カンボジアの電力部門は内戦時にほとんど全ての設備が破壊され、十分なメンテナンスも行われてこなかったため、国民の僅か10%程度が電力を供給されるという状況に留まっている。また一人当たりの電力使用量も35kWhと近隣諸国と比べても最低の水準である。燃料である原油、ディーゼル、ガソリンの全てを輸入に依存しており、そのため電気料金が近隣諸国と比べ割高になっている。現在までプノンペン中心に22の主にディーゼルを中心とした火力発電システムがある。水力発電についても潜在力があるとされるが、以前の設備はまだ機能していない。
電力消費の70%はプノンペンである。地方のエネルギー供給源の90%は木炭などの森林資源である。
経済発展に電力供給の改善が不可欠であるが、援助のみでは絶対的に資金量が不足することから民間投資も導入している。具体的にはIPP(独立電力生産者)方式でプノンペンに35MWのプラントを建設した例があり、続いて60MWのプラント建設も計画されている。現在までプノンペンの発電容量はIPPの35MWを合わせて85MWで、州都の発電容量の合計は37MWである。電力供給の全国的規模のネットワークは未整備である。マスタープランによると発電容量を拡大する計画は2000年に150MW、2010年に477MW、2016年に746MWと述べられている。
援助に関しては、世銀が策定した援助・投資プログラムが基本方針となり、我が国のほかに、ADB、世銀、フランスなどがプロジェクトを実施している。プノンペン市内の近代的な配電網システムは各ドナーの資金を活用した結果、1999年末までには完成する予定で引き続き我が国等がカンダ-ル州地域まで配電網を延長していく計画である。現在でも送電ロスは20%程度にまで低下しており、現在の計画が完成すれば15%まで改善されるとしている。
カンボジア電力公社に対する援助は電力不足の中、我が国はいち早く発電所の改修のため無償協力を行い、オペレーターの研修を実施したことが非常に高く評価されている。その後、フランス、ADB、世銀等の支援を受け、停電の改善・電化の普及を行うとともに、料金改訂や徴収率の向上に努力し、財務状況が好転している。具体的には従量制の電力料金制度を導入し、ホテルや産業用料金を高く、個人の小規模ユーザーを低く料金を設定した。これは貧困対策であるものの、投資家からは不評である。またメーター設置についても我が国の無償資金協力などの支援で性能の高いものが普及したため、正確に電力料金の徴収が可能になった。多くの公的機関で指摘されているような余剰人材の問題は、今後の地方展開に必要な人材を考えると存在しない。課題は職員の研修を新人のみならず、全職員に徹底的に行い、常に技術向上に努めるシステムを確立することである。
現在電力公社は国営企業から独立した商業ベースで運営されることが定められた。しかしながら、農村電化については計画ベースではあるものの、今後どのような方法、資金源で実施するか等課題は多い。
表 4-3 実施された電力関連プロジェクト
プロジェクト名 | 期間 | 援助国・機関 | 投資資金 | プロジェクトの目的等 |
電力復旧プロジェクト | 1995-1999 | アジア開発銀行 | 28,200 | |
電力システム復旧事業(MIME) | 1996-2000 | アジア開発銀行 | 35,013 | |
水力発電所復旧 | 1995-1997 | オーストリア | 9,503 | コンポンスプー、プノンペンへの電力供給量11メガワット増加 |
キリロム発電所復旧 | 1998-2001 | オーストリア、スウェーデン | 26,700 | |
カムチャイ水力発電 | 1995-1999 | カナダ(CIDA) | 1,412 | |
電力復旧プロジェクト | 1995-1998 | 世界銀行 | 40,000 | |
電力システム復旧事業(MIME) | 1996-2000 | 世界銀行, USAID | 46,320 | |
電力システム拡大事業(MIME) | 1998-1999 | 日本 | 33,400 | |
プノンペン・シハヌークビル配電網整備 | 1991-1997 | フランス | 2,128 | |
シェムリアップの電力通信の緊急復旧 | 1994-1997 | フランス | 1,802 | インフラ復旧の為の緊急融資 |
電力復旧 | 1996-1998 | フランス | 450 | |
カンボジア電力近代化計画 | 1997-1998 | フランス | 471 | |
プノンペン市配電網 | 1997-1999 | フランス | 3,275 | |
配電網プロジェクト | 1997-1999 | フランス | 3,275 | |
電力会社の組織強化 | 1997-1999 | フランス | 470 |
出所:Council for the Development of Cambodia(CDC), 1999 Development Cooperation Report (1998/1999): Annex, PhnomPenh.
CDC/Cambodian Rehabilitation and Developm ent Board
Royal Government of Cambodia.1999.Socio-Economic Development Requirements and Proposals