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IV カンボジアの貧困軽減へ向けた国際機関、主要援助国、NGOのアプローチ


1.国際機関と主要援助国による対カンボジア開発援助

 1992年6月、東京で開催されたカンボジア復興閣僚会議は、国際社会の総意として、カンボジアに対する全面的支援を再開する決意を表明した。以後、グローバル・ドナー・コミュニティは、破綻したカンボジアの社会的・経済的再建、および政治的再建に向けてリーダーシップを発揮した。

 1996年の第1回カンボジア支援国会合では、カンボジア政府と主要援助国・機関はカンボジアの課題として、マクロ経済の安定、農業・農村開発、長期的成長に向けた環境作り、森林資源管理、キャパシティ・ビルディング、財政管理面の透明性と責任の確保等の6つのテーマについて話し合い、以降、本テーマは援助の主要課題となっている。

 1992年~98年の7年間、グローバル・ドナー・コミュニティは、カンボジアに対して総額27億5,400万ドルの援助を供与した(表4-1)。それらを形態別にみると、各年によって変動はあるものの、ほぼ80%~90%が贈与で占められており、返済義務を伴う貸付の比重は、ごく小さなものである。ドナー別には二国間援助が、17億2,000万ドル(62.5%)と大宗を占め、ついで国際機関による援助が8億5,212万ドル(30.9%)、NGOによる援助が1億8,721万ドル(6.8%)となっている。

 このようにカンボジアに対する国際的支援は、二国間、国際機関、NGOを主要プレーヤーとして展開されている。主要な二国間援助国は、日本が22.6%と最も多く、フランス、米国がそれに次いでいる。国際機関に関しては、UNDPに代表される国連諸機関(FAO、UNCHR、UNICEF、WFP、WHO等)の活動が顕著である。またEU(欧州連合)も当初より一貫して積極的な支援を行っている。すなわち、加盟国レベルでの援助に加えて、欧州委員会(European Commission)による援助を展開している。さらに世界銀行(カンボジアは、IDA融資のみの適格国)は、1994年以降、長期的な国造りを視野に入れた援助を展開している。ADB(アジア開発銀行)も、加盟国カンボジアに対して積極的な援助を積み重ねている。


表4-1 カンボディアに対する援助実績1992~98年
(単位:100万米ドル)
主要援助国・機関 1992~1981年計 %
多国間援助(小計) 852.7 30.9
 国連機関 236.2 8.6
 世銀 175.1 6.4
 IMF 72.7 2.6
 ADB 161.2 5.9
 EU/EEC 206.9 7.5
二国間援助(小計) 1,720.6 62.5
 オーストラリア 137.0 5.0
 ベルギー 13.0 0.5
 カナダ 33.2 1.2
 中国 46.7 1.7
 デンマーク 50.0 1.8
 フィンランド 3.1 0.1
 フランス 244.9 8.8
 ドイツ 51.9 1.9
 アイルランド 2.1 0.1
 日本 624.6 22.6
 オランダ 59.6 2.2
 ノルウェー 18.5 0.7
 ニュージーランド 0.9 0.0
 韓国 0.3 0.0
 スウェーデン 113.2 4.0
 スイス 4.8 0.2
 タイ 13.1 0.5
 英国 41.2 1.5
 米国 236.8 8.5
 ロシア 12.5 0.6
 その他 13.3 0.5
NGO(コア財源のみ、小計) 187.2 6.8
合計 2,754.4 100.0
1998年の数値は暫定値。
出所:CDC/CRDB, Development Co-operation Report for Cambodia (1998/1999), Main Report, January 1999.


対カンボディア支援主な動き

92年6月: カンボディア復興閣僚会議(東京・日本とUNDPが共同議長)カンボディアに対する中・長期的な復興援助の調整メカニズムとして、ガンボディア復興国際委員会(ICORC, International Comference on the Rehabilitation and Reconstruction of Cambodia)を設置することに合意。総額8億8,000万ドルの経済援助がプレッジされた。
93年9月: 第1回ICORC会合(パリ・日本が議長)新たに1億2,000万ドルの追加援助を表明。合計10億ドルの援助を行う旨が合意された。カンポディアで活動しているNGOの連絡協議体であるCCC(Cambodia Cooperation Committee)の代表がオブザーバーとして参加。
94年3月: 第2回ICORC会合(東京・日本が議長)総額4億8,600万ドルの援助がプレッジされた。CCCの代表がオブザーバーとして参加。
95年3月: 第3回ICORC会合(パリ・日本が議長)総額4億7,300万ドルの援助を行う旨の意図表明がなされた。CCCの代表がオブザーバーとして参加。
96年7月: 第1回CG会合(東京・日本と世界銀行が共同議長)カンボディアに対する新たな援助調整メカニズムとしてCG(Consultative Group)会合〔カンボディア支援国会合〕が発足し、その第1回会議が東京で開催された。それはメンバーを絞り込んだ実質的協議を目的とするものであった。総額5億ドルの援助がプレッジされた。CCCの代表がオブザーバーとして参加。
97年7月: 第2回CG会合(パリ・世界銀行が議長)総額4億5,000万ドルの支援がプレッジされた。CCCの代表がオブザーバーとして参加。
99年2月: 第3回CG会合(東京・世界銀行が議長)総額4億7,000万ドルの支援がプレッジされた。CCCの代表がオブザーバーとして参加。


