現を促進するために、大学院と病院は、以下の期限を与えられる。

  • (a)レファラル(紹介患者専用)病院として機能する。
  • (b)現代教育、並びに、物理・生物学などの学際領域を含む関連学問分野における、卒後教育と研究を行う。
  • (c)医学教育の適切な基準に到達すべく、かかる教育の新しい方法について実験を行う。
  • (d)卒後教育のコースとカリキュラムを定める。
  • (e)医学教育を担当する教員の研修を行う。
  • (f)試験を行い、規則に基づいて、卒後医学教育の学位、卒業証書、履修証明書等を発行する。
  • (g)医学分野において研究及び高等教育を行うに際し、他の機関と協力する。

 以上が研究所に与えられた目的と権限であるが、これらを通して、国際的競争力をつけ、21世紀におけるハイテク医療分野のリーダーたらんとしている。これは、決して高望み(a tall order)ではなく、法律としては「大学院法」という進歩的な法の後ろ盾があるし、州政府は積極的に支援してくれるし、大学院の教授陣は粉骨砕身してくれる、と設立10周年記念誌は述べている。

2 日本の協力

a 医療機材整備計画(1986~87年)

 当時のインド首相故ラジーヴ・ガンディー氏が、日本訪問中の1985年11月に、日本政府によるSGPGIMSへの機材無償援助の可能性について、当時の日本の首相中曽根氏に話した。この要請に応じて、日本政府は、JICAを通して、基本設計調査を行うことになった。JICAは86年2月2~13日インドへ、大池真澄厚生省病院管理研究所長を調査団長とし、加藤延夫名古屋大学医学部細菌学教授を副団長とする第一回目の調査団一行9名を派遣した。調査団は、インドの保健事情と医療の実状を調査するとともに、インドの中央政府とウッタル・プラデシュ州政府の代表、両政府が任命した専門家等と話し合いを持った。SGPGIMS建設事業の優先度、目標、進捗状況に満足した調査団は、日本政府による支援を献策した。これに引き続き、より詳細な調査が広瀬省厚生省健康政策局総務課医療技術開発室長を団長とする第二回調査団一行7人により、86年3月30日~4月18日に現場で行われた。この調査団は機材の必要度を検討し、これに基づいて実施計画を作成、2年間に亙って、33.2億円の無償援助を行うとした。この実施計画に基づいて、86年10月8日に、日印両政府の間で、86-87年度に19.73億円の無償援助を行う旨のENが取り交わされた。州政府は、東京の病院システム開発研究所をコンサルタントとして契約し、仕様書を完成、入札書類を作成させ、入札を日本で公開させ、そして州政府の代表はこれを受け取り、検討した。入札は、三菱商事が落札した。その業務範囲には、SGPGIMS現場への機器の据え付け、現場での、或いは必要ならば日本での、オペレーターやエンジニアの研修が含まれていた。コンサルタントはまた機器引き渡しのこの部分の監督をし、日本において機器の検査も行った。インド政府は、日本政府から受け取った機器について、必要な免税措置を講じた。この第一期分は、主として、病院機能のための基本的機材を中心とした。

 翌年の無償供与13.48億円についても同様な手続きが進められた。このE/Nは1987年9月21日に締結された。第二期分についても、ウッタル・プラデシュ州政府は、東京の病院システム開発研究所をコンサルタントとして契約した。今回は日商岩井が落札した。サプライヤーとしての業務は前回同様で、第二期分は、主として、研究機能並びに病院機能の充実を果たすための更に高度な機材が中心となった。

b プロジェクト方式技術協力プロジェクト(1990年~97年)

 上記の無償供与に関わる1986年の基本設計調査のRDで、供与機材の最適利用のためには技協プロジェクトを導入することが望ましいということが、日印双方によって同意されていた。医療と医学研究のレベルの向上のためには、高度先進機器の輸入だけでなく、医療、研究、管理についての技術移転もまた重要であることが認識されていたのである。日本政府は名古屋大学医学部に依頼して、サンジャイ・ガンジー医学研究所との調整に当たらせた。両者の間で行われた数回の交渉の後で保健医療関係の人材開発を通してインド共和国全国の健康のレベルの向上と国民の福祉の増進に寄与するために、日本政府は、日本国際協力事業団(JICA)を通して、以下に述べる目的に沿って、日本の専門家を大学院に派遣するとともに、大学院の指導スタッフを日本に招いて研修させることに合意が達せられたのである。

  1. 第三次医療施設並びに医科学卒後研究機関としての同大学院における研究活動の促進。
  2. 同大学院病院における特殊専門医療の促進。
  3. 高度先進医療機器に関する技術の適切な移転の促進。
  4. 上記の分野において同大学院がリーダーシップを獲得するに要するインフラと手段の提供。
  5. 双方が必要と見なすその他の活動の実施。

 プロジェクト方式技術協力の5年プロジェクトについて、1990年2月15日、JICA、インド政府、ウッタル・プラデシュ州政府並びにSGPGIMSの間で署名が交わされ、団長として加藤延夫教授が署名した。プロジェクトは、90年8月1日に開始され、95年7月31日に終了の予定であったが、2ヶ年延長され、97年7月31日に終了した。その投入実績は、専門家派遣長期7名、短期74名、研修生受け入れ26名、機材供与2億6千663万円であった。

B 評価の視点

1 評価の目的(有識者評価マニュアル、平成8年3月外務省発行、より)

 わが国のODA(政府開発援助)について、効果的・効率的な実施、透明性の確保等に資することを主な目的とする。即ち、

  1. 評価の結果を、将来の計画策定・実施に反映させてODAの質の向上を図り、
  2. さらに、結果を国民に公開することによりODAの透明性を確保する。

 我が国のODAは、国際貢献の重要な「柱」並びに「外交手段」となっており、将来とも拡充していく必要があり、そのためには、「ODAの質の向上」並びに「納税者たる国民の理解と支持の確保」が必要であるとの認識から、上記の目標は設定されている。

2 評価のパラメーター(評価5項目)(有識者評価マニュアルに一部依拠)

 評価は可能な限り、体系的かつ客観的に行わなければならない。そのために、ここでは、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)が推奨する以下の五つのパラメーターに沿って評価を行うべく努めた。但し、このパラメーターに収まりきれない評者自身のコメントも付加する。以下、評価5項目について説明する。

