「1990年代の開発協力」(DAC 1989年12月)
人口増加、貧困、栄養不良、文盲および環境劣化が結びついた、<低開発の悪循環>を断ち切ることこそ、1990年代における開発協力の中心課題である。
開発途上国自身が、自らの開発について究極的な責任を負う。特に、開発途上国の政策および制度の有効性が自らの開発の成功および不成功並びに来るべき自立の達成にとって枢要である。外部からの援助は開発途上国自身の開発努力を補完しうるにすぎない。
「政府開発援助大綱」(日本政府 1992年6月)
開発途上国の離陸へ向けての自助努力を支援することを基本とし、広範な人造り、国内の諸制度を含むインフラストラクチャー(経済社会基盤)および基礎生活分野の整備等を通じて、これらの国における資源配分の効率と公正や「良い統治」の確保を図り、そのうえに健全な経済発展を実現することを目的として、政府開発援助を実施する。
重点事項:
「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」(1995年3月 コペンハーゲン)
10目標の達成に向けて誠実に努力することを各国首脳が「誓約」。
「新たな世界的状況の中での開発パートナーシップ」(1995年5月、OECD・DAC)
<貧困の根絶が中心的な課題である>として、最も貧しい人々の機会の拡大と生活の改善に資するような戦略や計画に重点をおいた支援を行う。
以下の諸目標を重点的に追求する。
「21世紀に向けて:開発協力を通じた貢献」(DAC新開発戦略)(1996年5月、DAC)
I章、囲み記事参照
「21世紀に向けたアフリカ開発 東京行動計画」
(1998年10月、第2回アフリカ開発会議(TICAD II) 東京)
貧困削減が主題のひとつとされ、また開発途上国の主体性(Ownership)およびグローバル・パートナーシップが基本原則とされた。
行動計画、
民主主義および良い統治が開発の基盤とされ、良い統治の具体的な目標および目的として、
行動のためのガイドラインとして、
UNDP
UNDPは、1990年より、いち早くカンボジアに対する支援活動を再開し、今日に至るまでカンボジア支援におけるメジャー・プレーヤーとして重要な役割を果たしている。例えば、UNDPは、United Nations Resident Coordinator Systemに基づき、カンボジアで活動する国連諸機関や世界銀行とIMFとの間の月例会議を主催している。同会議において、UNDPは、コーディネーターとして、相互間の連絡・調整を図っている。UNDPのカンボジア支援に対する基本戦略は、「カンボジアが持続可能な人間開発を達成するために必要とされる能力の確保・獲得を支援する」ことに重点が置かれている。具体的には、国民の40%以上が貧困ライン以下の生活をしているとされるカンボジアにおける貧困、とりわけ国民の85パーセントが生活している農村における貧困の緩和・軽減を主要課題としている。すなわちUNDPは、貧困をターゲットとし、貧困削減に向けた能力開発(Capacity Development)を目指して、以下の4分野を重点的な活動領域と位置づけている。(1)地方における社会・経済開発の促進:地方分権の促進による貧困の軽減、農民に対する小規模融資、農民による農村インフラストラクチャーの整備(Food for Work Employment)。(2)マクロ経済の管理能力およびガバナンスの強化:社会・経済状況に関する基礎的データの作成、行政改革、金融・財政改革、援助の管理・調整能力の向上、ASEANへの加盟準備、平和・人権教育。(3)社会セクターの開発:教育分野における能力開発(教師や公務員の訓練)、貧困緩和のための職業訓練、保健分野の改革。(4)環境保全および天然資源の管理能力強化:各事業実施官庁の行政能力の向上、トンレサップ湖周辺地域の持続可能な開発促進、持続可能な森林管理。(UNDP, Cambodia 1997, Annual Report)。
