JICAでは、被援助国の関係機関、あるいは他のドナーと合同評価を行っている。被援助国との合同評価は、JICAの協力の効果や問題点などについて、JICAと被援助国側の認識の共有化が図られることに加え、被援助国側の評価手法の習得や評価能力の向上にも役立つ。他のドナーとの合同評価は、評価手法の相互学習や連携強化を図る上で有効な手段である。
JICA/UNDP合同評価(タンザニア貧困)(1999年度) 調査団構成: 佐藤 寛 アジア経済研究所主任研究員(団長) 燾賀 一仁 日本国際ボランティアセンター 西方 秀世 グローバルリンクマネージメント株式会社 Khadijah Fancy UNDP評価室 山本愛一郎 JICA企画・評価部評価監理室 |
JICAとUNDPは、1988年以来様々な形での協調関係を構築しており、1999年11月に「貧困」をテーマとしてアフリカで調査を実施することが合意された。このテーマが選ばれた背景には、1998年10月に東京で開催された第2回アフリカ開発会議(TICADII)で、貧困削減がアフリカ開発の最重要課題であることが明確に打ち出されたことがあり、JICAは今後効果的な貧困削減支援をさらに強化していく必要があるとの認識に基づくものである。さらにUNDPは貧困削減をその活動の全体目標として掲げており、貧困分野の評価においても蓄積があることから、両機関からなる合同評価チームにより、「今後の協力事業において貧困対策を促進するための教訓を得る」ことを目的として評価調査を実施した。
この評価調査は、JICAで初めて人々の貧困観やプロジェクトのインパクトに対する認識といった主観的な情報を各種の参加型調査手法を用いて入手し、現地の人々が考える貧困問題にプロジェクトがいかにインパクトを与えたかどうかを分析した。
ドナーが定義する「貧困」と現地の人々が認識する「貧困」が必ずしも一致しているわけではないこと、貧困は多面的であり地域、また同一地域であっても男女間で異なる認識を持つことから、対象地域の個々の状況にあった計画を策定する必要があることが確認された。また、これまでの特定セクター中心の技術協力で蓄積したJICAの利点を生かして貧困対策を行うために、特定セクターの活動を核にしつつ、社会配慮の範囲を少しずつ広げていく中で、他のセクター、他のドナー、他の地域での活動などの協調やプロジェクトの拡大の可能性を段階的に模索していくべきである点が指摘されている。