  1. 実施の効率性(efficiency
     プロジェクトの実施に必要とされる資金、機材/施設、人員等からなる投入と、プロジェクトの活動が直接もたらす成果の関係から評価する。
  2. 目標達成度(effectiveness
     プロジェクトの当初計画に掲げられているプロジェクト目標が、どの程度達成されたか、または今後達成される見込みであるかを評価する。
  3. インパクト(impact
     プロジェクトが実施されたことにより発生した波及効果、プラスもマイナスも含む。プロジェクトによっては、極めて広範囲に亘る可能性があり、計量化が困難で、評者の主観に左右されやすい。その危険性を念頭におきながら、これは評価する。
     具体例として、次の項目があげられる。

    • (1)上位目標はどの程度達成されたか。
    • (2)上位目標の達成に、プロジェクト目標の達成はどの程度貢献したか。
    • (3)経済的/社会的/政治的/技術的側面、環境へのインパクト、地域/国全体へのインパクト等横断的な視点から見た場合、プロジェクトはどのようなプラス、マイナスの影響をもたらしたか。
  4. 妥当性(relevance
     評価時においても(本評価の場合、1999年の視点から見ても)、プロジェクトの当初の計画内容が有効であるかどうかを評価する。
  5. 自立発展性(sustainability
     プロジェクトは、協力期間中は我が国と相手国との協力によって運営され、期間終了後は、相手国の責任の下で自立(又は、自律)的に発展することを前提としている。この自立発展性の確立がプロジェクトの究極の目的であり、その評価は最も重要である。

II 調査

A 事前調査

 評価依頼を受けてから、対象に係わる資料を収集し始めた。約2週間これらを読み、対象像の概略を把握した。その間、名古屋に一泊旅行に出かけ、それぞれ調査そして臨床及び研究の指導を現地で経験されたお二方から、忌憚の無いお話しを伺うと同時に秘蔵の資料を頂いた。それから、外務省、およびJICAの担当の方からブリーフィングをして頂いた。これら全てを通して集め、目を通した資料が、添付の評価資料一覧の1~15である。しかし、実際に自分の目で見るまでは、全て参考程度にするべきである、と自分を戒めた。この時点で、調査の戦略を立て、事前にアンケートを配る誘惑にかられたが、あくまで現場で相手にその時最も有効な質問をぶっつけるという真剣勝負に出ることにした。アンケートは有効な手段になりうるが、現場を見ずに作成すると、その作成時に既にかなりのバイアスがかかっている場合が多いからである。例えば、病院の規模を測る基本的なアンケートとして病床数を問うことがよくあるが、同じ100床でも、場合によっては、日本の100床に比べて、比較できないほど異なることがある。

B 調査

1 全日程表

 1999(平成11)年4月4日(日曜日)JL471で午前11時15分成田発、同日現地時間午後4時20分にデリー着。5日(月曜日)、日本大使館、JICA事務所、イ国保健省等表敬訪問。6日(火曜日)、9W741で午前10時20分デリー発、11時20分ラクノウ着。サンジャイ・ガンジー医科学大学院に向かい、正午頃、M.バンダリ総長を表敬訪問。大学院についてブリーフィングを受けた後、午後1時から各部の主任教授等と共に、ゲストハウスで歓迎昼食会。午後3時、ウッタルプラデシュ州(UP)医学教育省大臣(Minister)シバ・カント・オージャ教授を表敬訪問。午後4時、UP財務省首席次官(Principal Secretary)S.C.トリパティ氏を表敬訪問。7日(水曜日)、午前9時からバンダリ総長の案内で、キャンパスと病院内をざっと見てまわる。10時から13時まで、各々約30分ずつ、泌尿器科、腎臓科、神経内科、脳神経外科、心臓内科、心・血管・胸部外科で主任教授等と面談、聞き取り調査をし、資料を受け取り、科内の施設、機器をざっと見せてもらう。1時間の昼食の後、14時から、核医学科、X線診断科、X線治療科を訪れる。8日(木曜日)、9時30分~13時、麻酔科、輸血医療科、病理科、細菌学科、遺伝学科、免疫学科を訪れる。1時間の昼食の後、内分泌内科、消化器内科、同外科を訪れる。午後7時、UP政府官房長官兼サンジャイ・ガンジー医科学大学院理事長を表敬訪問。8時から、ホテル・タジマハールで研究所主催の夕食会。9日(金曜日)、9W742で11時50分ラクノウ発、12時50分デリー着。午後は、大使館を訪れ、仮報告書を提出すると共に、平林大使、長嶺、田辺両公使に口頭でも報告。10日(土曜日)、終日資料整理。11日(日曜日)、JL472で19時30分デリー発、翌12日(月曜日)早朝6時55分成田帰着。

2 現場調査の概要

 上記全日程表に示されているように、現場調査は実質2日間であった。各部門とも現在の診療状況、研修教育活動、研究実績を中心に聞き取り調査をした。時間が許す限り、供与機材の管理、稼働状況についても尋ねた。研究実績については、できるだけ発表論文のコピーをいただいた。その他に同行の藍澤外務事務官に、研究所全体の運営状況、州の保健医療統計等の資料収集を依頼した。当初、研究所が現在あるのにJICAの無償機材供与並びにプロジェクト方式技術協力がどれほど貢献したか、その貢献度を示す具体的情報、資料が見つかればと考えていたが、終了してから機材供与については12年、技術協力については2年経過しており、それは不可能であった。しかし、総長初め多くのスタッフが、大学院が今日あるのはJICAの援助に負うところが多いと述べていた。

3 部門別調査要約

a 泌尿器科

 これはバンダリ総長の専門科である。彼が教授で、その下に準教授が2名、助教授が1名いる。診療は泌尿器全般にわたり、ESWL(extra-corporeal shock wave lithotripsy体外衝撃波砕石術)、PCNL(percutaneous nephrolithotomy経皮的腎結石除去術)、尿管・腎内視鏡術、外科的尿路結石除去術なども行われている。腎移植も行っている。これは200例を超す。その他、尿路神経障害に対するビデオによる尿路動態診断も行っている。週5日外来診療を行っており、手術室3、病床60を有している。毎週25人以上の新患を入院させている。研修教育活動は、89年に始まり、10人のシニア・レジデントがおり、毎年、2、3人修士号を獲得している。彼らはインド各地でも外国でも、特に州内の需要の高いいくつかの市で活躍している。国内並びに国際的レベルで、毎年10例以上の研究発表を行っている。同科の研究室を見学した際、女医さんが研究にいそしんでいるのを見かけ、質問したら、尿路結石の結晶構造の解析をしているとのことであった。これが実際の診断にどう繋がるのか、一般の臨床医には理解の届かないところである。なお、当科は1988年1月以来、インド泌尿器学会誌の編集を担当しているということであった。

b 腎臓科

 スタッフは教授2名、準教授1名、助教授1名である。種々な急性、慢性腎疾患について、最新の検査及び治療を行っている。腎移植前の患者の血液透析、腹膜透析、持続的動静脈または静静脈血液濾過、プラズマフェレーシス、腎生検も行っている。外来患者に自宅でできる持続的腹膜透析(CAPD)の指導もしている。腎移植について、泌尿器科と協力している。外来診療は、月、火、木、金の週4日である。外来診療は1988年の初期から開始され、入院診療は同年中頃から始められた。最初の血液透析は88年6月30日に行われている。外来患者総数は89年には2,630人であったが、93年には7,276人に増え、現在では8,000人を超える。入院患者数は89年には580人であったが、現在は1,500人を上回る。血液透析は年間6,000回以上行われている。JICAが供与した20近くの透析装置が稼動されているが、これらは耐用年数ぎりぎりになっている。しかし、透析室のスタッフによると、収支は大幅な黒字であり、自力で十分買い替えが可能だということであった。

