クラウン・エ一ジェンツ
調査期間:1996年1月
案件名 | 協力形態 | 供与年度、金額 | 案件概要 |
ノンプロジェクト援助 | 無償資金協力 |
1991年度、 35.00億円 |
ザンビアの経済構造改善努力を支援するため、構造改革に必要な物資調達のために必要な資金を供与。 |
(1) はじめに
ノンプロ無償の主な目的は、被援助国政府の構造調整努力を支援し、経済開発へ貢献することであるが、1988年に日本がノンプロ無償を開始して以来、ザンビアに対してはこれまでに以下の5回のノンプロ無償が供与されており、ザンビアはこのプログラムの最大の受け取り国となっている。
87年度 35億円
89年度 35億円
90年度 35億円
91年度 35億円
93年度 35億円
今回の評価調査は、この中から91年度の供与分について、ノンプロ無償を受け取った個々のエンドユーザーに対し、ノンプロ無償がもたらした経済効果と、それに連動する地域経済における効果、といったミクロ的な経済への影響に焦点を当てて実施した。
ノンプロ無償で調整された商品や機材がもたらした直接的な効果を定着的に正確に測定することは難しい。機材が実際に被援助国へ到着してからそれらの機材が十分に稼働し効果が発現するまでに時間差があることから、機材調達の完全な効果は、かなりの長期間にわたって現れる。このため、他のドナーからの資金や自己会計による資金により相当額の投資をしてきたエンドユーザーにおいては、本ノンプロ無償のみの効果を定量的に測定することがさらに困難になる。
しかし、エンドユーザーから回収したアンケート結果から、ノンプロ無償の効果として、既存の労働者の雇用確保に加え、新規雇用の創出、売上げの著しい増加、生産性向上や競争力強化の助長、そしてそれらにより輸出能力を開発する機会が増加され、最終的には利益のもたらしたということが明らかになっている。
(2) 91年度ノンプロ無償の概要
供与金額 35億円
エンドユーザー数 47
最小配分金額 490万円
最大配分金額 6億9000万円
E/N署名日 1992年3月6日
当初の使用期限 1993年3月26日
第一回延長期限 1993年9月26日
第二回延長期限 1994年3月26日
支出報告書には、資金提供の準備が整ってから9ケ月以内に32億円(91.4%)以上の金額が委託されたと報告されている。しかし、エンドユーザーからプロジェクト型の資機材調達の要求が多かったことや、円高という為替相場の変動等により、資金を完全に使用するために当初の使用期限から、さらに6ケ月の延長が2回必要になった。
35億円という本件の供与金額は、E/N署名時点では2,700万米ドルに相当していたが、円高により18ケ月以内に、その価値は3,400万米ドルにまで上昇し(25.9%の上昇)、機材の注文先の多くへは米ドル支払いとしていたため、本無償の購買力は効果的に向上した。
(3) ノンプロ無償資金の配分プロセス
1992年3月27日のタイムズ・オブ・ザンビア紙に本件ノンプロ無償に関する広告が出され、地元企業に対し補助金についての助言や受取資格基準を説明し、関心のある団体はNCDP経済局へ申請するよう誘致した。1992年4月18日を申請期限とし、関心のある団体はルサカのクラウン・エ一ジェンツ事務所から手続方法を知ることが出来た。広告に対する地元企業の反応は極めて良好で、100を越える申請がNCDPにあり、申請金額の総額は1億ドル以上であった。
全ての申請はザンビア当局によって十分に検討され、47の企業が本件ノンプロ無償の受取先として選定された。このほとんどが、既存の製造工程の改良、或いは事業の多様化や拡大を希望している民間の中小規模の企業であった。選定手続き中、非伝統的分野において輸出能力の開発を目的としている企業に対して、特に注意が払われた。というのは、当時、減少していた銅輸出への依存度を削減するために非伝統的な輸出品の開発を政策として有していたザンビア政府にとって、このような企業を選定することは、高い優先度をもっていたのである。
また、本無償の19.25%相当額が、大旱魃による影響の緩和のため、日本政府の承認によって特別に肥料の緊急購入に割り当てられた。
(4) 評価調査の方法
本調査はクラウン・エ一ジェンツのルサカ事務所から、ファックス又は手渡しで質問票をエンドユーザーに送り、最終的に、47の業者のうち26の業者から回収した(55%)。
また、これらのアンケートの他に、エンドユーザーである9業者の代表者と会議を行い、意見を聴取した。
