我が国は1997年に3.19億ドル(支出純額)を供与しており、フィリピンは我が国の二国間ODAの第5位の受け取り国となっている。また97年までの累計額は81.3億ドル(支出純額)で第3位である。そしてフィリピンにとって我が国は最大の援助国であり、受け取る二国間ODAの約5割(1996年のシェアは51.6%)を供与している。
フィリピンは近隣国として長年にわたり、我が国と緊密な関係を持ち、同国は貿易・投資等の面で我が国と密接な相互依存関係を有している。我が国はフィリピンの援助を効果的・効率的に実施するため、1993年度に「第2回フィリピン国別援助研究会」を開催し、「中期開発計画」(1993~1998年)等に対する今後の協力の方向性を提言した。さらに1994年に派遣した対フィリピン経済協力総合調査団等の政策対話を踏まえて、フィリピン援助方針を策定した。重点分野は大きく以下の4点にまとめられる。
1) 経済基盤整備
持続的経済成長に資する外国投資促進のために、今後とも経済基盤整備は重要である。特に、中期インフラ計画の重点分野であるエネルギー、運輸、通信の協力が重要である。
2) 産業構造の再編成に対する支援
産業の国際競争力強化のため、産業構造のリストラと農業開発は不可欠である。そのため(a)人的資源開発、金融面での支援を通じ、中小企業を中心としたサポーティング・インダストリー及び輸出産業育成への継続的支援を行い、(b)農地改革の進捗を踏まえての農地改革、産業開発及び農業関連産業の開発に対する支援を重視する。
3) 貧困対策及び基礎的生活環境の改善
フィリピンは全世帯の35%が貧困ライン以下にあり、貧富の格差が大きい。その解決のため、我が国の援助は以下のサブセクターに重点を置く。
(1) 保健・医療(含む人口・エイズ)
(2) 教育
(3) 基礎的生活環境(水道、下水、公衆衛生)
4) 環境保全
不法伐採、移動耕作、急速な都市化による森林減少などが環境に悪影響を与えており、持続的発展のために(a)天然資源の保全、(b)公害対策、(c)災害対策、(d)環境行政への支援の点に最大限配慮する。
(1) 一般無償資金協力・食糧増産援助
援助要請は各実施機関よりとりまとめ官庁である国家経済開発庁(NEDA)に提出され、案件の内容によっては、NEDA外国援助部、または、公共事業部で審査された後、外務省(対日要請に関してはアジア・太平洋局)を経て、在フィリピン各国大使館に提出される。
(2) 文化無償
援助要請は、各実施機関より、取りまとめ官庁である外務省(対日要請に関してはアジア・太平洋局)に提出され、審査の後、在フィリピン各国大使館に提出される。
(3) 技術協力
開発調査については各実施機関より、取りまとめ官庁であるNEDAに提出された案件は、特に緊急なものを除いては、各年度初めに一括して、優先度を付した上でNEDAより在フィリピン各国大使館に提出される。NEDAでは外国援助部が主管であるが、インフラストラクチャーのF/S等、公共事業に関連するものは、公共事業部で内容の審査を行っており、場合によってはNEDAが各実施機関に要請書の修正を指示することもある。
(4) 青年海外協力隊は下図のようになる。
(5) 有償資金協力
技術協力の場合と同様、各実施機関より、援助案件の取りまとめ官庁であるNEDAに提出された案件が、優先度を付けた上でNEDAより在フィリピン各国大使館に提出される。
無償資金協力については、従来から教育・人造り分野及び国民の福祉向上に直接資する基礎生活分野や農業分野に重点をおいているが。特に近年は、地方農村地域における経済・社会インフラ整備に資するプロジェクト等幅広い協力を実施している。
表/図2-1 わが国の対フィリピンODA実績、贈与分(1987年~1997年)
暦年 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 |
無償資金協力 | 66.89 | 70.40 | 115.32 | 91.15 | 110.19 | 112.34 | 158.23 | 138.41 | 121.08 | 91.14 | 68.21 |
技術協力 | 44.90 | 60.70 | 60.74 | 61.98 | 63.43 | 73.32 | 87.19 | 110.41 | 114.43 | 94.34 | 89.25 |
計 | 111.79 | 131.10 | 176.06 | 153.14 | 173.62 | 185.66 | 245.42 | 248.82 | 235.51 | 185.49 | 157.47 |
表/図2-2 我が国の対フィリピンODA実績政府貸付分(1987年~1998年)
暦年 | 1987 | 1988 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 |
支払総額 | 282.00 | 536.41 | 256.33 | 616.95 | 333.42 | 1200.13 | 798.99 | 586.85 | 604.48 | 571.34 | 512.71 |
支払純額 | 267.60 | 403.62 | 227.69 | 494.31 | 285.30 | 845.01 | 512.97 | 342.78 | 180.62 | 228.96 | 161.51 |
フィリピンに対する円借款承諾累計は1998年3月末現在で案件数209件、総額1兆4,694億9,500万円(債務救済分を除く)に達し、インドネシア、中国、インド、タイに続く第5番目の規模となっている。
技術協力では、従来から、農業、産業技術、医療、教育・職業訓練等幅広い分野における人造り協力を進めている。特に教育分野では、1994年6月より小中学校の理数科教師の再訓練を総合的に支援するための理数科教師訓練センタープロジェクトを中心に、専門家や青年海外協力隊の派遣を有機的に連携して協力する「パッケージ協力」を実施中である。
開発調査は、インフラ整備、地域開発、農業開発、水資源、鉱工業、電力、環境等多岐にわたる分野において実施している。
「1.4我が国の援助方針」で述べられた重点分野ごとに1987年から1996年まで実施されたプロジェクトを以下のようにまとめた。付録Aに重点分野別の援助実績を記す。まず1.経済基盤整備として、(1)道路網整備、橋梁建設、(2)港湾整備、(3)鉄道、(4)空港整備、(5)通信関連、(6)エネルギー、(7)災害予防、(8)都市計画策定、(9)海上交通の9つの分野に分類した。2.産業構造の再編成に対する支援としては(1)人的資源開発、(2)工業振興全般、(3)農業開発、(4)農業関連産業、(5)地域総合開発計画に分類した。 3.貧困対策及び及び基礎的生活環境の改善としては、(1)保健・医療(含む人口・エイズ)、(2)教育、(3)基礎的生活環境(水道、下水、衛生設備)、(4)貧困対策、(5)災害緊急援助、(6)文化・スポーツ関連を まとめた。4.環境保全については(1)天然資源の保全、(2)公害対策、(3)環境行政の3点でまとめた。