カンボジアの運輸インフラは長年の内戦により、大きな損害を被り、適切な修復、維持管理が行われなかった。その結果、極めて深刻な状況にある。長期的にはインフラ投資資金の国内資金の活用比率を高めながら、カンボジア政府の計画立案、管理・運営の下に実施されることが理想的である。政府は1999年に道路建設・維持管理資金調達を目的とするガソリン税を導入したが、徴収制度、組織が未成熟なこともあってか、徴収率は現在まであまり芳しくなく、国内資金の調達のめどはたたない。現在は国際社会からの援助なしに運輸インフラ・サービスを改善できる状況にないのが実情である。現在まで道路に関して実施された援助プロジェクトは以下の表のようにまとめられる。
表 4-2 実施された道路建設プロジェクト
プロジェクト内容 | 援助国・機関 | 投資資金 | 実施年度 | ||
国道1号線 | プノンペン-ネクルン | 復旧56km | ADB | 1.5MUS$ | 94‐95年 |
(アジアンハイウィ) | ネクルン-ベトナム国境 | 復旧106km | ADB | 5.0MUS$ | 96-02年 |
国道2号線 | プノンペン-タケオ | 復旧63km | ADB | 1.2MUS$ | 94‐95年 |
国道3号線 | プノンペン-アンタソン部分 | 復旧63km | ADB | 1.2MUS$ | 94‐95年 |
カンポート-ビールレン部分 | 復旧63km | ADB | 0.3MUS$ | 94‐95年 | |
国道4号線 | プノンペン-シハヌークビル | 改修217km | 米国 | 50.5MUS$ | 96年完了 |
国道5号線 | ポイペト-シソフォン | 復旧49km | タイ | 144.0Mバーツ | 94年完了 |
シソフォン-バッタンバン | 復旧80km | UNTAC | 0.4MUS$ | 93年完了 | |
バッタンバン-プルサット | 復旧105km | UNDP | 0.4MUS$ | 93年完了 | |
プノンペン-シソフォン | 復旧360km | ADB/UNDP | 14.1MUS$ | 92‐95年 | |
プノンペン-バッタンバン橋梁 | 復旧334km | ADB/オーストラリア | 12.5MUS$ | 92‐96年 | |
国道6号線 | チュンチュノック-スクン | 復旧30km | ADB | 2.0MUS$ | ‐95年 |
スクン-カンタウ | 復旧30km | ADB | 2.0MUS$ | ‐94年 | |
チュルイ・チョンバー橋 | 復旧710km | 日本 | 29.9億円 | 94年完了 | |
プノンペン-チュンチュノック | 改修44km | 日本 | 30.1億円 | 95年完了 | |
スノルチン・スクーン | 改修28km | 日本 | 24.68億円 | 97‐99年 | |
国道7号線 | スクーン・コンボンチャム | 改修45km | 日本 | ||
道路建設センター | 建設機材供与 | 日本 | 20.8億円 | 94‐96年 | |
州道11号線 | ネクルン-プミチェン | 復旧90km | ADB | 3.0MUS$ | ‐95年 |
1997年末現在、約500kmの道路が再建され、約500kmが復旧したとされているが、全国に広がる国道の全長は12,300kmとされており、完全復旧までの道のりは長い。しかしながら、我が国が支援したチュルイ・チョンバー橋と国道6A号線の建設、シハヌークヴィルへと繋がる4号線、その他にも1、2、3、5、7号線の建設などが進んで主要都市を繋ぐ大動脈が改善され、流通改善に貢献している。援助資金を用いての主要幹線国道の緊急リハビリはある程度進展したが、今後はこれらを如何に良好に維持・管理していくかが重要な課題であり、カンボジア政府の努力が強く望まれる。
水運ではプノンペン港とシハヌークヴィル港が重要な役割を果たしている。プノンペン港については日本の無償支援と、世界銀行による技術協力が行われ、シハヌークヴィルは海上輸送の重要な拠点なため、有償資金協力の復活案件第1号として準備が進められている。
航空輸送ではプノンペン国際空港がBOT方式で改善され、アンコールワットの観光拠点であるシェムリアップ空港の改修については1996年からADBのローンが供与されている。