世界銀行
1992年、22年ぶりにカンボジアに対して、世界銀行は、全面的な支援を再開した。その活動は、当初は、カンボジア国内秩序の安定・復旧を目的とするものであった。しかしほどなくして世界銀行は、援助の重点を、長期的な視点からの開発支援へと移行させていった。それは、「持続可能な開発の促進、および貧困軽減の可及的速やかな達成支援」を目標とするものであった。世界銀行は、それを実現するための前提条件として、カンボジア政府に対し、政治的安定の確保と秩序の維持、良い統治の実現、政府(政策過程)における透明性の確保、構造改革の継続的実施、軍隊の動員解除、天然資源の合理的管理等を強く求めている。
IMF
1995年9月、IMFは、カンボジア政府のマクロ経済・構造調整プログラムに対する経済的支援として、拡大構造調整ファシリティ(ESAF)による第2次融資(約4,100万ドル)を承認した(カンボジアのIMF加盟は、69年12月)。その際、IMFは融資の条件として、財政部門、公共サービス部門、軍事、公営企業における構造改革の推進、および公務員の削減による抜本的な行政改革の実現を強く求めた。さらにIMFは、カンボジア政府による貧困評価プログラムの策定、および森林資源の(環境に配慮した)合理的な管理にも言及した(
1996年後半から97年にかけて、IMFは、すでに承認していた拡大構造調整ファシリティに基づく対カンボジア融資を延期、キャンセルした。さらに97年央には、IMFは、カンボジアに対する融資協定を正式に破棄し、プノンペン事務所を閉鎖した。IMFの、こうした一連の行動は、融資に際してIMFが設定したコンディショナリティをカンボジア政府が誠実に履行しなかったからである。すなわち、木材輸出収入の国庫への納入、外国直接投資法の公正な適用、軍隊の動員解除、公務員の削減等、融資を受けるにあたり合意した経済構造の改革を、カンボジア政府が実行しなかったからである。
EU(欧州委員会)
EUは地雷撤去等、内戦時代の負の遺産の清算に加えて、カンボジアの発展に向けて「カンボジアにおける欧州の復旧プログラム」(The European Rehabilitation Programme in Cambodia, PERC)を展開している。それは、農村開発、初等教育、組織・制度づくり、人権の4本柱から構成されている。農村開発の分野においては、中小灌漑網の整備・改良、零細貧農を対象とする低利による小規模融資制度(マイクロ・クレジット)の展開、農業技術訓練、効率的な農業技術の導入、飲用水の確保等が主要課題とされている。初等教育の分野においては、既存の初等学校のリハビリテーション、人権教育の促進、教師の訓練(質の向上)、さらには教育・青年・スポーツ省の行政能力の向上・強化に重点が置かれている。組織・制度づくりの分野では、アドバイザーを派遣して公務員の訓練を行っている。人権の分野では、司法制度の改革、国会・人権委員会の強化、人権に関する啓蒙活動(ニューズ・レターの作成・配付や公聴会・セミナーの開催等)、教師・ジャーナリストを対象とする人権セミナーの開催等を行っている。EUの基本的スタンスは「外からの革命(Revolution)」ではなく、ステップ・バイ・ステップによる漸進的改良(Evolution)の促進」であり、「忍耐と現実主義」に基づく、積極的手段の積み重ねがモットーとされている。(European Commission-Technical Coordination Office in Phnom Penh, The Kingdom of Cambodia and the European Commission: Investing in the Future, January 1995.)
