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第1章 ODA評価を巡る最近の動き
2.1998年度の評価活動


 このような状況のもとODA改革懇談会の提言・指摘等を踏まえ、98年度においては従来の評価活動に加え幾つかの新しい試みや改善を行った。98年度の活動の詳細は来年度の報告書に掲載するが、以下主要なものにつき紹介したい。


(1)評価活動を拡充するための新しい試み

(イ)シンクタンクによる評価

 第三者による評価は通常個人に依頼することが多かったが、98年度予算で経済協力に関わる研究機関(シンクタンク)と外部の学者・専門家等の有識者が共同で評価を行うスキームが新たに認められた。シンクタンクのもつ情報収集・分析力と有識者の知見を組み合わせ、専門性が高く多角的視点を持つ高度な評価を実施することにより、一層の公平性、客観性の確保を図り、評価の質を高めるのが目的である。98年度においては89年度に日本がフィリピンに対して行った金融セクター借款を対象に、フィリピンの金融セクターの問題解決にどの程度寄与し、その後の経済成長にどの程度貢献したかを検証した。

(ロ)国際機関の活動に対する評価

 日本政府が資金を拠出している国際機関の活動については、これまで評価の対象としていなかったが、国民の税金を原資としている以上、これらの拠出金についても効率的・効果的に使用されているか検証することにより、国際機関自体の変化に対応した援助を行うことが重要である。このための予算措置が98年度新たに認められ、99年1月にアジア工科大学(日本は98年度に1億7,352万円を拠出し、延べ10名のJICA長期専門家を派遣している)に評価ミッションを派遣し、今後の援助のあり方を探った。

(2)NGOとの共同評価

 97年度において初めてバングラデシュでNGOとの共同評価を行い、99年1月、報告書が公表された。報告書にもあるとおり、この共同評価はNGOとODAのより良い形での協力への第一段階を築くものであった。このような認識のもと、99年3月にはカンボディアで2回目の共同評価を行った。今後もNGOと政府の協力関係の向上に貢献することが期待される。

報告書表紙画像
バングラデシュで行った共同評価の報告書
  (写真)住民からのヒアリング

(3)評価結果の分野別分析

 外務省が過去15年以上にわたって行った評価の結果により蓄積されている貴重な教訓・指摘事項を分野別に分類・分析し、今後の経済協力に活かす試みとして、97年度はまず教育、保健医療、農林、運輸、放送通信の5分野を対象とし有識者に分析を依頼した。評価案件の種類・内容が多様であるにもかかわらず、将来の援助プロジェクト実施および評価システムそのものについて多くの貴重な提言を得ることができた。98年度は引き続き、水産、上水道・水環境、人材開発(職業訓練)分野の3分野につき分析を行い、99年3月に行われた経済協力評価セミナーの場で報告された。

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