 当科では、1990年に博士課程が開始されている。毎年1~2名が博士号を取得している。カリキュラムは広範囲に亘る総合的なものであり、セミナー、抄読会(journal clubs)、症例検討会、それから泌尿器、放射線、病理、核医学の各科との合同コンファレンス等からなる。研修生は病棟、外来、透析室、移植部をローテーションで回る。

 当科は国内国外の専門誌に既に数十例の研究発表を行っており、教授陣による海外学会での発表も多く、一例を挙げれば、Vijay Kher教授は、1992年にシンガポールで行われた第一回途上国臓器移植国際学会で「低量デキサメサゾン療法 ―腎移植患者の急性臓器拒絶反応に対する安上がり療法」を発表、最高賞を授与されている。今後とも、腎生理、移植免疫学、尿細管機能検査等の基礎的研究を充実させていく方針である。

c 神経内科

 スタッフは教授1名、準教授2名、助教授2名(1名は非医師)である。様々な患者を取り扱っており、主なものは中枢神経系感染症、脳卒中、癲癇である。重症筋無力症やギラン・バレー症候群に対しては、プラズマフェレーシスや人工呼吸器による治療を行っている。神経生理学的診断部門としては、脳波計(FEG)、筋電計(EMG)、惹起電圧(evoked potentials)および神経伝導速度の検査がある。週4日外来診療を行っており、入院加療としては病床32を有している。さらに、重症患者用のICUもある。1987年8月に最初のスタッフが任命されて診療が開始された。翌年2名のスタッフ、若干名のレジデント、2名の技師が加わり、研究施設が整備され始め、入院患者が増えていった。当院には最新鋭の診断機器(CT、MRI、核スキャン、電圧惹起装置)、治療機器(プラズマフェレーシス、血漿交換)及び生命維持装置があるため、入院需要は増える一方である。当科の特徴として、神経内科医4名の他に1名の神経化学者がおり、診療と基礎科学教育研究が総合的に行われている。評者に面会してくれたのはこの神経化学者で、神経伝導速度計測の臨床応用について熱中して話した。

 1990年に設備と診療活動を調査した後、インド医学評議会は当科に対しDM博士課程(神経学)を開始する許可を与え、それが開講された。PhD博士課程も同時に開始された。最近は両課程合わせて10人内外の研究生がおり、毎年2~3人がDM博士号を、1~2人がPhD博士号を取得している。DM博士課程では、研究生は病棟回診、抄読会、セミナー、他科との合同コンファレンス等の忙しいスケジュールの中で、神経学の種々な基礎、検査、臨床面を学んでいる。更に、脳神経外科、病理科、精神科、放射線科にも回されている。その上、他の施設への2ヶ月間のローテーションがあり、彼らの視野を広めるのに役立っている。

 当科では、臨床研究も基礎研究も同じく重要とみなされている。当研究所内各科とだけでなく、他の機関との合同研究も行われている。主な研究領域は、癲癇、神経・筋障害、神経変性疾患、脳卒中、それからtropical neurologyである。現在までに、国内並びに国際専門誌に数十の発表を行っており、主なるものは日本脳炎、結核、lathyrism、フッ素中毒に関するものであった。

d 脳神経外科

 スタッフは主任ともう1人の教授2名、準教授2名、助教授2名(神経耳科と神経眼科)。顕微鏡下脳神経外科手術、脳神経系微小血管手術、頭蓋底手術、経鼻的(trans-sphenoidal)下垂体手術、脊椎及び眼窩腫瘍手術、そしてstereotactic neurosurgery(注:1997年にボリビア国の脳外科学会長が語ったことによれば、当時、この術式に用いられる脳の部位を定める器具は南米全体に二つしか存在しなかった)を行っている。経口的手術、頭蓋・脊椎異常の後方固定、頚椎硬化症の体部切断術も行っている。脳性麻痺、三叉神経痛、半顔痙攣等は外科的治療を行っており、小児の脳神経外科的治療も行っている。当科は頭部外傷や脊椎損傷の患者は受け入れてないが、蜘蛛膜下出血の患者は治療している。特殊外来を行っており、脳下垂体(月曜日)、眩暈(水曜日)、頭蓋―脊椎異常(木曜日)である。小児外来は水曜日である。当脳神経外科は86年に開設され、現在25床と手術室2を有している。あらゆる脳神経手術を行っているが、特に力を入れているのは、顕微鏡下手術、小児脳神経外科手術、脳定位(stereotactic)手術、頭蓋底手術である。

 当科では1989年にMCh修士課程が開始されている。

 この科での聞き取り調査は、手術場のすぐ外で行われ、しばらく待たされた後、手術の合間をぬって出てきた教授2名と話した。しかし、殆ど時間がなく、教育、研究活動については何も聞けず、資料もいただけず、手術室を覗くこともできなかった。

e 心臓内科

 スタッフは教授1名(長期国外出張で不在)、準教授2名、助教授2名。当科では、コンピューターを用いたトレッドミルテスト、カラードップラー心エコー、胎児心エコー、外来患者のホールターモニタリング、同じく外来患者の血圧モニタリング等の非侵襲的検査を行っている。侵襲的検査室には冠動脈形成術、冠動脈等の治療のための二面デジタル画像装置があり、これは診断的カテーテル挿入や血管造影にも重用されている。治療法としては、経皮的経管内的冠動脈形成術、冠動脈内ステント挿入、弁(僧坊、大動脈、肺動脈)のバルーンによる拡大術、バルーン心房中隔開口術、動脈管開存のコイルによる閉鎖、単又は二心室のペースメーカー埋め込み、心不整脈のカテーテルによる除去等を行っている。当科には、設備の整った14床のICU(CCU)がある。外来は月~金である。当科が開設されたのは87年で、それから急速に拡大発展し、種々な心疾患の診断にハイテク機器が使用できるようになっている。