 分野別に援助実績総額をみると5億9,590万米ドル(21.7%)が農林漁業および地域・農村開発の2分野でかなりの割合となっている(表4-2)。教育・人的資源開発、保健、災害対策や人道援助・救済などの分野に対する援助でも農村部や農民を対象としたものが含まれているので、農林漁業分野への援助額の割合はさらに大きいと思われる。

 カンボジア経済で農林漁業の占める割合が大きく、カンボジアの貧困層の大半が農林漁業従事者であり、農村部居住者であることから、農林漁業の開発はカンボジア経済復興の中心課題である。したがって農林漁業分野への援助額が大のものとなっている。

 農林漁業分野においては援助のプレッジ額に比してディスバースメントは低い。実行率が低い主な原因は、カンボジア政府の援助吸収能力および援助実施能力が低いためと思われる。予算不足、援助実施にかかわる人材不足、制度・組織などの未整備、農村部における道路・医療事情等が劣悪なため援助にたずさわる外国人が農村部深くには入りにくい、なども援助の実行率を低くしている。これらの事情を改善するためには経済運営や開発行政などに相当額の援助を行うことが必要である。

 表4-2の右欄は、援助実績の分野別割合と「第1次社会経済開発計画1996-2000年(SEDP)」における分野別投資配分計画とを対比して示したものである。援助分野(実績)は、地域・農村開発が14.2%と最も大きく、開発行政、運輸分野がいずれも12%台、経済運営と人道援助・救済がともに11%台、教育・人的資源開発と保健がそれぞれ9%余、8%余となっている。行政・経済活動の基盤修復・整備を重視し、それを通じて貧困軽減を可能にし、人道援助・救済で緊急支援を要する人たちに援助を提供する、といった内容になっている。

 地域・農村開発(SEDPでは農村開発)の分野はSEDPの投資配分計画では7%に対して援助実績では14.2%が実施されている。また、農林漁業と地域・農村開発(SEDPでは農業と農村開発)に対してSEDPで17%が計画されているのに対して援助実績では21.7%が充てられている。プレッジに対するディスバースメント率が低いとはいえ、援助実績に占める比率では農業・農村開発が高い。

 一方、援助の地域別実績を見ると(表4-3)1994~96年の限られた期間ではあれ、全国対象に分類される援助が過半の55.7%、首都プノンペンで実施されている援助が26.8%であるのに対して、農村地域であるその他各州における援助実績は17.4%にすぎない。純農業・農村地域で実施される援助は相対的に少ないといえる。


表4-2 カンボジアに対する分野別援助実績1992~98年とSEDP★★との比較

(単位:100万米ドル)
1992~1998年 1SEDPの分野別投資配分計画
分野 援助実績 % 分野 %
経済運営 305.2 11.1    
開発行政 341.7 12.4 行政・特別プログラム 11
天然資源 17.6 0.6 環境・保全  
教育・人的資源開発 256.5 9.3 教育・訓練 11
農林漁業 206.0 7.5 農業 10
地域・農村開発 389.9 14.2 農村開発 7
エネルギー 124.9 4.5 電気・エネルギー 8
工業 1.2 0.1 製造業・鉱業・通商・工業・観光 4
国際貿易 0.3 0.0
国内貿易 14.7 0.5
運輸 335.6 12.2 運輸・通信 23
通信 58.3 2.1
社会開発 166.3 6.0 給水・衛生、宗教・文化 11
保健 229.2 8.3 保健 10
災害対策 2.9 0.1    
人道援助・救済 304.3 11.1    
合計 2,754.4 100.0   100#
1998年の数値は暫定値。
★★ The First Socio-Economic Deveopment P1an 1996-2000.
# 各分野の投資配分割合の計は100にならないが、原文のまま。
出所:表4-1に同じ

表4-3 カンボディアに対する国際機関・主要援助国援助の地域別実績(1994~96年)

地域 援助実績(100万ドル) %
全国対象 774.2 55.7
プノンペン 372.2 26.8
その他各州 241.3 17.4
分類不能 1.8 0.1
合計 1,389.5 100.0
出所:CDC/CRDB, Development Cooperation Report (1996/1997), Main Report, May 1997.


2.カンボジアにおけるNGOの活動

 NGOのカンボジアでの活動の歴史は長く、1980年代に西側諸国がカンボジア援助を停止していた時代から活動を行ってきた。

 1992年~98年の7年間、NGOによる援助総額は実績ベースで累計1億8,721万ドルにのぼっている。これは国際社会がカンボジアに対して供与した援助総額の6.8%に相当する。ここで計上されたNGOの援助額は、国際機関等からNGOに供与される資金を含まないコア・ソース(Core Sources)のみである。国際機関等からの資金規模は活動資金の30%前後と想定され、カンボジアにおいてNGOが実際に動員する資金は、統計に示された数字よりもはるかに大きいといえる。

 1998年6月現在、カンボジアでは総計296団体のNGOが活動している。その内訳は、国際NGO133団体、91年に国際NGOの援助で初めて誕生したKhemara等のローカルNGO 159団体、その他4団体である。また各NGOが展開しているプロジェクト数、および資金総額は、国際NGOが356件〔7560万ドル〕、カンボジアNGOが150件〔644万ドル〕、その他が5件〔82万ドル〕となっている(98年)。

 1998年におけるNGOの活動をセクター別に概観すると、保健(38%)、地域・農村開発(23%)、社会開発(21%)、教育・職業訓練/人的資源開発(10%)、農業(5%)、機構改革(1%)となっている。草の根レベルでの人間貧困の軽減、および農村における包括的な共同体開発を重視していることがうかがえる。