なお、今回得られた情報はエンドユーザーより直接得入手したものであり、その正確さについて特に裏付け調査を行ったものではないため、数字については、ある程度、単に傾向を暗示していると認識すべきものであることに留意する必要がある。
回収されたアンケートやインタビューの結果から、本件ノンプロ無償が多くのエンドユーザーにとって非常に大きな効果があったことは明らかである。また、本プログラムの融通性、代金の返済条件、そして調達業者が入札に公平に参加したことについて、エンドユーザーから高く評価されている。
返済条件が緩い資金の提供は民間部門の活動を奨励するために効果的な方法であったことは明らかである。しかし、長期的な効果を明確にするためには、今後も追跡調査を実施することが必要である。
また、ノンプロ無償の効果については、見返り資金が被援助国側により積み立てられたかという点からも検証しなければならない。見返り資金を当該国の様々な社会・経済開発プロジェクトへ利用することによっても、現地の経済に大きな影響がもたらされるからである。
資機材の調達プロセスについて、資機材の入手時期に関し、実際の調達手続きとエンドユーザーの希望との間にミスマッチもみられた。このため、本件の後に実施された93年度のノンプロ無償の際には、応募希望者が申請をする前に、現在では、このミスマッチは大いに削減されている。
手続きに関する十分な説明と透明性についての要望と共に、本無償がアンタイドのため融通性があることについて、エンドユーザーから評価されている。ノンプロ無償においては、低価格で高品質の資機材を調達するために世界中の供給基と交渉する必要があるため、必然的にいくつかのエンドユーザーの期待に添えないだけの長い時間を要してしまうことも事実であるが、十分な説明・透明性の確保と迅速で効率的な実施との間の最適なバランスを保ってゆくことが重要である。
(1) 効果
1) ノンプロ無償の目的
本件ノンプロ無償において、以下の効果を目的としてエンドユーザーの選定・資金の割り当て等がなされた。
・製品の製造状況の改善又は自立発展のために原料を導入し、既存の機材の利用状況を改善する。
・既存の機材のスペアパーツの導入。
・既存の製造行程の拡張・改良を行い、企業に対し新たな国内市場へのアクセスする機会を与える。
・新規事業の開始。
・旱魃の影響の緩和と緊急食糧援助プログラムの支援。
2) 穏やかな支払条件
支払条件の緩やかさ、特に、利子がザンビアで一般的な桁外れなものではなかったため、エンドユーザーにとっては貴重な助けとなった。本プログラムにより事業計画の多くが実施されており、本プログラムによる貴重な支援がなかったならば、計画の事業化は実現されなかったであろう。
3) アンタイドの性格
アンタイドであることにより、エンドユーザーは調達国に関わらず最良の供給基から資機材を自由に購入することができた。そしてその効果は多くの事業に非常に大きな影響を及ぼした。資機材は合計31もの国から調達されるが、このことは、本当の国際的な援助というものを表していると言えよう。例えば、或るエンドユーザーでは、資機材はベルギー、南アフリカ、日本、英国、米国から調達し、資金は日本から得、そして調達に関する専門知識や割当金の管理技術は英国等から得ており、まさに国際的な援助となっている。
(2) ザンビア経済への効果
本調査自体は、個々のエンドユーザーに対するミクロ的な経済的影響を確認しているにすぎず、評価結果の定量化も困難ではあるが、ノンプロ無償が全体的にザンビア経済へ大きな効果があったということは明らかである。ノンプロ無償は、金額的には実はあまり大きいものとはいえないが、本無償を援助全体のローリングプログラムの一部として捉えると、1987年の開始以来、ザンビアヘのノンプロ無償は疑いなく非常に効果的であったといえる。エンドユーザーから入手した統計資料の多くも、売上の増加、新規雇用の創出、新市場への接近等の点で、その効果を示している。
本プログラムの明確な効果は以下の通りである。
・民間部門の活動奨励と投資プログラムヘの支援
・輸入国内消費のための現地製造品の入手が容易になったこと
・生産性の向上(回答したエンドユーザーの86%が生産性が25%以上上昇)と収益性の
向上(同61%が10~50%収益が増加)、そして、質問票に回答したエンドユーザーの 総売上高は190億円を越えている。
・輸入成長と非伝統的産物への多角化(回答したエンドユーザーの43%が10~100%輸 出レベル上昇)、これは政府の重要な政策であり、多くエンドユーザーがノンプロ無 償で購入した資機材により自由競争に対する競争力が強化された。
・雇用創出(質問票に回答したエンドユーザーの77%が雇用水準が10~100%上昇)、これにより、回答のあった26のエンドユーザーの雇用者の総数は、3,000名を越えた。