 DM博士課程が1990に開始され、これまでに20人近くが終了している。当科はまたDiploma of the National Board of Examiners(全国レベルの専門医認定試験)の修練の場としても認定されている。実際にそこで指導に当たったことのあるJICA専門家の話しによれば、研修生はかなり高度な教科書的知識を有しているが、実地は基礎的なこともできないということであった。

 この科で応対してくれたのは助教授の若手で、患者が多くて大変忙しいとのことだった。丁度トレッドミルをやっているところで、実際かなりの患者が順番待ちをしていた。研究はおもに臨床研究で、専門誌に発表しているとのことであった。

f 循環器・胸部外科(Department of Cardiovascular and Thoracic Surgery

 スタッフは主任ともう1人の教授2名、準教授2名、助教授1名である。当科では弁修復、置換、冠動脈バイパス移植を主に行っている。また血管疾患や非結核性胸部疾患も取り扱っている。さらに新生児、小児のファローの四徴の全面修復等の先天性疾患の修復手術も行っている。外来は月~金行われており、特に火曜日には小児外来、水曜日には血管外来を行っている。当科は87年に開設され、1989年から臨床活動が活発になった。その後に続く5ヶ年間で、ニューデリーの東における最大のアカデミックセンターになった。ウッタル・プラデシュ、マディヤ・プラデシュ、ビハールの3州の約2億人を対象人口とする心・血管、胸部外科の高次レフェラルセンターになっている。西ベンガル、ヒマチャル・プラデシュ、アッサムその他の州からも患者は来ている。35,000人が外来を訪れた。手術件数は7,000例を越え、その半数以上が開心術である。心胸部外科の種々の領域でインドのパイオニアの役割を果たしている。

 1990年以来MCh修士課程とDNB専門医課程が開設され、毎年1~2名の修士を出している。生涯教育についても活発で、セミナーやワークショップを開催している。

 研究も盛んで、主な対象は新生児、小児心臓外科、弁、心室、冠動脈再建、虚血性心疾患、終末期心疾患とその循環補助、心、肺移植及び心・肺同時移植である。

 この科で対応してくれたのは、新進気鋭のDr.チョウドリーで、まずICUに案内され心室中隔欠損修復術後の患者等3人の元気な姿を見せてもらった。それから暫く話しをしたが、彼は米国で心臓移植の研修を受け最近帰国したばかりで、ここでもできるだけ早く心臓移植を開始したいということであった。そのためには、フレッシュな心臓が必要だが、現在ここに救急室がないのが問題である。ラウノウ市内での交通事故被害者は、現在は他の病院の救急室に送られ、それから死亡後心臓を取り出してこちらに持ってくることになるが、時間がかかりすぎる。こちらに救急室があれば、事故後すぐこちらに運べば、死亡直後に新鮮な心臓をharvest(収穫)できる。そのためにJICAに救急室の建築をお願いしてあるが、ぜひ願いを聞き届けてほしいとのことであった。

g 核医学科

 スタッフは教授1名、準教授2名(両者とも非医師)、助教授1名。当科はシンチグラフィによる診断設備を有しており、これにより肝胆スキャン、下部消化器出血の部位診断スキャン、食道シンチグラフィ、各腎臓の糸球体濾過率の測定を含む腎スキャン、脳スキャン、冠動脈疾患と左室機能を調べるためのタリウム画像診断を含む心スキャン、骨スキャン、リンパシンチグラフィ等が行われている。さらに、癌を含む甲状腺疾患の放射性ヨードによる廃絶術と骨転移のP-32による治療のための設備もある。他院の患者の放射線治療も引き受けている。当科の診療活動は、ガンマカメラによる生体検査とコンピューターデーター処理装置の使用により、1990年1月にスタートした。

 1991年の1月からは核医学のDM、PhD課程を開講している。その上、他科の研究生にも実習の機会を与えている。

 当科で応対してくれたのはドイツ帰りの物静かな準教授で、西独で18年間働いて生活も安定していたが、祖国に貢献したいために、募集に応じて帰国したとのことであった。彼によれば、当科では、ラジオアイソトープを利用しての様々な研究が行われており、その例として、菜食主義者の食事に放射性物質を混入したものを標準化し、それを用いてルーチンに胃が空になるのを測定することや、甲状腺機能亢進状態発見の新しいパラメーターとしてのT/P比、腎機能並びに皮質画像診断のための新たな放射性薬物99mTc-cystineを挙げた。評者の理解の範囲外であるが、ノートした通り列挙した。

h 放射線科

 スタッフは教授1名、準教授4名、助教授3名(1名は非医師)。当科の診断機器としては、通常のX線装置、超音波、造影診断(contrast studies)、CT、MRI、スペクトロスコピー、ディジタル・サブトラクション血管造影、脊髄造影等がある。様々な放射線手技を行っており、例を挙げれば、頭蓋内動静脈奇形と頚動脈・静脈洞婁、メニンジオーマやハイパーネフローマ等の腫瘍、喀血、消化管出血等の血管塞栓、末梢並びに臓器(例えば腎)血管狭窄の血管形成、消化管、胆管、尿道、大静脈閉塞のステント挿入などである。他院の患者に対しても治療を行っている。当科が開設されたのは1988年1月で、7月にはCT、超音波、通常のX線装置が利用可能になった。89年までにはさらに多くの機器が設置され、血管塞栓等の介入手技も行われるようになった。

 1991年にPhD課程を開始、MD課程はその翌年開講されている。州内の種々な病院の放射線医や医学部のMD学生に対して短期講習も行っている。さらに放射線医や臨床医のために継続教育を行い、放射線学のいろいろな分野についての最新の知識を伝えている。

 当科の8人のスタッフは、全員臨床も研究活動も活発に行っている。主な研究分野はMRI spectroscopyであるが、それは当科が、組織代謝を理解するのにこのテクニックを用いている国内唯一のセンターだからである。現在までに、国内国外の専門誌に90例以上の発表を行っている。

 ここで応対してくれたスタッフの方は、多くの機器が老朽化してきており、JICAの援助で新しい機器を入れて貰えないだろうか、ということであった。

i 放射線療法科

 スタッフは教授1名、準教授2名。1988年8月から診療を開始している。リネアック(linear accelerator)、high-dose-rate brachytherapy unit、CTに基づく治療計画、シミュレーター等の設備を有している。乳癌、脳脊髄腫瘍、消化器癌、肝胆癌、秘尿生殖器癌、リンパ腫等の悪性腫瘍の患者に対する包括的な放射線療法及び化学療法を行っている。子宮頚癌と頭頚部癌の患者も取り扱っている。他院からの紹介患者も受け入れており、これが全患者のほぼ40%を占める。当科で取り扱っている主な悪性腫瘍は頭頚部(18%)、消化器(16%)、婦人科(15%)、泌尿器(12%)、乳癌(11%)、リンパ腫(11%)である。90~91年には新患及び入院はそれぞれ198人と63人であったが、93~94年には682人と263人に増え、現在はそれぞれ1000人内外になっており、これが既存の施設の最適数となっている。外来は月~金開かれている。