 NGOの活動を地域別に概観すると、プノンペンを対象とする活動が26%ときわめて大きな比重を占めている。これとは対照的に、カンボジア全国規模での活動は11%にとどまっている(1998年)。

 このような活動を行っているNGOをCDC/CRDB(カンボジア開発評議会)は次のように評価している。

  • NGOが、社会開発や貧困軽減、農村開発と農業、天然資源の管理、教育等の分野において活動を継続することが期待される。
  • NGOは、とりわけ農村開発計画の実施や草の根レベルでの活動(農村信用制度を含む)の実施に特別の経験・ノウハウを保持している。
  • NGOは、食糧安全保障、弱者のエンパワーメント、社会セクターの強化、人権の尊重等の重要な問題に関して活動してきた。参加、平等、ジェンダー、生態系の持続可能性、地域共同体における協力等重要である。
  • NGOは、機動力と柔軟性を活かして、政府や国際機関等の大規模ドナーがアクセス不可能な遠隔地でも活動している。

 カンボジアのNGOの中心的な役割を担っているのが、CCC(Cooperation Committee for Cambodia, カンボジア協力委員会)である。CCCはカンボジアで活動するNGO(国際NGOおよびカンボジアNGO)の連絡協議体として1990年に設立され、91年にカンボジア政府から正式に認可され、NGO相互間、カンボジア政府、国際機関等3者の情報交流と対話のための役割を果たしている。

 CCCは、「NGOが、保健衛生や教育の分野において、あるいは地域共同体レベルにおいて培った経験と知見を、カンボジア政府の政策形成にフィードバックさせることはきわめて重要である」とNGOの役割を強調している(1996年11月、カンボジア政府文書のレビューを目的とするDevelopment Policy Notesの発刊にあたり)。さらに、第2回CG会合に向けたステートメント(NGO Statement to the 1997 Consultative Group Meeting)において、CCCは(イ)NGOが地域共同体において展開してきた参加型・持続型という革新的な開発アプローチは、さらなる拡大の可能性を保持している、(ロ)さまざまなNGOがこれまで蓄積してきた教訓は、カンボジア政府の政策決定やドナーの政策立案に対して大きな意義をもっている、(ハ)カンボジア支援を協議する一連のドナー会合へのNGOの参加は、NGOの経験と関心を伝える絶好の機会である、とした。

 このようにカンボジアの開発にとって重要な役割を果たしてきたNGOであるが、NGOと政府の関係は新たな段階に入ろうとしている。それは、カンボジア政府(外務・国際協力省)の新たなNGO法制定の動きである。

 カンボジアで活動するNGOは、国際NGOは外務・国際協力省(Ministry of Foreign Affairs and International Cooperation)の所管の下に、またカンボジアNGOは内務省(Ministry of Interior)の所管の下に置かれている。国際NGOは、これまで外務・国際協力省との間に「合意文書」(Agreement)を取り交わしてきた。同文書では、NGOの果たすべき義務として、(イ)あらかじめ一定額の外貨を活動基金として準備する。(ロ)カンボジアの法や規則を遵守する。(ハ)外務・国際協力省に対して年次活動報告書を提出する、等が謳われている。他方、カンボジア政府は、当該NGOに対して、スタッフや家族の入国に際する便宜や資機材に対する関税・租税の減免措置を謳っている。

 新たなNGO法では以前よりはるかに詳細な合意文書を国際NGOとの間に取り交わそうとしている。具体的には、(イ)NGOの非政治性、非宗教性、非営利性の強調、(ロ)カンボジアの法や規則を遵守する義務の強調、(ハ)活動準備金の大幅な増額、(ニ)カンボジア人スタッフの雇用義務、(ホ)詳細なプロジェクト報告書の作成、6詳細な年次活動報告書の提出等を骨子とするものである。こうした動きは、増大の一途をたどってきたNGO(特に人権NGO)の規制・選別、さらには「エセNGO」の排除を企図しているようにうかがえる)。


3.農業分野への援助と貧困軽減

(1)国際機関による地域・農村開発分野への援助

 カンボジア計画省が1996年2月に策定した「第1次社会経済開発計画1996-2000年」は貧困軽減を目標として掲げ、農業・農村開発を重視する方針を明示している。これを受けて策定された「カンボジア:政策枠組み文書1997-99年(PFP)」では農業・農村開発の目標、そのための政策として次の点をあげている。

農業セクターにおける主な中期的目標:

  • (イ)換金作物の生産と農外活動を増やすことで農家の所得増加の機会を増やす、
  • (ロ)輸出可能な農産加工業の発展を通じて経済成長と外貨獲得に対する農業の貢献を強める。

それらを達成するための3年間の重要政策:

  • (イ)農場とマーケット間の道路、灌漑と用水供給システムを含む農業インフラストラクチャーを改修する。地元参加と運転・維持コストの自立運営をはかる、
  • (ロ)高収穫種子、化学肥料と農機具の普及を通じて生産性向上と多毛作化をはかる、
  • (ハ)農村の構造改革と強化、試験研究、普及サービスの改善、ゴム・プランテーションの民営化を視野に入れた復興と合理化をはかる、
  • (ニ)健全で永続的な農業信用の提供を強化する、
  • (ホ)改正土地法を施行し、安全な土地取引のための規則を実施して透明性のある土地市場を創設する。

