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第3章 カンボジアの開発の動向

1. カンボジアの開発計画

(1) カンボジアの開発計画の概要

 カンボジアには国家5ヵ年計画として、1996-2000年の第一次社会経済開発プラン"SEDP: Socio-Economic Development Plan"が策定されている。国家最大の目標を貧困撲滅とおき、以下のような内容となっている。

1) 中心課題

 第1次SEDPは、カンボジアの社会経済問題の根幹にあるのは貧困問題であり、貧困の軽減・撲滅こそ、政府が取り組むべき緊急課題であるとの認識に立って策定された計画である。したがって、当計画の中心課題は貧困の軽減におかれている。当計画では、総世帯の38%(=総人口の30%)が貧困ライン以下の生活水準であり、その9割が農村部に居住していると推計されている。したがって、カンボジアにおける貧困問題の軽減のためには、農村における貧困の解消が最優先されるべきであるとの基本理念のもとで、農村開発に焦点を当てた計画となっている。

2) 開発戦略

 1994年に作成されたカンボジア復興開発プログラム(NPRD: National Programme to Rehabilitate and Develop Cambodia)と同様に、カンボジア政府としては市場経済の枠組みを堅持する旨が明記されている。しかし、同時に、カンボジア経済の現状においては、経済成長の波及効果に頼るだけでは、貧困問題の早期解決は望めないとして、保健医療サービス、上下水道の整備、初等教育の普及などの各種プログラムを農村部において重点的に展開すること、および、貧困層の中でもさらに弱者とみなされる、片親家族、孤児、身体・精神障害者、難民、少数民族、などを対象としたプログラムの実施というような、焦点を絞った活動が必要であるとしている。したがって、農業を含む産業開発、経済インフラストラクチャーの整備と並んで、教育と保健医療サービスの改善に重点がおかれている。

 そして、このような貧困対策プロジェクトを広範囲かつ継続的に実施するための資金を確保するためには、経済成長が不可欠であるとの認識を示している。そのために、政府は、年率7-8%というかなりの高い実質GDP成長率を目指すと述べている。以上のようにカンボジア政府の第一次社会経済開発プラン(SEDP)の内容は貧困削減を主眼としており、次節で述べるDAC新戦略の目標に沿ったものとなっていることから、我が国の援助も、この計画の円滑な実施を支援する方向に進めている。

表 3-1: 社会開発の2000年までの主要目標

  現時点までの推定 2000年までの目標
妊産婦死亡率 473人(新生児10万あたり) 300人(新生児10万あたり)
乳児死亡率 115人(新生児千人あたり) 80人(新生児千人あたり)
5歳未満の死亡率 181人(新生児千人あたり) 120人(新生児千人あたり)
5歳未満の低体重児 40% 40%
(教育分野)
・初等教育を終了して読み書きと算数が十分にできるようになる子供達 ・5年間で第5学年を修了するのは、小学校在籍者の13% ・12歳児の65%が第6学年を修了し、読み書きと算数が十分にできるようになる。
・後期中等教育の第1学年における女子の就学率 ・後期中等教育の在籍者のうち女子は19% ・16歳女子の50%が第10学年に入学
(保健医療サービスの利用可能性)
・訓練された要員による介助のある農村部の分娩 ・農村部における50%以上の分娩は家庭で行われ、大部分は伝統的助産婦(TBA)によって介助される。 ・農村部における70%の分娩を訓練された要員に介助されるものとする。
・バーススペーシングに関する情報・サービスを得られるか否か ・サービスを農村部に拡大しつつある
・避妊普及率16%
・全国で実施
・避妊普及率20%
・1歳児予防接種率
-結核
-ポリオ
-3種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風)
-はしか
(1997年)
-81.66%
-69.86%
-69.89%
-68.12%
・1歳児の80%以上がすべての予防接種を完全に受けるようにする
安全な水の利用 農村部人口の26%、都市部人口の65% 農村部人口の65%、都市部人口の90%
衛生設備の利用 都市部人口の74%、農村部人口の6% 都市部人口の100%、農村部人口の20%

出所:Socio Economic Development Requirements and Proposals (January 1999)

(2) カンボジアの援助受入れ体制

 カンボジアでは公的援助が開始される以前の段階から、全体的な援助の調整を行うための機能が十分整備されていなかった。このため1995年に援助受入の窓口を一つにして活動の優先付けを行う援助調整・運営機関として、カンボジア開発評議会(Council for the Development Cambodia: CDC)の下に、カンボジア復興開発委員会(CRDB: Cambodian Rehabilitation and Development Board)を設立した。カンボジア開発評議会は各省が外国からの支援を求めて案件形成してきたものについて調整・管理し、政府内部機関との協議と援助機関との協議のイニシアティブをとる権限が法的には認められている。しかしながら、CDCの設立は各省の設立よりも後であることから、実際には援助機関、NGOが独自に各省と直接コンタクトをとり案件を準備しており、CDCはそれについてプライオリティをつける権限を実質的には持っていない状況である。UNDPは専門家を派遣し、案件管理のためのモニタリング手法を導入する支援をしてきた。

 CRDBのスタッフは経済財政省、計画省等からの出向者で占められており、また業務量が多く、給与が少ない上に多忙をきわめ、公務員に死活問題の副業ができないという状況であるため、モラルに問題がある職員は職場に居着かず元の所属機関に戻ってしまい、結果として人員が更に不足するという悪循環に陥っている。体制強化を実質的に行うためにはインセンティブの付与が最大の課題である。

図 3-1 プロジェクト実施とモニタリングの状況(PDF)



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