 MD課程は1992年から、PhD課程は95年から行われている。

 当科で行った研究としては、まず食道癌に対する大量腔内照射療法があげられる。またインド政府エロクトロニックス局からの委託研究として、三次元治療計画システムの開発も行った。乳癌の治療におけるインターフェロンの役割についても他の機関と協力して研究を行っている。

j 麻酔科

 スタッフは教授1名、準教授4名、助教授3名(1名は非医師)。さらにシニアレジデントが常時20人ほどいる。腎移植、冠動脈バイパス、心臓弁置換、先天性心疾患の矯正、門脈圧亢進症と食道手術、頭蓋内及び脊椎手術、脳血管顕微鏡下手術、甲状腺、副腎及び内分泌部膵臓疾患の手術等の特殊な手術を受ける患者の麻酔を行っている。また、12床の外科ICUも担当している。さらに病院の放射線科、放射線療法科、心カテーテル室等の他の分野に対して、麻酔及び心肺蘇生術の支援も行っており、さらに術後患者の疼痛緩和の施療や難治性疼痛の患者のためのペインクリニックも開いている。なお、当院において、麻酔関連の疾病、死亡率は極めて低く、世界でも最高の水準を行っている。肺機能検査、呼吸療法、麻酔前クリニック等も行っている。

 1994年7月から神経科麻酔及び心臓科麻酔特別講習を行い、履修者には証明書を発行している。麻酔学の継続教育も行っており、93年4月にはインド麻酔学会ウッタル・プラデシュ州支部の第15回年次総会を主催した。スタッフは種々な国際、国内学会において講義、パネルディスカッションを行い、座長を勤めたりしている。

 これまで種々な国際、国内学会で50以上の研究発表を行っており、主な研究領域は呼吸療法、急性及び難治性疼痛の緩和、除去、救命救急医療、臨床薬理学等である。

k 輸血医学科(Transfusion Medicine Dept.

 スタッフは助教授2名。当研究所病院で治療を受けている患者に血液及び血液製剤(濃厚赤血球、血小板、新鮮血漿、cryoprecipitates冷却沈殿産物等)を提供している。さらに当科には、血漿濾過療法(therapeutic plasmapheresis)並びに自己免疫溶血性貧血、突発性夜間ヘモグロビン血症及び輸血反応の診断のための機器がある。当科は自発的献血者、交換献血者のみに依存しており、有料献血者や職業的献血者は受け付けていない。さらに研究所は外部からの血液及び血液製剤は当院の入院患者には用いない方針である。なお、献血受付は月~金は午前9時~午後4時、土は午後1時までである。当科は1989年1月に開設された。開設以来全ての血液は種々な感染症のマーカーのスクリーニングをしている。これまで5万人以上の献血者のスクリーニングをしてきたが、HIVポジティブは皆無であった。全国のHIV陽性率は7/1,000以上であるから、これは当科の厳しい献血者選定基準がいかに有効かということを示している。増大する血液需要を満たすために、当科ではラクノウその他州内各所で献血運動を行っており、これまで述べ10万人以上の自発的献血があり、約6万単位の濃厚赤血球と7万の血液製剤を種々な専門科に供給している。緊急時には、ラクノウ市内の部隊病院、司令部病院、キングジョージ医科大学病院、それにバラナシ市の医科学研究所にも血液を供給している。

 当科は輸血医学のMD博士課程をこの国で最初に開講している。PhD課程もまた開いている。当科はこの分野における人材育成期間として国から認定されている。WHOにより東南アジアの人材育成センターとしても認証されている。

 当科の主な研究としては、輸血に伴う感染症の新しい検査法の開発、腎移植患者の血液療法、血小板注入療法等がある。種々な国内、国外専門誌に10例以上研究発表を行っている。

l 病理学科

 スタッフは主任ともう1人の教授2名、準教授1名(非医師)、助教授5名(1人は非医師)。組織病理、細胞病理検査を行っている。冷凍切片検査もまた行っている。自動血液検査、血液化学分析装置を有している。走査及び通過電顕そして免疫組織化学の装置も有している。当科は1987年10月に開設され、大学院病院の種々な超専門科の外来、入院患者のため、140以上の主要機器を駆使して最新の検査サービスを1日に2,000件以上行っている。剖検も行っている。

 MD博士課程が開設され、常時数人のシニアレジデントがいる。科内セミナーや抄読会の他に、種々な高度専門科の卒後研究生を対象とした講義も行っている。

 これまで国内、国外の専門誌に70例以上の発表を行っており、常時20例内外の研究を行っている。主なる研究分野は移植病理、慢性肝疾患、内分泌病理、免疫血液学的悪性疾患と血小板性疾患、電顕診断等である。

m 微生物学科

 スタッフは教授1名、準教授1名、助教授2名。細菌(好気性、嫌気性)、マイコバクテリア、ビールス、真菌、寄生虫疾患の検査を行っている。ヘリコバクター等の培養困難な細菌の培養設備、AIDS関連疾患の診断機器を有している。BACTECによる細菌及びマイコバクテリア、液体クロマトグラフィーによる嫌気性感染の迅速検査装置も有している。結核、TORCH症候群、アメバー性疾患、水性嚢胞疾患、システィセルコーシス等の血清学的検査も行っている。当科の開設は1988年である。上記の検査業務の他に、当院の種々なハイリスク部門、即ち移植部、ICU(内科、外科)、透析室、手術室、その他院内水道、空気、環境等の経常監視を行っている。

 PhD課程は1991年、MD課程は94年に開講されている。他科のDM、McH研究生も当科で研修を受けている。科としても独自の講義、セミナー、検討会、抄読会等を行っている。(注:MDとDM課程は別のものである。)

 研究も数多く行われており、国内、国外の専門誌に発表されているが、主なる研究対象はサイトメガロビールス、キャムピロバクター、ヘリコバクター感染、ジアルディア感染症、結核、パルボビールスB19等である。

n 遺伝病学科(Department of Medical Genetics

 スタッフは教授1名、準教授2名(非医師)、助教授2名(1人は非医師)。血色素異常(サラセミア等)、出血傾向(血友病等)、遺伝性症候群、頭蓋骨形成異常及び先天性代謝異常等の患者の診療を行っている。遺伝相談、胎児診断、胎児剖検も行う。種々な細胞診並びに免疫源性、分子遺伝性、生科学異常の遺伝学的検査を行う。外来は月火。当科は、研究所の第1フェーズの6つの超専門科の中の1つで、未来への投資として選ばれ(教授は当時の研究所長)、1986年1月に開設されている。