〔1〕CDC(カンボジア開発評議会)の設立(1993年12月)
新生カンボジア王国発足直後の1993年12月、カンボジア政府は、外国からの援助および民間投資の一元的管理の窓口(Focal Point) として、CDC(Council for the Development of Cambodia)を設立した。それは、CRDB(Cambodian Rehabilitation and Development Board, カンボジア復興開発委員会)およびCIB(Cambodian Investment Board, カンボジア投資委員会)から構成され、政策決定過程における透明性の確保という配慮から、2人の首相(第1・第2首相)の共同管理下に置かれた。
CDC/CRDBは、外国からの援助の調整と管理を包括的に行うことを任務としている。すなわち、外国からの援助資源の動員、カンボジア政府部内における調整・協議、援助機関との調整・協議、国際援助会議の準備・資料作成等が、CDC/CRDBの主たる役割であり、そのための組織として、国際機関(世界銀行・ADB)援助調整課、国連機関援助調整課、日本・アジア・アメリカ・大洋州2国間援助調整課、フランス・ヨーロッパ2国間援助調整課が設けられている。さらに、NGOを対象とするNGO援助調整課も設置されている。
他方、CDC/CIBは、外国からの民間投資に対する受け入れ窓口として設置されたもので、情報・広報課、プロジェクト評価課、総務課から構成されている。ただし、外国からの民間投資の導入はあくまでも将来的な課題である。
〔2〕「カンボジアの復興・開発に関する国家計画(National Programme to Rehabilitate and Develop Cambodia,NPRD)」(1994年3月)
カンボジア政府は、1994年3月、東京で開催される第2回ICORC会合に向けて、「カンボジアの復興・開発に関する国家計画」を策定した。それは、UNDPとADBの支援の下に、カンボジア政府が、93年5月の総選挙後、はじめて構築した中・長期的な包括的国家復興・開発計画であった。
同国家計画は、「平等と社会正義を伴う持続可能な成長」を基本的国家目標として位置付け、(1)行政改革の断行、(2)私企業および市場の重視、(3)2004年までに実質GDPを倍増、(4)全国民を対象とする保健医療、教育および社会サービスの拡充、(5)農村開発の優先的推進、(6)社会的、政治的、財政的、環境的に持続可能な開発の確保、(7)自助努力の強化による、財政的・技術的対外依存の軽減、等を具体的なビジョンとして提示した。そのうえで、ビジョン実現に向けての戦略として、(1)マクロ経済における安定と成長の促進、(2)国家の行政・司法制度の改革、(3)構造調整とセクター改革の断行、(4)持続可能な開発の直接的支援、(5)天然資源の持続可能な最適活用、等を掲げている。さらに、当面の短期的課題として、(1)市場経済の基盤強化、(2)国家の再編成、および能力開発(Capacity Building)による援助吸収能力の向上、(3)セクター・プログラムの開始を指摘している。
〔3〕「行政改革に関する国家計画(National Programme for Administrative Reform, NPAR)」(1994年12月)
カンボジア政府は、1994年12月、UNDP・EU・世界銀行の支援の下に、「行政改革に関する国家計画」を策定し、行政機構の抜本的改革に着手する決意を明らかにした(NPARは、95年3月の第3回ICORC会合に提出された)。同国家計画は、閣僚会議の直接的監督下に置かれ、実際の執行は、「行政改革のための省庁間委員会」(Inter-ministerial Committee for Administrative Reform, CITRA)に委ねられた。それは、行政改革にかけるカンボジア政府の熱意をアピールするものであった。
NPARは、行政改革の具体的な課題として、次の5つの目標を掲げた。それらは、(1)政府機構の組織整備と法的整備、(2)現業省庁の管理能力強化、(3)公務員数の大幅削減(IMFの強力な要請による)、(4)公務員の人材育成(英語やコンピューターの訓練)、(5)分権化による地方行政の強化等であった。
〔4〕「NPRDの実施(Implementing the NPRD, INPRD)」(1995年3月)
カンボジア政府は、1995年3月、パリで開催される第3回ICORC会合に向けて、前年策定したNPRD実現のための、具体的な行動計画を策定した。それは、CDC/CRDBが、UNDPの支援の下に、多方面にわたる協議(国際機関やNGOも含む)の末に作成した原案に基づくものであった。
