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第2章 ODA事後評価活動
2.事後評価の目的 ~建設的アプローチ~


(1)外務省による事後評価の目的

 外務省による評価の目的は以下の3項目に集約される。

  • 日本のODA事業が効果的・効率的に実施されているかを検証する。
  • 評価結果を援助案件の運営管理の改善に活用するとともに、将来の援助政策の策定に役立て、ODAの質の向上を図る。
  • 評価結果を公表することにより、ODAの実態や成果を国民に明らかにする。

 評価の結果は、将来のODA事業の質的向上を目指して利用されることを念頭に置いている。すなわち、評価は、過去の失敗を問いただすためのものではなく、過去の成功および失敗から得た教訓を基礎にして、将来のより効果的・効率的なODAを目指す、建設的な視点に立脚したものである。

 ODA事業は、政治的、経済的、社会的、文化的に多様な環境下にある被援助国と協力して行われる事業である。したがって、日本及び被援助国の関係機関が、双方を取り巻く多様な環境を理解しながら、その上で、効率的・効果的な協力を行わなければODAは最大限に活かされない。また、自然条件の変化、政治・経済情勢の変化等の予測不可能な外部条件による阻害により、ODAの成果を最大化できない場合もあることが評価結果から明らかにされている。

 同時に、多様な環境下において、計画策定・実施されたODAにおいて、問題点のみならず様々な成功点も明らかにされており、それぞれ類似の環境へ適用することも、問題点を解決するのと同様にODAの質的向上を図る上で、重要な要素となる。

 こうしたことから、外務省は、評価によりODAにかかわる多様な成功要因や問題点を明らかし、フィードバックを通じて、成功点は将来の計画策定・実施に適用し、問題点はできる限り解決していくことで、評価結果が今後のODAの質的向上に効果的に活かされるように、建設的に取り組んでいる。

 また、評価結果を公表することにより、ODAの実態や成果を明らかにして、国民のODAについての理解を促進するとともに、評価によって明らかにされたODA事業の難しさや問題点について、国民とともに考える姿勢で、その改善に努めている。


(2)実施機関による事後評価の目的

 実施機関であるJICAおよびOECFも、同様に建設的な視点から評価を実施してきている。評価の目的も、評価結果から導き出された教訓のフィードバックを通じて、今後のODAの質的向上を図っていくという点で、共通している。

 しかし、外務省とJICAおよびOECFは、政策部門と実施部門という組織的役割の違いから、外務省は、ODA全体を評価対象とし、JICAは技術協力および無償資金協力を、OECFは有償資金協力を対象としている。また、外務省は、ODA政策への反映、国民へのアカウンタビリティー(説明責任)を示す必要性が高いが、JICAおよびOECFは、国民へのアカウンタビリティーの確保に加えODAの事業実施にかかる改善を図ることに重点を置いている。

実施機関による評価の目的

  • JICA事後評価の目的
     個々の協力プロジェクトの目標達成度、効果、自立発展性などの検証を通じ、必要に応じ追加支援を行ったり、評価から得た教訓をプロジェクト・サイクルの中にフィードバックし、事業の改善を図る。
  • OECF事後評価の目的
     円借款プロジェクトの実施・運営維持管理が当初の計画に比べどのように行われているか、また、期待どおりの効果が発現されているかなどを検証する。この検証を通じて、各プロジェクトの実施・運営維持管理・効果等に関わる成功要因や問題点を把握し、そこから導き出された教訓を、新規プロジェクトの形成、審査、実施、事後監理などにフィードバックすることにより、今後の援助の効果をより高めていく。

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