 当科では、遺伝病学のDM博士課程を1990年に開講しているが、これは全国で唯一のものである。内科、小児科、産婦人科の研修修了者を対象にしている。PhD課程は89年に開講されている。

 研究発表は極めて多く、多彩であるが、主なる研究分野は臨床遺伝学、分子遺伝学、胎児医学である。

o 臨床免疫学科

 スタッフは教授2名、準教授3名(2人は非医師)、助教授2名。SLEのような全身性自己免疫疾患、皮膚硬化症、関節リューマチ、血管炎、免疫不全疾患、それからリンパ腫、白血病、骨髄腫等の悪性疾患、溶血性貧血、ITP等の免疫血液学的疾患の患者の治療を行っている。外来日は月火。30床の病棟がある。当科は1986年1月に開設され、フルに機能し始めたのは翌年からであるが、全国唯一のもので、この新興領域のパイオニアたらんとしている。

 DM課程は1989年、PhD課程はその翌年から開始されている。

 研究は盛んで、主なる対象は、感染症への免疫応答、免疫応答の遺伝的規制、自己免疫疾患の発生病理、免疫変容物質の探索と評価、免疫悪性疾患の生化学的基礎等である。

p 内分泌内科

 スタッフは準教授2名(1人は非医師)、助教授2名(1人は小児科)。甲状腺、下垂体、副腎等の疾患、糖尿病、成長及び精巣異常、フッ素症や骨粗鬆症のような代謝性骨異常の患者の治療を行っている。甲状腺、副甲状腺、下垂体、副腎、精巣ホルモン並びにインシュリンの検査、診断を行っている。火曜日には糖尿病クリニックを開いて、患者とその家族に対して糖尿病教育を行っている。小児内分泌疾患の診療も行っている。外来は月、火(糖尿病)、水、木。30床の入院施設がある。当科は研究所の第1フェーズで需要に基づいた投資として1986年1月に開設されている。

 PhD課程が1989年、DM課程が91年に開講されている。

 研究は極めて盛んであり、主対象は分子内分泌学、風土病的フッ素症、特にインド特有の糖尿病の特徴、鉄欠乏と甲状腺機能低下症と脳発達の関連、成長異常等である。

q 内分泌外科

 スタッフは助教授2名。甲状腺、副甲状腺、副腎、睾丸(不妊)、膵臓(内分泌)、乳房及び唾液腺の手術を行っている。手術を必要とする重症筋無力症の患者も取り扱っている。火曜日には乳房クリニックを開き、良性乳房疾患及び癌の患者の総合的診療を行っている。火曜日にはまた糖尿病足ケアクリニックも開いている。乳房、甲状腺その他の組織のホルモン受容体の測定、診断も行っている。外来は月火。これはこの種の専門科としてはマドラス医科大学に次ぐ全国2番目のもので、89年9月に開設された。しかし、術前術後に必要とされる内分泌内科医の協力、ホルモン定量の高度な機器等が一つ屋根の下にあるものとしては、全国唯一のものである。

 シニアレジデントに対して通常の研修を行っている。

 研究対象としては、途上国における甲状腺手術患者の入院短縮の可能性、風土病地域における甲状腺分化癌の生物学的態様、無症候性原発性副甲状腺機能亢進症の発生率、男性不妊で超音波によって発見された性索静脈瘤癌の結さつの結果、内分泌外科における術間超音波の有用性等である。

r 消化器内科

 スタッフは教授1名、準教授2名、助教授2名(1人は小児科)。上部及び下部消化管内視鏡、内視鏡超音波、ERCP、十二指腸胆汁分析、圧及びpH.モニターリング、胆石分析、並びに肝炎の血清学的検査等の検査、そして食道静脈瘤の内視鏡的硬化療法と結さつ、食道拡大術、ポリプ切除、異物除去、総胆管(CBD)結石の内視鏡による処置、内視鏡による胆管ステント等の治療も行っている。上部及び下部消化管出血、慢性肝疾患及び肝不全の患者の診療も行っている。小児消化器疾患の診療も行っている。外来は月水金。30の入院病床がある。1987年に開設。

 1989年にDM課程、91年にPhD課程が開始されている。地域の医師に対してワークショップ等の活発な継続教育も行っている。

 主要な研究項目はE型肝炎、慢性肝疾患、胆石疾患、アメーバー症で、これらから国内、国外の専門誌に多数の発表がなされている。当科はカンプールにおける世界最大のE型肝炎の流行の調査を担当しているが、その患者数は79,000人に上っている。

s 消化器外科

 スタッフは教授1名、準教授2名、助教授1名。侵襲性の極度に少ない外科(腹腔鏡による胆石除去)、胆切、食道及び膵臓の手術(部分切除やバイパス)、門脈圧亢進症の手術(シャントや血管廃絶)、胆嚢癌の切除又は緩和手術、直腸癌の括約筋温存手術、潰瘍性大腸炎の回腸-袋・肛門吻合並びにその他の主要な胃腸手術を行っている。他所で行われた手術の合併症、例えば胆石除去手術後の胆管傷害(管外婁や胆管狭窄)や皮内婁も取り扱っている。外来は月水金。1988年12月小規模な科として開設されたが、現在では国内最新鋭の超専門科の一つとして確立されており、あらゆる消化器疾患に対して総合的外科治療を行っている。

 全国的な規模でこの超専門科のMCh課程を開講したのは当科が国内では最初である。研修カリキュラムには、膨大且つ詳細な授業科目があり、必須研究、自立的に決定すること、手術経験等に力点が置かれている。継続教育にも力を入れており、毎年ワークショップが開かれ、全国から参加している。

 研究対象は多彩で、その中から主なものを挙げると、胆嚢癌、胆嚢温存、胆管腸吻合、胸腔内胃の機能評価、非脾臓シャントなどがあるが、これらから、現在までに100以上の論文が国内、国外の専門誌に発表され、また学会発表も同様に多い。