INPRDでは、NPRDにおいて掲げられた目標の達成に向けて、(1)持続可能な経済成長、(2)持続可能な人間開発、(3)天然資源の持続可能な管理と活用、等をカンボジア政府の開発計画における3本柱とすることが謳われた。ついで、(1)経済再編成、(2)行政改革、(3)農村経済開発、(4)人間への投資、(5)物理的インフラストラクチャーの再建、(6)持続可能な成長支援が改めて目標として確認された。さらに、農村開発、人的資源開発、および農業政策との関連で、NGOの果たす役割が強調された。
〔5〕「第1次社会経済開発計画(First Socioeconomic Development Plan, 1996-2000, SEDP)」(1996年2月)
計画省は、1996年2月、ADBの支援の下に、カンボジア政府諸機関を総動員して、「第1次社会経済開発計画」をとりまとめた(政府による正式承認は、同年4月)。それは、UNICEF等の国際機関による、各事業実施官庁に対するさまざまな支援の賜物であった。
同開発計画は、カンボジア政府にとっては初めての5カ年計画であり、NPRDやINPRDにおいて展開された議論を、さらに掘り下げ、その実現へ向けて、具体的な方策を提示するものであった。またそれは、計画省・国立統計研究所が、UNDPおよびADBの支援の下に、初めて本格的に実施した「カンボジアの社会・経済調査 1993/94」(Socio-Economic Survey of Cambodia 1993/94) 報告を基礎とするものであった。
同開発計画においては、「カンボジアの社会経済問題の根幹を形成しているのは貧困問題であり、貧困の軽減、ひいては撲滅こそ、カンボジア政府にとって、最も重要な長期的課題である」と、貧困を標的とすることが再確認された。そのうえで、貧困の緩和と密接に関連するテーマとして、(1)雇用と貧困、(2)社会的弱者(女性や子供)を対象とする社会復興・開発プログラム、(3)農村開発、(4)環境および天然資源の管理、(5)行政改革等が検討された。
さらに注目に値するのは、同開発計画において、NGOの問題、およびカンボジアの援助吸収能力の問題が本格的に取り上げられた点である。すなわち、NGOに関しては、農村金融におけるNGOの貢献、さらには、NGOが、(1)民衆のニーズの把握と政策への反映、(2)プロジェクトの実施(管理・運営)、(3)プロジェクトに関わる諸プレーヤー間の相互理解と対話の促進、等において大きな貢献をなしうる点が指摘された。またカンボジアの援助吸収能力(Absorptive Capacity)に関しては、克服すべき課題(弱点)として、以下の4点が指摘された。(1)脆弱な財政基盤、(2)行政能力の欠如、(3)市場経済の活性化に不適切な環境、(4)膨大な余剰公務員の存在。
このように、SEDPは、新生カンボジア王国の発足以来、短期間のうちに、着実に積み重ねられてきた国家再生への営みを、「理念から実践」へと大きく飛躍させようとするものである。その限りにおいては、SEDPの意義を高く評価することができる。
〔6〕「公共投資計画 1996-1998(Public Investment Programme 1996-1998, PIP)」(1996年4月)
カンボジア閣僚会議は、1996年4月、「公共投資計画 1996-1998」を承認した。同投資計画は、96年7月、東京で開催される第1回CG会合に向けて、ADBの支援の下で計画省が作成したもので、96年~98年の3年間にわたる、公共投資の基本的ガイドラインを提示するものであった。そこでは、向こう3年間の緊急開発課題として、(1)都市から農村への開発努力のシフト、(2)民間セクターの開発に不可欠なインフラストラクチャーの整備、(3)行政改革の3点が強調された。
さらにPIPは、各事業実施官庁に対して、プロジェクトの適切な選定、およびプロジェクトの運営・管理(プロジェクトの確認、分析、コスト評価と財務計画、実施計画とモニタリング)に関する基本的指針を提示するものでもあった。すなわち、同投資計画は、「各事業実施官庁が、カンボジア政府の基本的開発戦略に合致するかたちで、個々のプロジェクトを実施できるようにするメカニズム(Management Tool)」としての役割を担うものでもあった。
〔7〕「開発協力報告書 1995/1996(Development Cooperation Report 1995/1996, DCR)」(1996年5月)
CDC/CRDBは、1996年5月、「開発協力報告書 1995/1996」を作成し、プノンペンでのドナーとの会合、さらには東京で開催された第1回CG会合に提出した。それは、過去2回作成された開発協力に関する報告書とは異なり、UNDPによる支援を受けたとはいえ、最終的にはカンボジア政府(CDC/CRDB)が責任をもって作成したものであった。
