我が国のパラグアイに対する協力は、1952年に開始された研修事業から始まっている。その後、1959年には有償資金協力、1963年に開発調査、1970年にプロジェクト方式技術協力、1977年に無償資金協力、1978年には専門家派遣と青年海外協力隊員派遣が開始されている。
添付資料に見られる通り、我が国の援助はその後も継続実施されているが、1976年以降は、パラグアイにとって最大の援助国となっており、平均すると同国に対する二国間援助総額の60%~70%、国際機関を含めた援助総額の50%~60%を占めている。また、その援助分野は、農業、工業などの産業分野、通信、道路などのインフラ、保健医療、人的資源などのあらゆる分野に及んでいる。
1991年から1996年までの有償資金協力、無償資金協力、技術協力の供与額の推移は図2-1に示す通りである。技術協力はほぼ同水準で供与され、有償資金協力は年度毎にばらつきが見られる。無償資金協力については1993年度をピークに減少しており、既に打ち切りが決定している。
技術協力については、開発調査、専門家派遣、研修員受入れ、プロジェクト方式技術協力、青年海外協力隊を含む技術協力などの全ての形態(スキーム)が投入されている。
このような全ての形態の援助を、その形態別に案件数または人数で示すと図2-2の通りである。但し、案件、人数の実績数はそれぞれの資料に示された期間内の数値である。
援助形態 | 期間(年) | 案件数/人数 |
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1959~96 | 13件 |
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1959~96 | 62件 |
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1963~94 | 31件 |
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1978~96 | 289人 |
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1970~96 | 17件 |
技術協力 |
1978~97 | 595人 |
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1992~97 | 25人 |
青年ボランティア |
1985~98 | 66人 |
シニアボランティア |
1990~97 | 14人 |
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1952~94 | 1,422人 |
上記の援助形態別に、農業、インフラ、人的資源、保健医療、その他への配分を見ると、添付資料に示す通りであり、全体としては図2-3のようになる。
農林水産 | インフラ | 人的資源 | 保健医療 | その他 | ||
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金額比 | 15% | 85% | |||
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金額比 | 51% | 10% | 23% | 14% | 2% |
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案件数 | 29% | 16% | |||
技術協力 |
案件数 | 58% | 55% | 6% | 24% | 12% |
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人数比 | 45% | 27% | 7% | 16% | 5% |
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人数比 | 29% | 23% | 6% | 15% | 27% |
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人数比 | 33% | 35% | 13% | 19% | |
海外ボランティア |
人数比 | 16% | 16% | 20% | 48% |
我が国のパラグアイに対する経済協力の長期にわたる経緯に関しては、上述の通りであるが、そこで明らかにされているように、パラグアイに対する経済協力には次のような顕著な特徴があることが指摘できる。
まず、パラグアイに対する経済協力の主要分野としては、農林畜産・インフラストラクチャー、人的資源、保健・医療の4つの分野に重点がおかれてきていることが明らかである。この4つの分野の中でも、特に農林畜産の分野の比重が高く、この分野に対しては、プロジェクト方式技術協力の58%(案件数による比率)が行われており、また、専門家派遣に関しても45%(人数比)がこの分野によって占められている。同様に、海外青年協力隊の内の33%(人数比)、無償資金協力の内の51%(金額比)がこの分野となっている。
一方、インフラストラクチャーについては、この分野の経済協力の性格上有償資金協力の割合が高く、有償資金協力によるパラグアイに対する協力の85%(金額比)はインフラ分野において行われており、また、開発調査の58%(案件数)がこの分野において行われている。さらに専門家派遣の27%(人数比)、研修員受け入れの23%(同左)がこの分野となっている。
従って分野別の特徴としては、農林蓄産分野が圧倒的に重要であり、インフラストラクチャーへの協力が、これに次いでいると言うことができよう。他方重点分野の中でも、人的資源や保健医療分野では、開発調査が殆ど実施されておらず、有償資金協力もこの分野においては、利用されたことがこれまでない。ただし、人的資源分野では、青年海外協力隊による協力の内35%(人数比)が、この分野となっている。
第二の特徴として重要であると思われるのは、パラグアイに対する経済協力においては、きわめて多様なスキームによる協力が実施されてきていることである。すなわち、上にも述べたように、有償資金協力、無償資金協力および技術協力の全ての形態において広範に実施されてきており、技術協力においては開発調査、プロジェクト方式技術協力、専門家派遣、研修員受け入れ、青年海外協力隊、シニア海外ボランティア、日系社会青年ボランティア、日系社会シニア・ボランティアなどを通じての協力が実施されている。従ってパラグアイは、多様な分野について殆ど全てが我が国からの経済協力の形態による実施が行われている世界でも数少ない国の一つであると考えられ、異なるスキームによるプロジェクトのニーズに応じた適切な実施を反映するものであるとともに、その経験は、今後の我が国の他の諸国に対する経済協力にとっても非常に参考となると思われる。
パラグアイに対する他の援助国および国際機関の動向は添付資料に示す通りであるが、我が国の援助との関係で指摘すべきことは、パラグアイにとって我が国は、1976年以降最大の援助国となっており、対パラグアイ二国間援助総額の60%から70%、国際機関を含めた援助総額の50%から60%を占めていることである。しかも、その援助分野には他の援助国が行っていないような分野(例えば、インフラストラクチャー等については我が国と国際機関が主たる援助国となっている)も含まれている。
具体例としては、OECDのDAC加盟国の二国間援助総額は、1993年9,390万ドルであったが、その内の日本は7,850万ドルと84%を占めている。同様に1994年においては8,450万ドルの内7,030万ドルを占め、また95年においては、1億5,800万ドルの内7,760万ドルを占めている。一方、世界銀行や米州開発機関等の国際機関による援助を含めた場合においても、我が国は1993年において総額1億3,790万ドルの内、7,850万ドルと56.9%を占め、94年においては1億330万ドルの内、7,030万ドルと68.1%を占め、95年においては1億4,600万ドルの内、7,760万ドルと53.2%を占めたのである。