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第6章 結論


 日本の国際援助・国際協力の歴史ではじめての、「NGO外務省共同評価」ということで、特に官側において、戸惑われた方々も多かった。それでも日本・バングラデシュの政府・民間双方の多くの関係者の理解と協力によって、今回の共同評価、実質的には、NGOとODAの相互学習は、今後の個々の国際協力事業の改善、NGOとODAのより良い形での協力への第一段階を築いた。

 国際開発協力において必要なことは、基盤となる人々(農業国であれば、貧困層と女性を焦点とする農民)が自分の生活や地域の主体になることに協力することであろう。

 物理的な社会基盤の整備も、これらの人々の参加と地位・能力の向上があって、はじめて血の通ったものとなり、真に生きたものとなる。資金などにおいて量的な増大をはかって全国をカバーするというより、小さな規模であっても、その国・その地域に適合する開発の方法を、地域行政・NGO・農民団体など民衆団体の連携を通して、「横」に広げることと、中央政府の政策に反映し、いわば「縦」の関連をつけること、両方向での連携を充実させることで、限られた資金でも有効な役立ち方ができる。

 バングラデシュにおいて、日本政府が、今後の開発協力を構想する時に、シャプラニールなど、この国の各地域で長期に活動し、成果を挙げているNGO、POと情報および意見交換し、調査・計画時に生かせば、より良い形で底辺層の人々の生活改善および下からのエンパワーメントを実現できるであろう。具体的な方策としては、バングラデシュ政府の政策面にNGOの成果と経験を生かす方法、二国間援助の実施段階にNGO(日本のNGOをふくむ国際NGOと地元NGO)の参加を促す方法、および「草の根無償」などの利用によるNGOへの直接支援の拡大という、3つの方法がある。

 できてまだ2年目の、ナルシンゴールの女性(若い母親が多い)ショミティのメンバーが、「シャプラニールの支援がなくなったらどうしますか?」といういささか意地の悪い質問に対して、「わずかとはいえ、グループで自発的に集めた資金があること、助け合いの仕組みの考え方と方法を学んだので、何とか自分たちで、生活改善を実現していく」と積極的に発言していたことがとても印象的であった。政府機関や大きな研究機関の関係者が長期の援助への期待を表明するなかで、援助の依存関係を真に「卒業する」道についての示唆を受けた気がした。また、単純にして一方的な「富裕な先進国」からの「貧困根絶のための援助」ではなく、世界構造の中で、「富裕な先進国」の生産や消費のあり方が「南北問題」の一部を作っているという認識や、今後より公正な社会関係を築いていくための、ODAとNGOの緊張感のある対話と協力について考える合同評価でもあった。

 今回の相互学習と合同評価実現のために協力を惜しまなかった、日本、バングラデシュ双方の政府関係者、JICAおよびOECFの職員・専門家、JOCV隊員の方々、シャプラニールの職員の方々、およびインタビューに応じてくれた各村のすべての方々に心からの感謝の気持ちを表明します。日本のNGO活動とODA事業の改善をもって、これらの方々のご厚意に応えたいと思います。


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