同報告書では、CDCのデータ・ベースに基づき、カンボジア経済の概況が要約され、次いでカンボジアに対するグローバル・ドナー・コミュニティによる援助が、多角的に検討された。そのうえで、DCRでは、特別の章を設けて、カンボジア政府の援助吸収能力の問題、および援助調整の問題が詳細に取り上げられた。
まず、援助吸収能力の問題を取り上げた章では、グローバル・ドナー・コミュニティの強い懸念を反映して、カンボジア政府としても、この問題に正面から取り組む決意であることが強調され、(1)開発政策を取り巻く政策枠組み(環境)の強化、(2)開発に対するニーズ、および利用可能な資源とを勘案した現実的な政策手段の追求、(3)能力開発(Capacity Development)の推進が謳われた。とりわけ、能力開発に関しては、4大改革(行政機構の改革、軍隊・治安組織の改革、司法組織の改革、国営企業の改革)を断行して、国家としてのカンボジア全体の「組織的エンパワメント」(Organizational Empowerment)を図る決意が披瀝された。なお、援助吸収能力強化との関連で、NGOの果たす役割が強調されたことは特筆に値する。
次いで、援助調整の問題を取り上げた章では、CDCを軸として、(1)NGOを含むグローバル・ドナー・コミュニティ内部における調整、(2)カンボジア政府とグローバル・ドナー・コミュニティとの調整、(3)カンボジア政府と援助国とのバイラテラル・レベルにおける調整、(4)カンボジア政府部内における調整を推進すべき旨が強調された。
〔8〕「カンボジア:政策枠組み文書 1997-99(Cambodia: Policy Framework Paper, 1997-99, PFP)」(1997年3月)
カンボジア政府は、1997年3月、IMF・世界銀行と共同で、97年~99年の3年間にわたる経済政策と構造改革の基本路線を定めた政策枠組み文書を作成した。それは、第1次PFP(94年~96年)を更新し、これまでの成果と今後の課題を明らかにするものであった。すなわち、同枠組み文書においては、財政における透明性の確保や司法改革が大幅に遅れていること、さらには公務員制度の改革や森林資源の管理が深刻な困難に直面していることが率直に認められた。そのうえでPFPは、今後の課題として、カンボジアにおける極度の貧困の軽減や、持続可能かつ平等な成長・発展に向けてさらなる努力を加速する必要性を強調した。とりわけ、同枠組み文書においては、歳入の確保、行政改革の継続、行政における透明性の確保が緊急課題として指摘された。
さらに同枠組み文書は、結論において、(1)カンボジア政府が取り組んでいる改革を成功裡に押し進めるためには、グローバル・ドナー・コミュニティによる技術協力が不可欠である。(2)カンボジア政府も、外国からの技術協力に対する過度の依存を軽減させ、いままで以上に能力開発やローカル・スタッフの育成に精力を注ぐべきである旨が指摘された。
〔9〕「開発協力報告書1996/1997(Development Cooperation Report, 1996/1997)」(1997年5月)
CDC/CRDBは、1997年5月、UNDPの支援の下に、「開発協力報告書 1996/1997」を作成し、プノンペンでのドナーとの会合、さらには、パリで開催された第2回CG会合に提出した。それは、CDCの責任において作成された2度目の開発協力報告書(通算では4度目)であり、基本的スタイルは、前年の報告書を踏襲するものであった。とはいえ、報告書の結論部分が、次のようにカンボジア自身の「主体性」の確保を強調したパラグラフで結ばれたのは注目される。カンボジア政府が、自国の国家建設計画の主役(中心)となり、自助努力をさらに強化すべきである。最終的な問題解決は、カンボジア政府自身の手に委ねられるべきであり、ドナーがなしうるのは、問題解決に向けて漸進的に積み重ねられるさまざまな決定を支援することだけである。
〔10〕「開発協力報告書1997/1998(Development Cooperation Report, 1997/1998)」(1998年6月)
CDC/CRDBは、1998年6月、UNDPの支援の下に、「開発協力報告書 1996/1997」を作成した。同報告書は、次の2点において、従来の開発協力報告書とは大きく異なった。
第1に、NGOに関する節が特別に設けられ、CDCが98年1月~4月に行ったサーベイに基づき、カンボジアで活動するNGOの実態が詳細に議論された。すなわち、97年、NGOは、引き続きカンボジアの復旧と開発に非常に大きな貢献をしているとしたうえで、(1)NGOがさまざまなソースから資金を調達(動員)して活動していること、(2)プロジェクト活動において、NGO自身による自己財源が増大していることが指摘された。
