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第4章 事後評価結果の分析
2.まとめ


 本章で対象にしたODA事後評価の結果では、多種多様な問題点やプロジェクトが高い評価を得た要因が報告された。プロジェクトが高い評価を得た要因においては、特に、当初計画していた以上のプロジェクトによる副次的な効果が顕れたものが、多く報告された。また、無償資金協力および技術協力の連携によりプロジェクトの効率性が向上した例も多く見られた。

 問題点については、(1)外部阻害要因により生じた問題、(2)先方政府・実施機関の体制等により生じた問題点、(3)機材の維持・管理体制等により生じた問題点に分類した。その結果、(1)では、自然災害、経済状況、内乱・クーデター等の、(2)では、特に自立発展性の観点から先方政府の予算措置が十分ではなかったことや実施機関の人材不足等の、(3)では、妥当性および自立発展性の観点から供与機材のスペアパーツの調達等の問題点が報告された。

 また、地域的にはアフリカ地域のプロジェクトに問題が生じやすい傾向にあった。アフリカ地域に問題点が多く指摘されたのは、協力実施のための経済的・社会的基盤が脆弱であることや人的資源の不足によるところが大きいことが評価結果から明らかにされた。

 本章の評価結果を見る限りでは、アフリカ地域におけるプロジェクトにおいて生じやすい傾向にある問題を十分に留意して、ODAを実施していくことが重要であることが示唆された。したがって、アフリカ地域で成功したプロジェクトは、むしろ他地域で成功したプロジェクトより、その成功度は高いと見ることもできよう。

 その一方でアフリカ地域で生じ易い問題があることから、同地域での協力に消極的になることがあれば、それは問題である。公平な社会の構築による世界の平和と繁栄に貢献することがODAの存在意義の一つであり、こうした地域に対しては、むしろ他の地域以上に、現地の実態を正確に把握し、プロジェクトの形成や運営にあたり十分な配慮をしつつ、適切な協力を実施していくことが必要となろう。

 「第2回アフリカ開発会議(TICADII)」では「東京行動計画」が採択され、「貧困削減・生活水準向上のため、アフリカの人々が持つ潜在能力を、自主性に基づく包括的なアプローチにより最大限活かし、さらに平等なパートナーとして国際社会にアフリカを参画させなければならない」との認識が共有された。日本政府は、このような認識の下、今後ともアフリカに対する協力を推進していく方向である。

 今後のODAの実施に当たっては、上述の教訓事項にも示されるように、外部要因を可能な限り事前に想定することや被援助国の施設や機材の使用および修理における技術レベル、先方実施機関の体制・能力の把握、現地の正確なニーズの把握等を十分に行い、妥当な案件形成、効率的な実施、自立発展性の高い運営管理を目指して、さらなるODAの質的向上を図っていくことが重要である。


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