 こうした政策目標や重点施策に対し、アジア開発銀行(ADB)、UNDP、FAOなどの国際機関、主要援助国やNGOも共通の認識をもち、農業・農村支援を重視している。

 表4-4は農林漁業および地域・農村開発の分野で国際機関が実施中の主要援助プロジェクトの概要を示したものである。ADBは農業・農村開発中期目標に基づき、「農業政策改革支援」や「特別リハビリ支援プロジェクト(灌漑施設の復旧)」その他のローン提供や技術協力プロジェクトを実施している。ADBはカンボジアの農村部を対象とするローン案件を推進するため技術協力も付随して実施している。

 UNDPは単独またはその他の国際機関や援助国と共同で9件の援助プロジェクトを実施中である。それらのプロジェクトの内容は農村金融から職業訓練や貧困削減など多岐にわたっている。また、FAOは5件の援助プロジェクトを実施しているほか、EECや世銀もいくつかの援助プロジェクトを推進している。援助形態としては、ADBと世銀が計4件のローンを供与しているほかは、すべて無償援助である。

 表4-4では、プロジェクト名に貧困軽減と明記した案件は1件のみである。しかし、地雷撤去にかかわるプロジェクト、農村金融プロジェクト、農業政策に関するプロジェクト等貧困軽減と関わるものは多い。


表4-4 国際機関による実施中の主要援助プロジェクト(農林漁業および地域・農村開発分野)1997年
プロジェクト名 援助機関 形態 概要
農業政策改革支援 ADB FTC/Grant n.a.
特別リハビリ支援プロジェクト(灌慨復旧) ADB IPA/Loan n.a.
農業セクタープログラム ADB IPA/Loan n.a.
コミュニティー灌潮施設のリハビリ ADB FTC/Grant n.a.
農村金融検査計画 ADB FTC/Grant n.a.
農村金融 UNDP FTC/Grant 農村地域におけるクレジット供与と200の村銀行設立への支援
森林インベントリー実施計画 UNDP/FAO FTC/Grant 森林インベントリーの作成/学校教育
ILO-職業訓練計画 UNDP
EEC ,オランダ
ILO
FTC/Grant 除隊兵士や世帯主婦人の職業訓練支援
地域リハビリ・再生計画 UNDP/EEC FTC/Grant 貧困削減市民社会強化支援
貧困削減・食糧安全保障戦略 UNDP FTC/Grant 貧困削減と食糧安全保障支援
ILO-労働によるインフラのリハビリ計画 UNDP/ILO
UNHCR
オランダ
スウェーデン
FTC/Grant
IPA/Grant
労働による第2次道路建設と灌概リハビリ支援
ILO-小企業・インフォーマルセクター振興計画 UNDP
オランダ
フランス
FTC/Grant
IPA/Grant
民間小企業とインフォーマル・セクター開発支援
地雷発見センター支援計画 UNDP
スウェーデン
FTC/Grant 地雷発見センターに対する技術的支援
水資源開発支援計画 UNDP FTC/Grant トンレサップ湖における水資源管理支援
農業分野支援計画 EEC ITC/Grant メコン・デルタ6州150家族支援
EU地雷撤去計画 EEC FTC/Grant 地雷発見センターへの技術的支援
緊急リハビリ金融(農業分野) 世銀 IPA/Loan インフラのリハビリとサービス支援
カンボジア王国社会基金 世銀/日本 IPA/Loan
ITC/Grant
n.a.
農業情報センター FAO IPA/Grant n.a.
稲作総合害虫管理計画 FAO FTC/Grant 害虫管理を通じて食糧増産に寄与
食糧供給アセスメント FA0 FTC/Grant 1995年の穀物および食糧の収穫調査
食糧安全保障特別計画 FAO FTC/Grant 食糧安全保障達成に向け技術援助
家畜口蹄病予防計画 FAO FTC/Grant 予防接種の要員訓練
n.a. 源資料に概要の記載がないことを示す。
FTC: Free-standing technical cooperation
IPA: Investment project assistance
ITC: Investmen-related technical cooperation
出所:CDC/CRDB, Development Cooperation Report (1997/1998), Annex, June 1998.


(2)主要援助国による地域・農村開発分野への援助

 表4-5は、主要援助国によるカンボジアの農林漁業および地域・農村開発分野への援助の内容である。表4-5の出所資料は各援助国からの申告をまとめたもので、援助国間で申告方針に差がある。例えば、オーストラリアやフランスはNGOに対する資金援助なども実施中のプロジェクトに数えている一方、日本はそうしていない。したがって、表4-5が必ずしも援助プロジェクトを網羅しているとはいえないものの、他に入手可能な資料がないため、この資料により主要援助国の農林漁業および地域・農村開発分野への援助について言及する。

 実施中のプロジェクトの件数ではフランスとオーストラリアが多く、援助の内容も農業教育や調査研究から地雷撤去、食糧援助、農村金融等に至るまで多様である。旧宗主国でカンボジアに関する知識や情報を豊富に持っているフランスはゴム・プランテーション関係の援助を実施していることが目を引く。フランスの援助でゴム研究所がプノンペンとコンポンチャムに設置され、またゴム・プランテーションのリハビリ計画が実施されている。一方、オーストラリアは国際稲研究所(IRRI)と共同して稲作研究支援のため87年からカンボジア-オーストラリア-IRRIプロジェクトを実施し、稲育種、土壌養分管理、病害虫管理、稲増産技術、農業機械など多面的な試験研究を実施している。日本はASEAN諸国と共同で難民定住・農村開発のプロジェクト(いわゆる「三角協力」)を実施しているほか、農業関係の専門家を派遣してカンボジアの農村・農業開発を支援している。

