(3)水・衛生
水と衛生の問題は人の生命に関わる重要な問題です。世界の約21億人が、安全に管理された飲み水の供給を受けられず、約34億人が安全に管理されたトイレなどの衛生施設を使うことができない暮らしをしています注71。特に、水道が普及していない開発途上国では、多くの場合、女性やこどもが時には何時間もかけて水を汲(く)みに行くため、女性の社会進出やこどもの教育の機会が奪われており、ジェンダー平等および包摂的な社会の推進の観点からも重要な課題となっています。また、不安定な水の供給は、医療や農業にも悪影響を与えます。水・衛生インフラの整備は、感染症に強い環境整備にもつながり、より強靭(じん)、より公平でより持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)注72実現のためにも必要です。このため、SDGsの目標6は、「全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」ことを目指しています。
●日本の取組
エチオピアにおける「アディスアベバ上下水道公社無収水削減管理能力強化プロジェクト」で、日本の技術・知見を学ぶエチオピア研修員(写真:JICA)
ザンビアにおける「下痢リスク可視化によるアフリカ都市周縁地域の参加型水・衛生計画と水・衛生統計プロジェクト」(SATREPS)で、ルサカ市の青年団が集めたサンプルの大腸菌群検査を実施している様子(写真:原田英典)
2023年5月の国連水会議2023のフォローアップとして、2024年6月、タジキスタンのドゥシャンベにおいて「持続可能な開発のための水」国際行動の10年に関する第3回ハイレベル国際会議が開催されました。上川外務大臣(当時)がビデオ・メッセージを送る形で参加し、「熊本水イニシアティブ」注73を始めとする水に関する国際社会の行動計画を通じ、多くの国際機関と共に様々な取組を推進していることを述べました。また、松本外務大臣政務官(当時)は2025年3月に来日したルトノ国連事務総長水担当特使と会談を行い、生命の根幹である水・衛生の確保は、人間の安全保障の観点からも極めて重要であり、国際場裡(り)において緊密に連携していきたい旨述べました。
日本は、国内における豊富な経験、知識や技術をいかし、開発途上国での安全な水の普及に向けた支援を続けており、水と衛生分野においては1990年代から累計で世界一の援助実績を有しています。例えば、タジキスタンでは、同国の中でも基礎インフラの開発が遅れているハトロン州において、給水施設の建設や水道メーターの設置による従量料金制の導入によって、安全かつ安定的な給水サービスの確立を図る支援を実施しています。また、国土の8割以上を乾燥・半乾燥地が占めるケニアにおいて、ハンドポンプ井戸の動力化や給水施設のガイドラインを作成することで、給水施設の改善や管理に関する能力強化を図っています。2025年までに全ての人に安全な飲料水へのアクセスを提供することを政策目標に掲げるパキスタンでは、同国第3の都市ファイサラバードにおいて水道スマートメーターなどを供与する無償資金協力を2025年5月に決定しました。さらに、ベトナムでは、経済成長と都市化の急速な進行に伴い、水環境が大きく悪化しているハノイ市において、下水道整備を支援する円借款事業を実施し、2025年5月に同市最大のエンサ下水処理場が完工しました。
日本および現地の民間企業や研究機関と連携した取組も行っています。例えば、インドネシアでは、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業注74を活用して、「強力吸引作業車等を活用した下水道維持管理に向けたビジネス化実証事業」が実施されています。清掃機材の不足等が課題となっていた同国に、日本企業の清掃車両、部品、メンテナンスサービスをいかすべく、実証事業や調査が実施されています。バングラデシュでは、ダッカ首都圏におけるAMRによる健康リスクを軽減するため、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)注75を活用して、河川、排水、下水処理場などにおける水質を監視する水環境モニタリングシステムの構築を愛媛大学とダッカ大学の研究者らと共に進めています。
国土交通省および環境省では、SDGsの目標6.3「未処理汚水の割合の半減」の達成に向けて、アジア汚水管理パートナーシップ(AWaP)を7か国注76と共に実施しています。2025年11月にカンボジアのプノンペンで開催された第4回総会では、参加国の汚水管理の活動について情報共有を図るとともに、「汚水管理の主流化と財政」および「汚水処理施設の最適配置」について議論を行いました。
また、環境省では、アジアの多くの国々において深刻な水質汚濁が生じている問題に対して、現地での情報や知識の不足を解消するため、アジア水環境パートナーシップ(WEPA)を実施しており、アジアの13の参加国注77の協力の下、人的ネットワークの構築や情報の収集・共有、能力構築などを通じて、アジアにおける水環境ガバナンスの強化を目指しています。2025年2月にラオスのビエンチャンで開催された第20回WEPA年次会合・国際ワークショップでは、流域における包括的な水環境管理に焦点を当て、複数の発生源からの汚染に対処するための統合的な対策の必要性について議論を行いました。さらに、9月にマレーシアのプトラジャヤで開催された第21回WEPA年次会合・国際ワークショップでは、自国の産業排水管理に焦点を当て、関連する政策やその施行状況、遵守状況について、情報共有が行われ、水環境管理のために水質の維持は極めて重要であり、排水規制の遵守率の向上が不可欠であることが確認されました。
日本は、水と衛生分野におけるトップドナーとして、これまでの知見も活用し、開発途上国の人々の安全な水へのアクセスや持続可能な水資源の確保に向けた貢献を続けます。
- 注71 : UNICEFによるデータ(2025年) https://data.unicef.org/resources/jmp-report-2025/
- 注72 : 注61を参照。
- 注73 : 2022年4月に熊本で開催された第4回アジア・太平洋水サミットにおいて、岸田総理大臣(当時)が発表したイニシアティブ。水に関する社会課題の解決に向け、質の高いインフラ整備などを通じて、各国や国際機関と協調・連携しながら積極的に取り組むもの。
- 注74 : 用語解説を参照。
- 注75 : 用語解説を参照。
- 注76 : インドネシア、カンボジア、タイ、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ミャンマーの7か国。
- 注77 : インドネシア、韓国、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、日本の13か国。
