IV.現地調査等における効果評価
1.現地調査に参加した有識者からみた評価
援助が途上国の経済発展にどの程度役立っているのかという議論は、援助を実施している側のみならず援助受取側にとっても基本的な問いである。従来から多くの人々がこの問題に強い関心を示してきたが、日本の場合、国民一人当りの負担に見合った効果を上げているのか、日本国内の不況と財政赤字の中でなぜ援助を継続しなくてはならないのか、といった視点から、援助の今後の方向性に関する議論が盛り上がっている。特に対中援助に関しては、中国経済が高成長を続けていること、援助が軍事力強化に結びつく懸念があること、援助規模が非常に大きいことなどを背景にして、活発な議論がなされており、各方面からも注目を集めている。
現地調査は有識者、調査機関である三菱総合研究所、外務省担当官、在中国日本大使館からなるミッションによって2000年9月~2001年1月に渡って、北は長春、南は南寧、西は重慶、東は上海までに及ぶ広範な地域をカバーして、下記のように計4回実施された。幸いにも在中国日本大使館の協力を得て、事前に調査票を発出し、現地関係機関(中央、地方)の他、円借款、無償援助、技術協力のプロジェクトサイト等合計約40カ所で本格的な訪問・聞き取り調査などが行われた(延べ現地調査日数は30日)。
調査団の訪問都市
第一回調査団(2000年9月中旬~下旬):北京-天津-重慶(周辺農村部含む) |
第二回調査団(2000年9月下旬):長春-審陽-大連(周辺農村部含む) |
第三回調査団(2000年10月初旬~中旬):上海-蘇州-南寧―西安-北京 |
(周辺農村部含む) |
フォローアップ調査団(2001年1月中旬):北京 |
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調査団メンバー(有識者のみ、事務局含まず)
中兼和津次 東京大学大学院教授(第一回調査団) |
村瀬 広 (社)国際善隣協会(元荏原製作所部長)(第一回調査団) |
高瀬 国雄 (社)国際開発センター理事(第二回調査団) |
加藤 弘之 神戸大学大学院教授(第三回調査団) |
稲田 十一 専修大学教授(第三回調査団) |
稲垣 清 (株)三菱総合研究所香港支社長(第二回調査団)
(フォローアップ調査団時は三菱総合研究所主席研究員) |
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注:役職は2000年9月現在
ここでは対中経済援助の中国側所管中央官庁に対し、中国では日本の対中援助の経済効果をどのように分析・評価しているかについて、先に送付した質問表の回答を受領し、効果を把握することを中心に作業が行われた。
具体的な訪問機関・サイト訪問・インタビューの詳細は、別添資料(2)および(3)のとおりであるが、有償資金協力担当の財政部、無償資金協力担当の対外経済貿易合作部および技術協力担当の科学技術部、マクロ経済計画担当の国家発展計画委員会の担当者と意見交換を行ったほか、中国側有識者(前国際貿易研究所所長)や日本の国際協力銀行、国際協力事業団の北京代表、日本大使館経済部、青年海外協力隊員との意見交換も行い、従来必ずしも行われてこなかった政策レベルから草の根レベルまでカバー幅広い現状把握を行った。
(このほか、後日、財政部、国家発展計画委員会、中日青少年交流センター、十三陵発電所のサイトを視察した、上記ミッションの情報収集のフォローアップ調査団も派遣した)。