 主要援助国によるカンボジアの農林漁業および地域・農村開発分野への援助プロジェクトの中で、貧困対策を謳っているのはオーストラリアの「貧困撲滅計画」のみである。しかし、国際機関による援助の項で指摘したように、この場合も貧困軽減を軽視しているわけではない。援助形態はすべて無償援助である。


表4-5 主要援助国による実施中の主要援助プロジェクト(農林漁業および地域・農村開発分野)1997年
プロジェクト名 援助国 形態 概要
アドバイザーの派遣 FTC/Grant 農林水産省での計画策定、地域開発、農業開発戦略の枠組作りへの支援協力
ガンボディア-豪-IRRI共同計画
IRRI
FTC/Grant 稲作増産、生産性向上のための訓練、調査研究、技術移転支援
シェムリアプ多角化農業計画 FTC/Grant 農民の健康と生活向上支援
地雷認識センター支援計画 豪、オランダ
スウェーデン
日本他
FTC/Grant 地雷認識、地雷原情報および地雷撤去支援
地雷対策センター支援計画 FTC/Grant 地雷対策センターに対する技術支援
食糧援助計画 豪、日本
WFP他
ERA/Grant 家系の食糧安全保障レベル改善支援
ガンボディア小規模援助計画 FTC/Grant NGOその他への資金援助
貧困撲滅計画 FTC/Grant 飢餓削減、所得向上、食糧増産支援
変化への食糧支援計画 FTC/Grant 牛・ブタ銀行への物資供与と訓練
ゴムセクターのリハビリ計画 フランス IPA/Grant ゴムプランテーションの民営化とリストラ計画の実施支援
農業政策立案および農業学校における耕種学支援 フランス FTC/Grant 農業政策立案および農業教育に対する支援(農業大学等)
ゴム・プランテーションのリハビリ計画 フランス IPT/Grant ゴム・プランテーションのリハビリ支援
シエムリアプ州都市近郊農業支援計画 フランス IPT/Grant シエムリアプ州都市近郊農村における食糧増産支援
ガンボディア北西部の養蚕業振興計画 フランス IPT/Grant 養蚕業発展の技術的基礎の確立支援
プルサット州農村開発計画 フランス IPA/Grant プルサット州総合農村開発支援
NGO支援計画 フランス FTC/Grant NGOに対するフランスの支援
農村金融推進計画 フランス IPA/Grant 農村金融計画に対する訓練と支援
絹糸生産支援緊急計画 フランス IPA/Grant シエムリアプ州の絹糸生産開発支援
農村修復開発計画 フランス IPA/Grant 堤防・水利工事修復支援
農村金融資金援助計画 フランス IPA/Grant 24の農村金融計画への資金援助
シアヌーク国王への農業機械供給計画 中国 IPA/Grant カンボディア国王への農業機械供給
総合農村開発計画 デンマーク FTC/Grant 農民の生活水準向上支援
クメール動植物研究所支援計画 デンマーク FTC/Grant 動植物研究所発展への支援
地雷撤去支援計画 デンマーク FTC/Grant n.a.
難民定住・農村開発 日本 FTC/Grant 難民定住・農村開発のための日本とASEAN諸国の共同支援(三角協力)
農林水産省への専門家派遣 日本 FTC/Grant n.a.
専門家派遣計画 日本 FTC/Grant n.a.
三角協力計画 日本 FTC/Grant n.a.
カンボジア農業生産計画 カナダ FTC/Grant 農業生産・生産性向上と保健支援
ガンボディア・カナダ開発計画 カナダ FTC/Grant 全国と州レベルでの食糧安全保障と人的資源開発支援
地方支援カナダ基金計画 カナダ IPA/Grant 社会開発・救済プロジェクト支援
洪水被災農民への小型ポンプ緊急供与計画 アイルランド
オランダ、豪
IPA/Grant 1996年10月の洪水被災農民に370台の小型ポンプ分配
特別人道作戦 オランダ
ノルウェー
スウェーデン
FTC/Grant 緊急二一ズに対処する地域開発支援
森林分野の組織・制度強化計画 ドイツ FTC/Grant 森林分野の組織・制度強化支援
自助基金計画 ドイツ ITC/Grant n.a.
第3次道路建設計画 ドイツ IPA/Grant コンポンソム州とシエムリアプ州での第3次道路建設支援
食糧安全保障計画 ドイツ FTC/Grant カンポット州の食糧不足住民支援
コミュニティー開発センター支援計画 タイ IPA/Grant コミュニティー開発センターの建物建設、機器供与
地雷撤去支援計画 スウェーデン FTC/Grant n.a.
IPT: Investment project assistance with a TC component
ERA: Emergency and relief assistance
その他注:表4-4に同じ
出所:表4-4に同じ。


(3)NGO等による農業・農民への援助

 カンボジアではさまざまなNGOが農業分野への援助活動を展開している。NGOはすでに1980年代からカンボジアで活動しており、カンボジアに関する知識と経験を持ち、小回りが利くなどのため、活動は農村部の広範囲にわたっている。表4-6はカンボジアにおけるNGOの援助活動の地域別実績である(96~98年)。農村部(その他各州)での援助活動が63.2%を占め、首都プノンペンでの援助活動が24.8%、全国対象のそれが12.0%である。表4-3で示した国際機関と主要援助国による地域別援助実績とは対照的に、NGOの援助活動は農村・農民を対象とする分野で活発なことがうかがわれる。