4 非診療科部門

 上記の診療科以外にも機器修理部門を訪れ、技師たちから若干の聞き取りをおこなった。病院のコンピューター化の現状も視察した。


III 評価

A 評価5項目(パラメーター)に基づく評価

1 実施の効率性(efficiency

 投入は大部分がウッタル・プラデシュ州によるものであり、これにJICAの33.2億円の無償援助による機材投入と7年間のプロジェクト方式技術協力プロジェクト(機材投入分2.6億円を含む)による投入が加わる。州政府は1982年に第一期計画(三期の中)の当初分として14.4億万ルピー(約300億円)を計上、94年までの予算総額は19.6億ルピー(約410億円)が確定、第一期の終了までにはさらに12.5億ルピー、総計32.1億ルピー(約663億円)が見積もられている。上記の19.6億ルピーにはJICAの無償分3.7億ルピーが含まれており、当時の州自体の機材購入費4.0億ルピーであった。州側の人的投入、JICAの人的投入を考慮すれば、全体の投入の10%内外がJICAの寄与分と考えられる。しかし成果はこの様に単純化することは不可能である。あえて言うとすれば、日本からの高度先進機器の投入と専門家の投入がなければ、このような短期間に、インドではAll India Medical Instituteと1、2位を争うような高度研究機関にはなれなかった筈である。日本側の投入の質を考えれば、金銭で表わされたものより寄与度は高い筈である。

2 目標達成度(effectiveness

 プロジェクトの目標は研究と特殊医療の促進と、これに要する高度先進医療機器の運用に要される技術の移転であった。現状から判断してこれは十分に達成されていると言えるだろう。

3 インパクト(impact

 プロジェクトが実施されたことによる波及効果(impact)については、サンジャイ・ガンジー医科学研究所設立の基本理念、技協プロジェクトの目標に基づき、三つの観点から考えることにする。但し、無償機材贈与から12~3年、技協プロプロ終了からほぼ2年を経た1999年5月の時点におけるインパクト評価であり、インパクトが全て出尽くすにはまだ時間がかかる筈である。

  1. 診療活動のインパクト
     対象疾患は一般に発生頻度の低い疾患であり、社会全般にわたる直接的なインパクトは考え難い。対象疾患の罹患者であっても、レファレル患者としてこちらまでたどり着くまでには一応の経済力を必要としよう。ウッタル・プラデシュ州1億8千万住民の大部分に対しては、医療資源が大量にこの様な使われかたをすることで、一般診療の面ではマイナスのインパクトとが考えられる。
  2. 人材育成に関するインパクト
     概して保健医療の人材育成の成果のインパクトが感じられるようになるには、かなりの期間を要する。現在のところ、プロジェクトの波及効果と言えるほどのインパクトは考えられない。育成される人材に数の上で限りがある上に、高度医療分野が中心であるということがさらに波及効果が出にくい要因となっている。育成された人材が、自分の能力を発揮するのにインドの医療環境に満足せず、先進国に移出するとすれば、そのインパクトは大きくはない。
  3. 研究に関するインパクト
     ある研究の成果が、医療面に、そして社会的、経済的に大きなインパクトを与えたことはあったし、これからもあるだろう。しかし、このプロジェクトが促進した研究の結果が及ぼすインパクトは、今のところ、日本のODAの理念の観点から見る限り感じられない。インパクトが生じるには、まだ長いタイムスパンが必要かもしれないが、インパクトが生じても、研究対象が発生頻度の低い特殊疾患であれば、極めて限られたものになる可能性がある。

4 妥当性(relevance

 サンジャイ・ガンジー医科学大学院は、高度専門分野のみを対象とした医学の超最高学府を目指している。本来キング・ジョージ医科大学(KGMC)の大学院として構想されていたが、これを避け、内科、外科、小児科、産婦人科等の通常の専門科も省き、臨床面からではなく、研究面から重視される特殊専門分野のみを対象にした超最高学府なのである。建物に例えれば、超高床式建造物で、高さでは先進国の高層ビルに劣らない。周囲には壁が張り巡らされており、正門にはバリケードの用意がしてあり、守衛による検問があって、アクセスが制限されている。これは、極めてユニークな発想で、途上国の医科学のレベルを一挙に先進国レベルに持っていく試みなのである。そして成功しつつある。日米の医療、医育、研究機関を参考に評価すると、サンジャイ・ガンジー医科学大学院病院は、患者サービス、教育研修、研究活動について5段階評価で文句無しに4であり、5に限りなく近い。All India Medical Instituteを追い越して、インドにおける医科学の孤高の超最高学府になろうとしている。しかし、ここでは、その試みの妥当性を検討しなければならない。これには日本のODAを支える納税者の視点も入れなければならない。

 ウッタル・プラデシュ(UP)州は人口1億8千万人と言われている。評価現地作業中の99年4月7日(WHOの創立を記念して世界保健デーと呼ばれる)付けのTHE TIMES OF INDIA紙一面のIll-health Plagues Health Services(病める保健医療)と題した記事によると、UP州には都市部に314のCommounity Health Centerがあり、州全体に3,897のPrimary Health Center、州都ラクナウにはキング・ジョージ医科大学病院、シャムプラサド・ムケルジー市民病院、バルラムプル病院等の州立総合病院があるが、医療状況は最悪である。その一例として、キング・ジョージ医科大学病院を腹痛のため訪れた近在の農民が、何時間も相手にされずに放置されている状況が写真入りで記事になっていた。このようなUP州の医療状況は、サンジャイ・ガンジー医科学大学院構想の妥当性を減じる作用をする。

 保健・医療分野における無償資金協力の実施にあたっては、多くの人々に基礎的な保健医療サービスを提供することを目指す「プライマリー・ヘルス・ケア」の視点が重視されるべきものであり、高度専門分野を中心とした同大学院に対し機材供与を行ったことに対する妥当性という点で個人的には疑問が残る。

5 自立発展性(sustainability

 UP州政府は、法制的にも財政的にもこの医科学大学院の将来にわたる発展に深くコミットしており、州行政府の最高責任者(First Secretary)が医科大学の総裁(President)を兼務している。それからUP州政府のインプットにJICAの無償、プロ技が加わったこの壮大なる事業の最大の受益者は同医科大学院の教授以下の教授陣、研究者であり、彼らは、この自立発展性に努力することに、最高のインセンティブを有している。


終わりに

 調査の最終日の晩、バンダリ総長以下教授陣の方々が、ホテルで送別会を催してくれた。多くのプロフェッサーと言葉を交わしたが、殆どが真面目な研究者タイプの方であった。答礼のスピーチで「先生方の業績の高いレベルには深く感銘した。ただ、悪いニュースとして、このようなレベルの高さでは、もうJICAの協力の対象にはなれないだろう」と申し上げると、「いや、我々の欲しいのはモノやカネではなく、学問的交流なのだ」という声があっちこっちから上がった。日印双方の関係者の皆様のご協力に感謝します。


