(1998年4月、在フィリピン大使館)
援助形態 | 有償資金協力(円借款) |
協力年度 | 1988年度、89年度 |
協力金額 | 20.63億円、43.01億円 |
相手国実施機関 | メトロセブ開発計画管理事務所(MCDPO) |
協力の内容 | フィリピン第2の都市圏であるメトロセブの都市基盤の総合的な整備を行うため、円借款により、道路・橋梁の改良・新設、バスターミナルの建設、公共市場の拡充・整備、ゴミ処理システムの整備を行う。 |
〈評価要旨〉
1 インパクト
外国人観光客、国内富裕層をターゲットとした観光産業が発達しており、すでに数十のリゾートが新たに開業している。また、特別経済区の開発により、セブ日本人商工会議所の会員数はすでに100企業に達している。これにより、雇用が拡大し、外貨収入が増加しており、セントラル・ビサヤ地域全体の経済成長にも貢献している。
2 妥当性
このプロジェクトを実施した時期は、フィリピンは「アセアンの病人」といわれ、経済的な落ち込みが顕著であり、近隣諸国の急激な経済成長とは対照的であった。そのような状況にあって、フィリピンの開発計画のプライオリティは経済再生にあり、その一環としての地方開発が中期開発計画の中でも掲げられていたところである。こうした観点からは、このプロジェクトの選定は時宜を得たものであると考えられる。また、施設の仕様についても、道路交通量に応じアスファルト舗装とコンクリート舗装とが使い分けられるなど、きめ細かい配慮がなされている。
3 自立発展性
マンダウエ公共市場については、店舗入居率が約90%となっている。ただし、公共市場に入居せず、駐車場や周辺の空き地に不法に店舗を開設しているものが多数ある状況となっており、不法占拠者への対応の検討が必要と考える。
4 将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
複数の地方自治体にまたがる総合的な都市開発計画を実施する場合、各地方自治体の事業実施能力等がまちまちであり、地方自治体間の調整も往々にして欠落する傾向にある。このプロジェクトにおいては、MCDPOという実施主体を新たに創設し、事業実施を統一的に管理するとともに、施設の完成後は、各地方自治体にこれを引き離し、プロジェクトの終了後は、MCDPOを解散するというスキームをとっている。
このスキームは、対外借入法、地方自治体法により、地方自治体が直接外国借款を受けられないフィリピンにおいて、地方自治体向けの円借款として、複数のプロジェクトを実施する際の相互連携、事業の効率的な実施といった点において大きなメリットがあるが、一方、実施機関内に事業実施のノウハウが継承されないといったデメリットもある。しかし、基本的には、効率性のメリットの方が大きいと考えられ、今後地方開発のモデルケースとなるのではないかと思われる。