(1995年11月在パプアニューギニア大使館)
<案件概要>
1. 援助形態 :無償資金協力
2. 協力金額 :1.93億円
3. E/N署名日 :1990年2月20日
4. 相手国実施機関:キコリ資源管理公社
5. 協力内容 :沿岸漁民の漁獲能力の向上を図り、合わせて沿岸漁業を自給レベルから産業レベルに向上させることを目的として、船外機、製氷機、多目的船、刺網等必要な機材を供与。
<評価要旨>
1. 案件の維持・管理状況
プロジェクト実施機関とされたキコリ資源管理公社には予算措置、人員配置もなく、プロジェクトは、実際にはパプアニューギニア政府の漁業普及計画における水産集荷センターの施設及び人員をそのまま活用して実施され、現在も2名の州職員がプロジェクトを管理している。供与機材は比較的良好に維持・管理されているが、プロジェクトが95年以降活動を停止しているため、現在は使用されていない。また、供与された多目的船が正式の手続きなく転用されている。
2. 案件の選定・形成の適正度
本案件は当国の漁業振興政策に沿ったものであり、その目的は適切であった。ガルフ州は開発の遅れた地域であり、沿岸漁業振興の必要性は高かったことから、実施地域の選定も妥当であった。しかし、結果としてキコリ資源管理公社には適切な予算措置等がなされなかったことを考えると、同公社を実施機関としたことは適切であったとはいえない。
3. 当初目的の達成度及び効果
プロジェクトは91年~94年の間は活動し、地元漁民への船外機や漁具の販売等を通じ、沿岸漁業振興に寄与した。しかし、プロジェクト開始後、石油開発や森林伐採事業によるロイヤリティ等により漁民が現金収入を得られるようになったことも阻害要因となり漁獲量が当初の見込みを大きく下回るとともに、魚フィレット生産に民間企業が参入し競合するようになったことからプロジェクトは事業として立ち行かなくなり、95年以降は活動を停止した。
4. 環境への影響/WID(途上国の女性支援)への配慮
環境への影響は見られない。また、婦人を対象とした漁具修繕講習を実施し、漁業への婦人の参加能力向上に貢献した。
5. 今後必要とされるフォローアップないしアフターケア
プロジェクトの存続は困難であり機材等の適切な処理を行う必要がある。また、多目的船の有効活用ということを考えれば、正式の手続きを経て転用すべきと考える。
(本評価が行われた後、対応について検討を開始し、まず、プロジェクト遂行の責任者であるパプアニューギニア政府に対し、現状を確認させるとともに改善計画の策定を要請。その後、97年1月にフォローアップ調査を実施。この結果、供与施設・機材の現況、地元民間企業の活動状況、中央政府及び州政府の意向も考慮し、プロジェクトの所管を州政府に移管の上、多目的船を含め機材について、州政府が日本政府の事前了解を得つつ有効な活用を図っていくことを確認した。)