表4-6 カンボディアにおけるNGO援助の地域別実績
(コア財源のみの支出)1996~98年

(単位:100万米ドル)
地域 1996~1998年計 %
全国対象 17.0 12.0
プノンペン 35.2 24.8
その他各州 89.6 63.2
合計 141.8 100.0
出所:表4-1に同じ


 カンボジアの民間研究機関CDRIは、NGO等(一部政府機関含む)が実施しているプロジェクトを中心に農村開発プロジェクト6件を紹介している。その概略は次の通りである(Chim Charya他, Learning from Rural Development Programmes in Cambodia, Cambodia Development Resource Institute)。

  • (イ)Oxfam/Chumraen Chiet Khmer。 母体は国際NGOであるOxfam United Kingdom/Ireland(OxfamUK/I)で、1979年からカンボジアで活躍している。91年からOxfamUK/Iはタケオ州の2つの村とバッタンバン州の2つの村で社会開発プログラムを実施している。OxfamUK/Iの元スタッフの1人はChumraen Chiet Khmerという独立のローカルNGOを設立してOxfamUK/Iから資金援助などを受けながらタケオ州のSamaung村とMeabeak村で活動している。
  • (ロ)Krom Akphiwat Phum(KAP)。12人のカンボジア人社会開発ワーカーで構成されるカンボジアのローカルNGOで、オーストラリアのAusAIDから資金援助を受けてバッタンバン州で活躍している。
  • (ハ)UNDP CARERE/SEILA。CARERE(Cambodia Area Rehabilitation and Regeneration Project)はシエムリアプ州のBengとChikeak等で活躍している。
  • (ニ)Hun Sen Krangyov Development Centre。激しい旱魃の被害を受けたカンダル州のKrangyovコミューンの住民を救済するためにフン・セン第2首相(当時)によって1995年1月に設立された組織で、日常の管理は地域の政府職員が当たり、開発事業は村とコミューンの責任者が行っている。
  • (ホ)GTZ(Gesellschaft fur Technische Zusammenarbeit)。コンポントム州で1996年から援助活動を展開している。StongとStung Senでのプロジェクトが検討されている。
  • (ヘ)Partners for Development(PFD)。米国に本部がある国際NGOで、カンボジアでは1993年初めからクラチェ州で活躍している。

 これらの農業・農民援助プロジェクトの内容は多彩であり、主なものは1)インフラストラクチャー建設、2)信用事業、3)極度に貧困な農民への支援等である。

1)インフラストラクチャー建設

  • (イ)灌漑運河の改修・建設。稲作が主な農村部ではコミューン運河の改修や小規模な運河の掘削、古くて埋まっている運河の再掘削など中・小規模の運河プロジェクト。
  • (ロ)道路改修。マーケットへのアクセスを容易とする道路の改修。
  • (ハ)井戸・ため池造成。きれいな飲用水をうるための井戸やため池の造成。
  • (ニ)ヘルスセンターの建設。
  • (ホ)小学校建設。

2)信用事業

  • (イ)米銀行(Rice Bank)。米銀行には三種類がある。その一つは米を備蓄して米不足で価格が上昇するようなときに米を貸し出し、収穫時に20~30%の利子をつけて米で返済してもらう。この種の米銀行はWFP(World Food Programme)の援助で始めることが多い。もし高利貸から借りれば少なくとも50%の利子を払わなければならない。二番目は、消費用の米ではなく種籾専用の米銀行で、同じく収穫時に20~30%の利子をつけて返済する。三番目は、肥料や役牛を受け取り、50%の利子付きで米で返済する。
  • (ロ)小規模金融資制度。6ヵ月から9ヵ月期間で、4万リエルから10万リエル程度の現金を融資するもので、借り手は稲作のためや小規模な事業のために使ったり、病気のときの医療費や海外出稼ぎの準備に使ったりする。利子は月3~5%(高利貸は月15%程度の利子を取る)である。

3)極度に貧困な農民への支援

  • (イ)米協同組合の設立。米が不足し、価格が上がる端境期に極度に貧しい農民たちが安い米を購入しうるように、極度に貧しい農民たちだけを組合員とする米協同組合を設立する。
  • (ロ)小額現金ないし米の無利子融資制度。アヒルなどの家禽類の飼養を始めたり、稲作用の土地を借りたりするための小額資金や端境期の米を無利子で融資する。
  • (ハ)僻地対策。援助の手が届きにくい遠隔の貧困地域に各種のプロジェクトを行うことで極度に貧困な農民への支援にしようとする。

 この報告はプロジェクトの成果を次のようにあげている。農民の生活水準を向上させるうえで最も効果的であったのは、灌漑運河の改修・建設である。乾期の稲作が可能となるなど農民の受ける経済的利益は大きい。次いで効果の大きいのは道路改修で、市場へのアクセスが改善されることから商人に売り渡す農産物の庭先価格が上昇し、農民の所得は向上するとしている。井戸・ため池造成は、きれいな飲み水を得ることを可能にし、農民たちの病気が減少し、医療費の節約ばかりでなく、病気で仕事を休むことが少なくなり所得機会を失うことも少なくなる、などの効果をあげている。さらに、買水のための支出をなくすことが可能となり、2~3キロの遠い距離を農民が水を運ぶ手間を省くこともできるようになった。ヘルスセンターの建設も農民たちに利益をもたらしている。小学校建設によって子供たちの就学が増大し、知識水準も向上して将来の生活能力が高まることも期待されている。