・小規模工業への支援(同25%が、雇用者が100名以下)
・食糧生産事情と食糧保証の改善
・ザンビアの道路輸送システムヘの改善
なお、93年度のノンプロ無償への応募状況は500%の過剰応募(400以上の企業が応募した)であり、地元企業の本援助への期待の高さを示している。
(3) 問題点
1) 知名度不足
本件は、ザンビアにおいて民間部門に対して資金提供を行った最初のノンプロ無償であった。このため、ザンビアの地元企業はその手続方法やプログラム自体の理論についての認識が十分ではなく、調達機関が十分に説明し、理解を得る必要があった。
2) プロジェクトタイプの要望
調達された資機材のいくつかは、標準国際貿易分類(SITC)コードからは適当であったが、F/S、技術援助そして研修生受入といった他の援助形態の方がより適している、調達品受渡方式のプロジェクトに近いタイプのものもあった。
このような複雑なプロジェクトタイプのものをノンプロ無償の対象として含むと、多くの場合、調達機関が非公式なコンサルタントやプロジェクトマネージャーといった役割を果たさなければならず、特別な責任を課されることになる。このような責務が割当てられると、問題が発生しないことはほとんど無く、調達機関の何カ月間にもわたる支援が必要になることもしばしばある。そして、時にはそれが数年間にわたることもある。また、このようなプロジェクトタイプのものは、コミットしてから支出するまで、時間的にも必然的に遅れてしまう。
(4) 今後のノンプロ無償のあり方
上述した問題点の一部は、現在ほぼ完了している93年度のノンプロ無償の実施の際に
既に改善されており、主な例は以下の通りである。
・資金配分プロセスにおける透明性の導入
・手続き説明用のガイドブックを導入する等、エンドユーザーとのコミュニケーションの改善
・エンドユーザーから要望や需要に関する活発な意見聴取
(5) 調査により判明した他の問題
1) 見返り資金の積立
96年度2月7日時点でのエンドユーザーからの情報によれば、総割当額に対し、現地通貨ベースで41.5%が財務省によって見返り資金として積み立てられている。
しかし、代金未払いのエンドユーザーは、元々の割当額の他に罰金を支払うこととなってはいるものの、代金と罰金の合計額を支払うことができていないエンドユーザーも数社ある。
2) 未実行業務
クラウン・エ一ジェンツから調達適格証明書が発行された247の品目のうち、実際には71品目(29%)がエンドユーザーによりキャンセルされた。この主な理由は、エンドユーザーの本来の要求の変更と資金不足によるものであった。
3) 適格性
ノンプロ無償においては、一種類の品目に費やすことができる最大の金額は総援助額の25%となっている。本件では、ノンプロ無償の融通性を反映し、資金は広く分割され多様な機材や商品が発注された。
4) 供給元企業の現地事務所からの支援
今回の評価においては、特に、資機材供給元企業の維持管理能力について注意深く調査した。この能力は、車両の入札について評価する時や、当該資機材が据付や、場合によっては基礎的な研修サービスを必要とする場合の重要な要素であったからである。供給元企業の現地事務所に対するエンドユーザーからの意見は大いに好意的なものであった。
エンドユーザー一覧
エンドユーザー名 |
資金割当額 (単位:千円) |
業種 | 質問票回収の有無 | |
1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. 20. 21. 22. 23. 24. 25. 26. 27. 28. 29. 30. 31. 32. 33. 34. 35. 36. 37. 38. 39. 40. 41. 42. 43. 44. 45. 46. 47. |
Alfa Investments Ltd Amanita Zambiana Ambrosia Export Ltd Animal Health Services Ltd APG Motors & Transport Ltd Babbar Tractors Ltd Badu Investments Boart Zambia Bridge Link Co㎜odities Ltd Chemical & Engineering Chimumbwa Farms Ltd Chisamba Station Farm Ltd Enviro-Oil & Colourants Ltd Guardian Motors Ltd Honda Zambia Ltd Indeni