第2に、「資源動員の推進およびその有効活用のための戦略」(Strategies to Boost Resource Mobilization and Improve their Utilization)と題する章が新たに設けられた。そこでは、カンボジア政府ならびにグローバル・ドナー・コミュニティにとって、カンボジアの援助吸収能力を発展させることが、依然として最大の関心事(懸念)である、として、約13ページにわたり、援助吸収能力の向上を阻害しているさまざまな制約条件、およびそれを克服するための政策手段が検討された。
〔11〕第3回CG会合
1999年2月25日~26日、東京で第3回CG会合が開催された。同会合の開催は、二大政党(人民党とFUNCINPEC党)の対立が武力衝突へとエスカレートした97年7月、パリで開催された第2回会合以来、実に1年8カ月ぶりのことであった。
グローバル・ドナー・コミュニティは、1998年7月に行われた総選挙、そして11月のフン・セン新政権の成立を、「民主化へ向けての正しい動き」と一応認定し、「7月事変」以来控えてきたカンボジアに対する支援を、再び本格的に開始することを国際社会に宣言したのであった。この第3回CG会合には、18カ国(オーストラリア、ベルギー、カンボジア、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、イギリス、アメリカ)、およびEU、それに4国際機関(ADB、世界銀行、IMF、UNDP)が正式メンバーとして参加した。また、NGO(CCC等)やオーストリア、イタリア、ポルトガル、スペイン、そしてFAOがオブザーバーとして出席した。こうして国際社会は、カンボジアの復興・開発に対する責任をアピールしたのであった。
2日間の会議では、前2回のCG会合同様、世界銀行の議長の下に、マクロ経済、構造改革および統治に関する課題、森林保全、紛争後の課題、援助調整に関わる課題等につき活発な議論が展開された。議論のたたき台となったのは、会議開催直前の99年1月15日付けで、カンボジア政府が作成・提出した2つの文書であった。
第1の文書は、CDC/CRDBが、UNDPの支援の下に、CG会合のために作成した「カンボジア開発協力報告書 1998/1999」(Development Co-operation Report for Cambodia 1998/1999)である。それは、グローバル・ドナー・コミュニティに対して、カンボジアの経済・社会状況、および国際社会からの援助の現状に関する最新の基礎的データを提示し、カンボジア政府にとっていかに援助が重要な存在であるかをアピールするものであった。
第2の文書は、「社会経済開発-要請と提案」(Socio-Economic Development: Requirements and Proposals)と題するものである。それは開発協力報告書よりもはるかに政治的性格が強い。
同文書ではまず、過去5年間、カンボジアが多くの分野で前進を遂げたことが強調された。それと同時に、カンボジアにおける人的資源の不足、あるいは煩雑な援助手続き等の制約条件により、改革プログラムの実施が困難に直面している現状も指摘した。ついで、カンボジア新政権が、政治・司法・経済・社会・文化の多方面にわたって、断固として改革を遂行する決意である旨が強調され、具体的な改革事項が21項目列挙された。とりわけ、(1)法の支配の定着、(2)商法の制定、(3)歳入の増大と配分、(4)天然資源の管理、(5)行政改革、(6)軍隊の改革の6項目が最優先課題とされた。それは、「成長-援助-改革」を三位一体として位置づけるものであった。そして最後に、グローバル・ドナー・コミュニティに対する支援要請が行われた。
これらの文書を踏まえたうえで、フン・セン首相は、会議冒頭の演説で、以下の諸点を強調した(Opeaning Speech of Samdech Hun Sen, Prime Minister of the Royal Government of Cambodia)。
他方、議長を務めた世界銀行のNgozi Okonjo-Iweala(Country Director of the Southeast Asia and Mongolia at the World Bank)は、冒頭演説において以下の諸点を強調した(Chairman's Opening Remarks)。
2日間にわたる会議の終了に際して世界銀行(議長)のニューズ・リリースは、次のように会議における合意事項、争点を要約した。(World Bank News Release, Cambodia Wins Solid Support from Donors, News Release No. 99/2107/EAP)。
