(1996年3月在インド大使館)
<案件概要>
1. 援助形態 :無償資金協力
2. 協力金額 :5.08億円
3. E/N署名日 :1988年4月2旧
4. 相手国実施機関:M. N. J. lnstitute of Oncology
5. 協力の内容 :ガンの早期発見、治癒率の向上を図るため、全インドに所在する地方ガンセンター等の5施設に対し全身用CTスキャナを供与した。(今次評価の対象は内ハイデラバード市のMNJガン病院への協力。)
<評価要旨>
1. 案件の維持・管理状況
本件CTスキャナの運営体制は診断放射線医学の担当医師を筆頭に9名からなる。機器の維持・管理に関しては市内の専門業者と年間メンテナンス契約を締結し、ほぼ2週間毎に定期検査を行っており、患者数ベースで年間4,000件以上との高いペースでスキャンを行っているにも拘わらず、故障もなく機器の管理状況は良い。
2. 案件の選定・形成の適正度
医療効果を高めるための診断用機材の整備は同国のガン対策の重要な課題であり、案件選定は妥当であった。また、M.N.J.腫瘍学病院はガン患者受け付け数において全インドで第2位の規模であり、各種放射線医療機材、超音波スキャナ、手術室等を備え、専門病院としての機能は充実しており、スキャナ供与対象機関として適正との印象であった。
3. 当初目的の達成度及び効果
本病院は同州の中央ガン病院であるため紹介患者が7~8割を占め、CTスキャナは早期発見に加えガンの進行度の判定、患部のサイズの把握、手術の可否の判断、治療の効果測定等の面において効果を発揮している。特に低所得層に属するガン患者に広く無料でCTスキャンを併用したガン医療を受ける機会をもたらした点が評価される。
4. 環境への影響
環境への影響は供与機器の性格上特に問題になるとは思われない。
5. 今後必要とされるフォローアップないしアフターケア
運営体制や維持・管理状態は良好であり、緊急のフォローアップの必要性はない。しかしながら、本件スキャナの使用頻度が極めて高く、社会・経済効果が大きいため、6年とされる耐用年数を経過した後、我が国に対し機器の交換等の支援要請がなされることが予見される。
6. 将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
消耗品であるチューブ(600万円相当)が州の財政負担となっているもようであり、援助効果の長期的発現を確保するためには、このような高額かつ必須主要な消耗品についてはできる限り耐用年数をカバーできる分量を当初援助パッケージに組み込んだ方が望ましいと考えられる。