インド国サンジャイ・ガンジー医科学研究所有識者評価資料一覧

  1. 有識者評価マニュアル、外務省経済協力局評価室、平成8(1996)年3月
  2. 経済協力評価報告書、外務省経済協力局、平成10(1998)年6月
  3. 第142回国会衆議院予算委員会議事録第15号
  4. 在インド日本大使館からの資料

    • (1)インド概況、1999年1月
    • (2)数字とグラフで見るインド経済、1999年2月
    • (3)1998年度エコノミック・サーベイの概要、平成11(1999)年2月25日
    • (4)1999年度インド政府予算の概要、平成11(1999)年3月1日
    • (5)第9次五ヶ年計画(1997~2002)について、1999年3月31日
  5. インド国サンジャイ・ガンジー医学研究所医療機材整備計画基本設計調査報告書、国際協力事業団、昭和61(1986)年8月
  6. 業務報告書、松尾剛、医療機器保守管理、平成10(1998)年4月10日~7月10日
  7. A List of Biomedical Equipments/Instruments in S.G.P.I.M.S. as of 1997, compiled by Biomedical Engineering Department, Sanjay Gandhi Institute of Medical Sciences, Lucknow
  8. インド サンジャイ・ガンジー医科学研究所プロジェクト事前調査団報告書、国際協力事業団医療協力部、昭和63(1988)年11月
  9. インド国サンジャイ・ガンジー医科学研究所プロジェクト長期調査員報告書、実施協議調査団報告書、国際協力事業団医療協力部、1990年2月
  10. サンジャイ・ガンジー ファローアップ調査報告書(未定稿)、1993年1月28日現在
  11. インド サンジャイ・ガンジー医科学研究所プロジェクト終了時評価報告書、国際協力事業団医療協力部、平成6(1994)年12月
  12. プロジェクト総合報告書、清水正一、医療機器保守・管理、平成8(1996)年7月25日~平成9(1997)年7月31日
  13. サンジャイ・ガンジー医科学研究所プロジェクト終了時評価調査団帰国報告資料、国際協力事業団医療協力部医療協力第一課、1997年4月28日
  14. 総合報告書、小原克美、業務調整、平成7(1995)年7月13日~9(1997)年7月31日
  15. プロジェクト総合報告書、星野晃、リーダー、平成7(1995)年7月13日~25日、平成7(1995)年11月2日~12月1日、平成8(1996)年1月4日~30日、平成8(1996)年5月7日~9(1997)年7月31日
  16. Annual Report, 1996-97, Sanjay Gandhi Postgraduate Institute of Medical Sciences, Lucknow, India
  17. Annual Report, 1997-98
  18. Staff Position in SGPGI, signed by Jai Shanker Prasad, Admin Officer, Apr 8, 1999
  19. List of students who have been awarded the degrees
  20. Statement of income & expenditure, Harendra Kumar, Accounts Officer, 7-4-99
  21. List of JICA Bio-Medical Equipments in Research Block, 8-4-99
  22. Functional status of biomedical eqipments (JICA), 8-4-99
  23. Medical education system in Uttar Pradesh, India

    • (1)Laws and Reguaitons
    • (2)Proposals for Ninth Five Year Plan
    • (3)Proposal for a Health University in U.P.
    • (4)Proposal for Epidemiology Units in Medical Colleges, Ayurvedic Unani as well as Homeopathic Colleges in the State
    • (5)Scheme for Cultivation of Medicinal Plants at State Ayurvedic and Unani Pharmacies, Colleges and Dispensaries and their use in Producing ISM Drugs
    • (6)Medical Colleges in Private Sector
    • (7)Status Paper for IX Plan
  24. Sanjay Gandhi Post-Graduate Institute of Medical Sciences, The First Decade
  25. SGPGIMS, an Introductory Brochure
  26. SGPGI Newsletters

    • (1)July-Sep, 1997
    • (2)Oct-Dec, 1997
    • (3)Jan-Mar, 1998
    • (4)Apr-June, 1998
    • (5)July-Dec, 1998
  27. Comparative Statement for the Year '98 vs corresponding Year '97
  28. Data collected at the Departments:

    • (1)Urology & Nephrology

      • (a)Renal Transplants performed at SGPGIMS and other statistics
      • (b)List of Papers Published (61 titles)
    • (2)Neurology: A brief description of the Department
    • (3)Neurosurgery: Comparison of vasodilatory effect of carbon dioxide inhalation ad intravenous acetazolamide on brain vasculature using positron emission tomography, S. Gambhir et al.
    • (4)Cardiology

      • (a)Statistical data such as the number of echocardiography performed.
      • (b)Information regarding JICA equipment
    • (5)Cardiovascular & Thoracic Surgery

      • (a)Open Heart Surgery in Last Ten Years and other statistics
      • (b)List of Equipment (JICA)
    • (6)Nuclear Medicine: Fluorine-18 fluoro-2-deoxyglucose positron emission
        Tomography in recurrent rectal cancer : relation to tumour size and cellularity
    • (7)Radiodiagnosis

      • (a)Status of Machines
      • (b)Brief Review-1997
    • (8)Radiotherapy

      • (a)10 Years of the Department of Radiotherapy, 1987-1997
      • (b)Radiation Surface Doses to Patients and Staff during Positron Emission Tomography, A.K.Shukla et al, Radiation Medicine Vol.12 No.2
    • (9)Transfusion Medicine: Proposal for City Service Center of the Department of Transfusion Medicine
    • (10)10 Pathology

      • (a)AnnualReport, April 1997-March 1998
      • (b)Academic Program from January to May 1999
      • (c)List of publications since 1989 (102 titles)
    • (11)Microbiology

      • (a)Equipment List of JICA
      • (b)Dhole TN, et al, Genotypic Variations in Wild Type I Poliovirus Strains Isolated from Lucknow, India
    • (12)Genetics

      • (a)Description of the Department
      • (b)Annual Report, 01.04.97 to 31.03.98
    • (13)Medical Endocrinology

      • (a)Annual Report 1997-98
      • (b)Naibedya Chattopadhyay et al, Differential Expression of alpha-and beta-Thyroid Hormone Receptor Genes in the Developing Rat Brain under Hypothyroidism
    • (14)Surgical Endocrinology

      • (a)Detailed Report on JICA Assistance, March 1997
      • (b)Report submitted to JICA Project Evaluation Team
      • (c)3rd Postgraduate Course in Endocrine Surgery,Indo-Japanese Workshop on Thyroid Cancer, 22nd-24th May 1997
      • (d)Proceedings of 3rd Annual Conference of Indian Association of Endocrine Surgeons, December 11-13, 1997, SGPIMS, Lucknow
      • (e)Saroj K. Mishra ed., A Monograph on Thyroid Cancer

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