なお日本は、今回のCG会合において、総額120億円(約1億ドル)におよぶ新たな支援(無償資金協力、技術協力)をカンボジアに対して行うことを表明した。その内訳は、(1)退役軍人支援(職業訓練等)、(2)地雷除去・被災者支援、(3)森林保全支援、(4)基礎生活分野(保健医療、教育等)支援、(5)インフラストラクチャー(道路・橋梁等)整備支援から構成されている。カンボジアに対する日本の支援は、第1回CG会合:100億円(プレッジ額全体の18.5%)、第2回CG会合:80億円(同15.5%)、第3回CG会合:120億円(同20%)と一貫してトップ・ドナーを記録している。
また有償資金協力に関しては、「今後の同国の経済開発にとっての重要性に鑑み、同国と国際金融機関との協議状況も念頭に置きつつ、同国唯一の深海港であるシハヌーク・ビル港の緊急リハビリを対象とした支援の可能性を検討する」(外務省経済協力局局編「ODAの動き」、1999年2月26日 第48号)旨が表明された。これにより日本は、1968年以来中断してきた円借款を、31年ぶりに再開する方向へと動き始めた。
1.カンボジア地雷対策センター(CMAC)に対する拠出
1994年250万ドル、95年125万ドル、96年125万ドル、97年100万ドル、98年90万ドル、計690万ドル
2.草の根無償資金協力等による支援(累計約1億円)
このほか、1998年5月現在の資金協力は、10年間累計で約3,059万ドルに達している。主なものは、国連地雷除去信託基金:434万ドル、(イ)国連アフガニスタン人道調整官事務所(UNOCHA)1,700万ドル、(ロ)旧ユーゴPKO(UNPROFOR):300万ドル、(ハ)米州機構(OAS):25万ドルが挙げられ、平成10年度は、国連地雷除去信託基金に212万ドル、CMACに90万ドル、OASに4.5万ドルを拠出することになっている。
年度 | 申請団体 | 事業区分 |
1991 | 日本国際ボランティアセンター(JVC) | 地域産業向上事業(職業訓練所建設)
地域産業向上事業(青少年職業訓練計画) 医療事業(僻地巡回医療診察) |
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(中等教育学校建設)
地域産業向上事業(専門家等派遣) |
|
「24時間テレビ」チャリティ委員会 | 医療事業(僻地巡回医療診察)
医療事業(専門家等派遣) |
|
(社)日本国際民間協力機関(NICCO) | 生活環境事業(井戸建設) | |
1992 | 日本国際ボランティアセンター(JVC) | 地域産業向上事業(職業訓練所建設)
地域産業向上事業(青少年職業訓練計画) |
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(中等教育学校建設)
地域産業向上事業(専門家等派遣) 民間援助物資輸送事業 |
|
財団法人国連支援交流財団 | 医療事業(専門家等派遣) | |
1993 | アジア医師連格協議会(AMDA) | 医療事業(専門家等派遣) |
財団法人国連支援交流財団 | 人材育成事業(学校建設)
医療事業(身体障害者復帰対策) |
|
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(スラム学習援助)
人材育成事業(学校建設) 地域産業向上事業(青少年職業訓練計画)2 地域産業向上事業(専門家等派遣) 民間援助物資輸送事業(民間援助物資輸送) |
|
難民を助ける会 | 民間援助物資輸送事業(民間援助物資輸送2 | |
日本国際救援行動委員会(JIRAC) | 人材育成事業(学校建設) | |
日本国際ボランティアセンター(JVC) | 地域産業向上事業(職業訓練所建設)
地域産業向上事業(青少年職業訓練計画) |
|
社団法人日木国際民間協力機関(NICCO) | 人材育成事業(学校建設) | |
1994 | アジア医師連格協議会(AMDA) | 医療事業(医療診察) |
ガンボディア市民フォーラム | 開発協力適正技術移転普及事業 | |
財団法人国連支援交流財団 | 農漁村開発事業(小規模灌慨施設建設)
人材育成事業(学校建設)2件 |
|
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(スラム学習援助)
人材育成事業(学校建設) 地域産業向上事業(青少年職業訓練計画) 地域産業向上事業(専門家等派遣)2件 地域産業向上事業(産業振興施設建設) |
|
難民を助ける会 | 人材育成事業(学校建設)
地域産業向上事業(産業振興施設建設) 民間援助物資輸送事業 |
|
日本国際ボランティアセンター(JVC) | 地域産業向上事業(職業訓練所建設)
地域産業向上事業(職業訓練所建設) 開発協力適正技術移転普及事業 |
|
1995 | アジア医師連格協議会(AMDA) | 医療事業(専門家等派遣) |
財団法人国連支援交流財団 | 女性自立支援事業(女性自立支援センター建設) | |
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(貧困地区学習援助)