 信用事業は対象が現物であれ、現金であれ、従来高利貸の高い利子によって苦しめられてきた農民たちに大きな利益をもたらすものである。これら個々の信用事業の規模は大小さまざまであるものの、いずれのプロジェクトも農民の融資の必要全額を満たすほど大きくはない。農民たちは必要な融資の全額をこのような有利な信用事業からだけでは調達できず、従来の高利貸からも同時に融資を受けなければならない状況が続いている。

 インフラストラクチャー建設と信用事業のいずれもその経済的利益は比較的裕福な農民により多く、貧しい農民にはより少なく配分される傾向があることは否めない。いくつかのNGO・団体では、特に極貧層の農民を対象にしたプロジェクトを試みている。カンボジアの農業と農民の現状を最もよく知っているはずのこれらNGO・団体にとっても、極貧層の農民をターゲットにした特別なプロジェクトを立案・実施することは容易ではなく、そのようなプロジェクトの種類や数は少ない。そうしたプロジェクトで成功しているものは、さらに少ないと報告されている。

 まず、農業と農村全体の底上げを図るプロジェクトを展開し、それによる効果と利益の配分で貧農層や極貧層の農民が不利にならないように特別の配慮をすることが必要なようである。


4.教育分野

 国際機関・主要援助国は、人間開発の促進、貧困の軽減という観点から、カンボジアにおける教育システムの改善・拡充を最優先課題のひとつと位置づけている。

 「カンボジア開発協力報告書 1998/1999」によれば、教育・人的資源開発部門に対する援助は、92年~98年の累計で総額2億5,648万ドルに達した。それは対カンボジア援助総額の9.31%を占めている。その具体的な支援活動は以下に例示されるとおりである。

  • ADBは、基礎教育用の教科書作りの支援や、職業・技術訓練促進のための技術指導を行っている。
  • UNDPは、教育における能力開発を社会セクター開発における重要な柱として位置づけ、UNESCOと協力して、計画省や教育・青少年・スポーツ省で教育行政に携わる公務員の基礎的行政管理能力の向上を目的とするプロジェクトを展開している。具体的には、基礎的データの収集や作成、あるいは報告書の作成・編集・翻訳に関する技術(ノウハウ)の習得を目的とするワークショップの開催やOJTを行っている。また農村(地方) をカバーする教育管理情報システムを構築している。
  • NGOの多くは、教育プロジェクトに携わっており、その活動は、識字教育、インフォーマル教育、成人学級、教科書配付、教材作成の指導・支援、絵本の作成、教師の派遣、教師の訓練、校舎の補修・建設、印刷技術の指導、幼稚園の開設、職業技術訓練、英語教育、フランス語教育、日本語教育、女性の意識改革、移動図書館等多岐にわたっている。なお、カンボジアで活動するNGOのうち、とくに教育分野に特化したNGOは連絡協議ネットワークとしてEducamを組織している。

5.保健医療分野

(1)概要

 諸外国・機関のカンボジアに対する復興・開発援助が本格的に実施されるようになったのはパリ和平協定が調印された翌年の1992年であった。NGOによる支援活動についても、一部の団体は80年代前半からすでにカンボジア国内で活動を行っていたが、団体数および資金規模が飛躍的に拡大したのは93~94年を境にしてのことであった。

 1992年から98年までのカンボジアにおける外国援助(多国間、2国間、NGOによるもの)の実施総額は、27億5千万米ドルを超えている。そのうち、保健医療分野に対する援助は8.32%を占める(表4-2)。同分野に対する援助が年間の総額に占める割合を各年について見たのが表4-8である。


表4-8 保健医療分野に対する援助実績(1992~98年)
(単位:千米ドル)
  1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998
年間実施総額 250,18 321,891 358,04 513,62 518,082 375,40 417,54
保健医療分野 315,4 28,86 520,70 24,8 43,69 532,0 563,4
(実施額) 83 7 88 77 6 27 24
全体に占める% 6.19 8.97 5.81 4.84 8.43 8.53 15.19
(出所)CDC/CRDB(1999)より作成


(2)国際機関

 表4-9は、「1999年社会経済開発-要請と提案-」に添付された「公的開発援助/公共投資資金調達プログラム1999-2001年」(ODA/Public Investment Resource Mobilization Programm, 1999-2001)の保健医療分野の部分を抜粋したものである。ここに掲載されているのはあくまでも表明額(プレッジ)であるが、保健医療分野で表明されているプロジェクトはすべて実施中のものであること、プロジェクトの開始が保健システムの改革に着手されたのと同時もしくはその直後であること、さらに「第1次社会経済開発計画1996-2000年」に掲げられた保健医療分野における目標に合致したものであること、等を考慮に入れれば、これらプロジェクトは予定どおりに実施されると想定される。

 国際機関が全体として積極的に保健医療関連プロジェクトに関与していることがうかがわれる。この表では「外国(external)」と「国連(UN-funded)」の定義が不明であるため、「国連」によって提供される予定の金額を「国際機関による資金」として読み替えると、1999-2001年の3年間に予定されている投資額のうち、資本投資プロジェクトの場合は49.5%、技術援助プロジェクトの場合は36.7%が国際機関によって提供されることになっている。