Petroleum Refinery Ltd Isanya Milling Ltd Jaulani Company Ltd Kabwe Industrial Fabrics Ltd Krige Sons Ltd Leyland DAF Zambia Ltd Limbembe Industries Ltd Lumenaire Electrical Services Lusaka Industries Ltd Mansa Batteries Ltd Mazembe Tractor Co Ltd MDM Engineering Co Ltd Ministry of Agriculture (maize) Ministry of Energy & Water Devlp't Mobile Motors Zambia Ltd Moped Investments Mutonde Merchants Zambia Ltd Mwachisina Investments Ltd National Drum & Can Co. Ltd Nissan Parts Distributors Ltd Noyi Bazi Exports Ltd Plywood Manufacturers Ltd Polypackers Ltd Reunited Engineering Ltd RDS Bisiness Machines Ltd Solitex Industries Sun Pharmaceuticals Ltd Sunvest Ltd United Bus Co of Zambia Vacuum Formiing Industries Ltd Woodgate Holdings Ltd Zambia National Farmers' Union |
10.0 40.5 38.0 20.0 74.8 40.0 4.9 46.5 22.5 101.3 53.5 10.0 257.0 97.5 10.0 61.0 22.5 12.5 HO.0 14.0 250.O 10.0 34.5 135.0 21.0 82.5 159.5 690.0 45.0 39.0 50.0 32.0 30.0 22.0 25.0 27.0 60.O 117.0 13.0 33.0 139.5 85.0 95.0 23.0 91.4 50.O 127.4 |
貿易業 製造業 製造業 貿易業 製造業 貿易業 貿易業 貿易業/製造業 運送業 貿易業/製造業 運送業 製造業 製造業 運送業 貿易業 製造業 製造業 貿易業 製造業 製造業 運送業 製造業 貿易業 製造業 製造業 貿易業 製造業 官庁 官庁 運送業 運送業 運送業 製造業 製造業 運送業/貿易業 製造業 製造業 製造業 運送業/貿易業 貿易業 貿易業 貿易業 貿易業 運送業 製造業 貿易業 貿易業/運送業 |
有 有 有 無 有 無 無 有 無 無 有 有 有 有 有 無 無 有 有 無 有 有 無 無 無 無 無 有 無 有 有 無 有 無 有 無 有 有 有 無 無 無 有 無 有 有 有 |
合計 |
3,585.0 |
品目の原産国の内訳(価格ベース) | 調達品目一覧 | ||
国名 オランダ 日本 トルコ 米国 南アフリカ ドイツ 英国 イタリア 他のEU諸国 韓国 インド 台湾 ベルギー フランス 香港 スウェーデン 中国 ジンバブエ イスラエル アイルランド 豪州 スイス ブラジル カナダ フィンランド スワジランド エジプト オーストリア ボツワナ ポーランド ノルウェー |
% 19.07% 15.11% 11.30% 8.53% 7.27% 6.72% 6.67% 5.06% 4.79% 2.10% 1.79% 1.76% 1.74% 1.52% 1.46% 1.45% 1.13% 0.70% 0.45% 0.21% 0.21% 0.21% 0.21% 0.20% 0.14% 0.10% 0.06% 0.01% 0.01% 0.01% 0.01% |
品目 肥料 貨物自動車 その他の特定工業用機械設備 車輌部品・付属品 ポリエチレン等 鉄鋼のユニバーサルプレート 鉄鋼の棒 土木機械 食物工業用機械 農業用機械 ひも、網 トラクター 手道具類・機械工具 トレーラー 化学工業生産品 その他の道路走行車輌 繊維・皮革用機械 液体ポンプ その他 |
% 20.56% 19.82% 19.68% 6.65% 6.20% 3.02% 2.97% 2.39% 2.36% 2.07% 1.67% 1.63% 1.36% 0.87% 0.75% 0.71% 0.68% 0.60% 6.01% |