人材育成事業(学校建設) 地域産業向上事業(専門家等派遣) |
|
東南アジア文化支援プロジェクト | 女性自立支援事業(女性自立支援センター建設) | |
難民を助ける会 |
医療事業(身体障害者復帰対策)
民間援助物資輸送事業(民間援助物資輸送2 |
|
日本国際ボランティアセンター | 地域産業向上事業(青少年職業訓練計画) | |
社団法人日本国際民間協力機関(NICCO) | 人材育成事業(学校建設) | |
1996 | 財団法人大阪府国際交流財団 | 生活環境事業(井戸建設) |
カンボジアのこどもに学校をつくる会 | 人材育成事業(学校建設) | |
財団法人ケア・ジャパン | 民間援助物資輸送事業 | |
財団法人国際開発救援財団 | 医療事業 | |
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(学校建設)
人材育成事業(貧困地区学習援助) 地域産業向上事業(専門家等派遣) 地域産業向上事業(専門家等派遣) |
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難民を助ける会 | 医療事業(身体障害者復帰対策) | |
日本国際ボランティアセンター | 地域産業向上事業(職業訓練所建設) | |
1997 | アジア医師連絡協議会(AMDA) | 地域総合振興事業(人材育成他) |
幼い難民を考える会 | 女性白立支援事業(自立支援研修) | |
財団法人国際開発救援財団東南アジア文化支援プロジェクト | 医療事業(医療診察) | |
曹洞宗ボランティア会(SVA) | 人材育成事業(貧困地区学習援助)
人材育成事業(貧困地区学習援助) 人材育成事業(託児所建設) 地域産業向上事業(専門家等派遣) 地域産業向上事業(専門家等派遣) |
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難民を助ける会 | 医療事業(身体障害者復帰対策)
人材育成事業(学校建設) |
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日本国際ボランティアセンター | 地域産業向上事業(青少年職業訓練計画)
地域総合振興事業(農漁村開発化) |
1998年度評価調査 現地調査スケジュール (1999年1月20~31日) |
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1999年 | |||
1月20日(水曜日) | 21時20分 | プノンペン着 | |
21日(木曜日) | 9時30分 | 大使館表敬 | |
11時00分 | JICA事務所 | ||
15時00分 | 計画省 | ||
22日(金曜日) | 1班 | ||
9時00分 | 農林水産省 | ||
10時30分 | 農村開発省 | ||
2班 | |||
9時00分 | 教育・青少年・スポーツ省 | ||
10時30分 | EU代表部 | ||
15時00分 | 外務国際協力省 | ||
25日(月曜日) | 9時00分 | プノンペン市水道局 プノンペン市上水道整備計画視察 |
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14時30分 | 国連開発計画(UNDP) | ||
26日(火曜日) | 9時00分 | 保健省 | |
11時30分 | 母子保健センター視察 | ||
13時30分 | 日本国際ボランティアセンター・プロジェクト視察 (トロペアンスノール村:井戸掘り活動) (チョンロック村:米銀行、小学校校舎修理支援活動) (トンロップ村:家庭菜園、堆肥作り) |
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27日(水曜日) | 9時00分 | ガンボディア難民再定住・農村開発プロジェクト(三角協力) | |
10時00分 | 曹洞宗ボランティア会・プロジェクト視察 (アジア子供の家) (印刷所) |
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14時30分 | アジア開発銀行(ADB) | ||
28日(木曜日) | 8時00分 | 世界銀行(World Bank) | |
9時45分 | 水資源気象省 | ||
3時00分 | カンボジア開発評議会 | ||
4時30分 | 経済財務省 | ||
29日(金曜日) | 8時00分 | メコン河沿岸灌漑施設視察(カンダール州) | |
14時00分 | JICA事務所報告 | ||
15時00分 | 大使館報告 | ||
30日(土曜日) | 13時15分 | プノンペン発 | |
31日(日曜日) | 本邦着 | ||