 保健医療分野への積極的な関与の基礎となっているのは、「人々が生活水準を向上させ、意欲的な社会構成員になることを確かなものとするために、社会開発においては教育と保健医療を強調するものである」とする認識である。UNDPがカンボジア政府の「第1次社会経済開発計画1996-2000年」の内容を考慮に入れつつ作成した「第1次国別協力枠組み1997-2000年」(the first Country Cooperation Framwork)は、主要目標として貧困軽減を掲げている。そこでは保健医療システムの構築と国民の保健水準の向上は、貧困軽減のための取り組みの一環として位置づけられている。


表4-9 「公的開発援助/公共投資資金調達プログラム1999-2001年」保健医療分野(保健省所管プロジェクト)抜粋
プロジェクト名 援助国・機関・団体 実施期間 プロジェクト総費用 予定投資費用(1999-2001年)
総額 政府 外国 国連
資本投資プロジェクト
Strengthen Basic Health Services(BH.1) ADB, WB, KfW Japan, NGOs 1995-2001 147,500 111,491 73,914 24,500 13,077
Women & Child Health(MC.2) NGOs 1995-2001 53,012 48,230 770 5,830 41,630
Tuberculosis Control(TB.5) WHO, Japan/JICA, WFP, NGOs, MSF 1995-2001 17,122 15,485 2,975 1,797 10,712
Control of Malaria, Dengue, Schistosomiasis(MA6) UKODA, EU, WHO, USAID, WB, NGOs 1995-2001 17,500 10,615 2,569 3,480 4,566
Pharmaceutical Sector Reform/Essential Drugs(ED.7) WH0, UNICEF, WB, KfW/Gemany 1996-2001 12,710 58,771 18,000 9,059 31,712
AIDS/STD Programme(AI.9) UNICEF, UNDP, UNFPA, EU, GTZ, NGOs 1995-2002 51,798 41,988 3,732 3,180 35,076
Rehabilitation of National Hospitals(NH.10) On-Going activity, NGOs 1995-2001 40,000 23,799 7,604 4,100 12,095
Expanded Program: Immunization & Polio Eradication(EP/14) AusAid, WHO, JICA, NGOs, Rotary Club 1996-2001 20,651 13,648 240 1,700 11,708
EENT/Mental Care(N0.15) NGOs 1996-2001 4,504 4,909 970 1,952 1,987
National Institute of Public Health(NPH.16) ADB, GTZ 1996-2005 5,926 1,797 654 370 773
Blood Transfusion Programme(BLO.17) On-Going activity, Donor Sought 1995-2001 8,600 3,284 1,323 0 1,962
保健医療分野資本投資プロジェクト小計 379,323 334,016 112,751 55,968 165,297
技術援助プロジェクト
Strengthening Health MGT. & Planning(IN-SH.3) AusAid, UNDP, UNICEF, WHO 1995-2001 45,601 26,222 14,821 4,500 6,901
Human Reources Development(IN-HR.4) Au釧d, France, WHO, KfW(Gemany)Japan, NGOs 1995-2001 12,213 7,589 2,794 194 4,601
Leoprosy Elimination(LEP.11) WHO, WFP, NGOs, CIOMAL/France 1995-2001 3,744 1,848 189 980 679
Infection Control(IN.12) 0n-Going Activity, Donor Sought 1997-2001 4,400 2,844 1,488 0 1,356
Health Education, Hygiene & Primary Health Care(HEP.18) NGOs, World Education 1996-2001 5,118 2,959 702 996 1,261
Cancer Prevention Program(CPP.17) 0n-Going Activity, Donors Sought 1995-2001 8,600 800 70 0 730
保健医療分野技術援助プロジェクト小計 79,676 42,262 20,064 6,670 15,528
(出所)CDC/CDRB(1999).


(3)NGO

 復興・開発活動においてNGOが幅広く重要な役割を果たしていることがカンボジアの特徴としてあげられる。保健医療分野においては特にNGOが重要な役割を果たしている。NGOの最近2年間における分野別援助の内訳を援助実施額ベースでまとめたのが表4-10である(データ入手可能なもののみ)。NGOによる援助が外国援助実施総額の13%強に達していることが、指摘できる。こうしたNGOによる援助の4割弱が保健医療分野に対するものである。カンボジアの保健医療分野に対する外国援助のうち、1997年は実に6割以上、98年でも3割以上がNGOによる援助であるということになる。

 保健省の1998年年次活動報告書によれば、98年に保健省をカウンターパートとして活動しているのは、国際NGOが79団体、ローカルNGOが33団体の計112団体である。多くのNGOがカンボジア国民の保健医療水準の引き上げに貢献しているといえる。


表4-10 保健医療分野におけるNGOによる援助(単位:千米ドル)
  1997年 1998年
年間援助実施総額 375,404 417,545
NGOによる援助実施総額(カッコ内は全体に占める%) 49,876
(13.29%)
56,097
(13.43%)
年間援助実施総額のうち保健医療分野に対するもの
(カッコ内は全体に占める%)
32,027
(8.53%)
63,424
(15.19%)
NGOによる援助のうち保健医療分野に対するもの
(カッコ内はNGOによる援助総額にしめる割合)
19,516
(39.13%)
21,250
(37.88%)
保健医療分野における援助総額のうち、NGOによる同分野における援助がしめるパーセンテージ 60.93% 33.50%
(出所)CDC/CRDB(1998)および同(1999)より作成


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