カンボジアでは国民の68%が上水の供給を受けておらず、また下水道が完備されていないのは85%に上るといわれている。我が国は1993年プノンペン市内の上水道の整備の調査を行い、マスタープランを作成した。それに基づいて、無償資金協力とコンサルタントによる技術支援を提供し、具体的には浄水場の修復を経て、維持管理の要員を育成してきた。プノンペン市水道公社7に対してはフランス、ADB、世界銀行、UNDPが支援を実施しているが、他に計画も法整備も整っていないので全て我が国が作成したマスタープランに則って各ドナーが支援を実施した。その結果プノンペン市水道公社は1993年当時から飛躍的に発展した。すなわち、1日の給水量を1993年時の7.5万m3から12万 m3に増加し、2003年には24.5万 m3にまで増加する計画である。更に漏水率も60%から47%に減少され、2003年までに25%に減少させる計画である。また料金徴収率を上げるため、給水量を測定するメーターは1993年時は装備率12.6%であったが現在は6万のコネクションの内、98%がメーターを装備している。
総裁のリーダーシップのもと、料金改訂による収入増や料金徴収率を格段に向上させ、黒字を達成している。公社職員の給与水準は生活するには十分であり、職員のインセンティブも高い。上水道運営に関しては国際開発金融機関が組織の民営化を強く迫るほど、技術・運営・管理のレベルが高い。一方、下水の管理等でまだまだ地道な技術協力を必要とするレベルにとどまっており、我が国に対する期待は非常に大きい。
プノンペン以外ではシハヌークヴィルが世界銀行の支援で水道整備を実施中である。他の主要都市の一部も水道整備の計画が進んでおり、シェムリアップについても我が国の開発調査が実施されている。現在、プノンペン市民の60%、シハヌークヴィル市民の15%が水道にアクセス可能とされているが、その他の農村に居住する約900万人には衛生的な水へのアクセスが全く存在しない。
衛生的な飲料水の確保はBHN(Basic Human Needs)の観点から多くのドナーが協力しており、表4-4のようにフランス、UNDP、UNICEF、WHO、ADB、中国などがプロジェクトを実施している。
表 4-4 現在実施されている給水関係のプロジェクト
プロジェクト名 | 期間 | 援助国(機関) | 援助額 |
プノンペン上水道復旧 | 1992-2002 | アジア開発銀行, フランス,日本,UNDP | 125,313 |
農村給水 | 1996-2002 | フランス(AFD); 中国 | 57,600 |
都市給水開発 | 1995-2000 | UNDP, 世界銀行 | 1,500 |
Prey Nop河川堤防プロジェクト | 1998-1999 | フランス(CFD/AFD) | 4,320 |
中規模灌漑復旧 | 1998-1999 | UNDP/CARERE; EU | 3,300 |
Strung Chinit水資源開発 | 1999-2003 | アジア開発銀行(1998) | 10,000 |
メコン河下流域の灌漑システム改善 | 1999-2001 | 日本 | 10,000 |
プノンペン上下水道 | 1998-2001 | アジア開発銀行, ニュージーランド | 31,180 |
7 Phnom Penh Water Supply Authority (PPWSA) March 1999, Annual Report 1998, Phnom Penh Water Supply Authority (PPWSA) March 1999, Report on Improvements in the State of Phnom Penh Water Supply Authorityを参照